「東京マイスターにも認定」 和風建築支える伝統技術=東京・江東
襖骨師・鈴木延坦さん

海外の芸術家の依頼で屏風の骨を仕上げる鈴木さん
襖の骨組みを作り続けて60年になる鈴木木工所(東京都江東区)の鈴木延坦さん。襖骨師と呼ばれる伝統工芸に携わる技能者です。
親の代から60年になる東京・江東民主商工会(民商)の会員で07年には東京都から優秀技能者「東京マイスター」と認定され、14年にも東京都功労者(労働精励部門)として表彰されました。
作業場に入ると秋田杉や青森ヒバの香りが出迎えてくれます。壁には何種類もののこぎりや鉋の数々。60年近く使い込んできた道具は黒光りしています。
骨師とは、襖や額、屏風、ついたてなどの骨組みを作る人のこと。材料は木だけで、穴を開けたり、凸凹をつけてかみ合わせたりして仕上げます。
鉄のくぎは1本も使わず、使っても竹製のくぎだけ。がっちりと組み合わせられるように、木の溝は幾分狭めに切ります。しかし、あまり固く組み過ぎてもゆがんでしまうので、加減が難しいとのこと。「片手で持ち上げても枠がたゆまない」と手掛けた襖を見せてくれました。
「物心ついたころから端材で何か工作をしていた」といいます。目をつけた父親が、次男の延坦さんを3代目にと15歳から仕事を仕込みました。
先代は「きれいな骨を作るには、1日10枚以上やっちゃいけない」と言い渡します。1日12枚作ったら一人前と言われた時代です。「競争より、自らの腕を磨くことに専念する」日々でした。
かつて東京だけで100人はいたという骨師は今や4、5人に。襖のない住宅も増え、あっても段ボール材など簡易なものがほとんどです。国産材を使った木組みだけの襖は、寺や神社など特殊な場所のぜいたく品になってしまいました。
海外の芸術家などが作品にする屏風の骨を、なじみの紙卸商から頼まれることもあります。仕事の受け手がいなくて、最後の最後に鈴木木工所に持ち込まれるケースも多いとのこと。後継者のいない鈴木さん。技能の継承が課題です。
全国商工新聞(2015年3月16日付)
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