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  トップページ > 税金のページ > 消費税 > 全国商工新聞 第3160号3月16日付
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ピケティ教授が指南 消費税は「関税」岩本沙弓さんが解説

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 フランスの経済学者トマ・ピケティ教授が「欧州の付加価値税が高いのは福祉財源のためではなく関税だから」(2月23日号既報)と指摘したことについて、「詳しく知りたい」との声が寄せられました。付加価値税導入の背景や役割、国際的な流れについて大阪経済大学客員教授の岩本沙弓さんに聞きました。

輸出企業への「補助金」
―― 世界で付加価値税が導入されるようになった経緯は
 1954年にフランスが初めて体系的に採用したといわれています。当時は、第2次世界大戦が終わり、戦勝国だった米国が世界最大の貿易大国でした。欧州も戦勝国でしたが、戦地になったので物質的な資産は喪失。その中から自国の経済を盛り立てるためには輸出企業に頑張ってもらうしかないという発想で補助金を出していました。しかし、ガット(GATT)という関税と貿易の協定ができたとき、自国企業だけに補助金を与えるのは自由な貿易に反するとの理由でガットに抵触してしまったのです。
 それでも何とかして自国の輸出企業に補助金を与えられないかと、フランス政府が考えたのが付加価値税といわれています。初めから輸出企業を援助するという目的が強い税金でした。現在、140カ国余りで付加価値税を採用していますが、消費税と言っているのは日本だけです。

―― 付加価値税と補助金の関係は
 付加価値税にはリベートを渡せる機能があります。日本では還付といわれています。例えば日本の輸出企業が国内で製品を造るときには部品の調達先に消費税を払っています。それを米国に輸出するときは、日本の消費税を米国の国民から徴収できないという理由でゼロ税率になっています。国内で消費税を払っているのに、海外からは受け取れない。消費税は自分が受け取った消費税から払った消費税を差し引いて納税する仕組みです。そこで国内で支払ったとされる仕入れ分を還付するのですが、消費税では完璧な転嫁は流通のどの段階においてもできません。であるなら、戻してもらうお金は還付ではなく補助金の役割を果たすことになりかねないと米国などは指摘しています。

輸入品を制限する効果
―― 米国には付加価値税がありませんね
 米国は今から40年ほど前、大統領の諮問機関として企業課税特別委員会を立ち上げ、付加価値税の対応を議論しました。第1回目の報告書では付加価値税にリベート機能があるのは特定企業の優遇策になるので自由貿易や公平な税制を掲げている米国としては採用するわけにはいかないと結論づけ、それ以来、連邦政府としては採用していません。

―― 付加価値税が関税の役割を果たしているとはどういうことでしょうか
 例えば米国とフランスの貿易を考えると、20%の付加価値税があるフランス製品と付加価値税がない米国製品を消費者が購入するときに価格に差が生じます()。米国のリベートの扱いに関する言い分について大まかな話をすると、いずれも価格を100ドルとします。還付を受け取れば、その分フランス製品は米国内で80ドルまで値下げをすることも可能となり、米国製品はフランス国内では120ドルとなってしまいます。米国から見ればフランスの付加価値税で勝手に価格が上げられ、20%の付加価値税は実質、関税になってしまうわけです。ピケティ教授が欧州の付加価値税を関税と言ったのは、輸入品を制限して自国の産業を保護するという関税と同じ効果があるという意味です。
 日本の消費税も米国からすれば「非関税障壁」と見なされるわけです。例えばTPPは関税を引き下げよという話ですから、消費税増税で引き上げられた分を取り外す手段にもなりえます。

優遇税是正 国際協調で
―― 欧州のように社会保障が充実していれば消費税を上げてもいいという意見があります
 欧州は付加価値税が高いから社会保障が充実しているわけではなく、再分配が機能しているからです。例えば、子どもがいる現役世帯のうち大人が1人いる世帯(いわゆるひとり親家庭)の相対的貧困率を見た場合、OECD(経済協力開発機構)平均が30・8%(平成24年版「厚生労働白書」より)のところ、日本は加盟国中でも突出し最悪の58・7%となっています。税金や社会保険料を払う前の「再分配前」と税金や保険料を払い、児童手当や生活保護など政府から給付を受けた後の「再分配後」では、後者の方が貧困率は低くなるのが当然であるにもかかわらず、日本は再分配後の貧困率が高いという、あってはならない状況です。
 日本の場合、社会保障を充実させると口では言いますが、再分配などの見直しがされないまま財源がないからと、とりあえず消費税を上げる。その結果、弱い人たちへの負担が重くなり、格差が拡大しています。

―― 国際的な統一税制をめざす動きが加速していますね
 付加価値税や消費税はグローバル経済が進む前の古いタイプの税制です。モノも人も活発に世界中を行き交うグローバル化の中で、昔のように国境で税制を何とかしようという発想がすでに限界にきています。
 法人税収や所得税収が上がってないのは世界の共通の問題であり、日本ではその穴埋めの消費税が使われている状況です。そうした事態に対応すべくOECDが2013年7月、BEPS(税源浸食と利益移転に関するアクションプラン)を公表しています。グローバル企業が国際的な税制の隙間や抜け穴を利用した節税対策によって税負担を軽減しているという問題点を指摘し、15項目の対策を示しています。その中で「有害税制への対抗」として加盟国の優遇税制を審査することを打ち出し、特定企業への優遇税制の是正に動き出しています。
 消費税などの税制問題は実は国内だけの問題ではありません。世界中のいわゆる一般国民が不公平税制のあおりを受けているわけですから、世界的な問題と捉え、国境を越えてその是正に取り組むべき問題との認識を持つことが大切で、それが問題解決にもつながると思います。

全国商工新聞(2015年3月16日付)
 

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