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  トップページ > 税金のページ > 不公正税制 > 全国商工新聞 第3187号10月12日付

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消費税「負担軽減案」の本質

元静岡大学教授・税理士 湖東 京至さんが解説

弱者の負担軽くならない 税率引き下げ、廃止こそ

 麻生財務相は9月4日、突如2%の軽減税率分を個人番号を使って還付する方式を提案しました。財務省案は店頭では全ての商品を10%とし、軽減税率対象商品を買った時にレジで個人番号カードに買い物を記録し、後で2%分を還付するというものです。還付の対象となる商品は酒類を除く全ての飲食料品で外食も含みますが、1人当たりの還付金額は年間4000円で打ち止め。つまり飲食料品の購入額は1人20万円までが還付対象というわけです。
 この還付方式が報道されるや否や、各方面から猛烈な非難が上がりました。外食・小売業界では「個人番号カードを出してもらい端末機に記録させる。レジに行列ができる」「自動販売機の番号読み取りはどうするのか」など。「現実性がない。とんでもない方式だ、絶対に駄目だ」、という声が上がりました。

税収減抑えたい財務省の還付案

 財務省はなぜ還付方式を提案したのでしょうか。ズバリ言えば、税収が減るのを抑えるためです。軽減税率を酒類以外の飲食料品に適用した場合、1%で税収が6600億円、2%で1兆3200億円減収になると試算されています。一方還付方式なら、日本の人口1億2600万人全員が4000円分還付を受けたとしても5040億円で済みます。生まれたばかりの赤ちゃんや子ども、寝たきり老人は個人番号カードを使えませんから、およそ半分の人は還付を受けることはできないでしょう。そうすると2500億円程度の予算で済みます。これが財務省の狙いの一つです。
 皆さんのところにも個人番号が書留郵便で通知されます。12桁の番号が通知されますが、「個人番号カード」を作るのは自由です。おそらく多くの人々はわざわざカードを作りに行かないでしょう。それでは個人番号制度は普及しないことになります。そこで、個人番号カード普及のため、カードを提示して買い物記録をし2%分を還付する仕組みを考えたわけです。税の還付というエサによって個人番号カードを持つように誘導しようというたくらみです。
 しかし、実際にはレジでの混乱や、カードに印字された個人番号を端末機にかざすため、プライバシー保護の問題が生じます。「産経新聞」が行った世論調査によると財務省の還付方式に72・5%が反対、賛成の19・1%を大きく上回っています。財務省は歳出の削減と個人番号カード普及という一石二鳥を狙いましたが、与党内部からさえ強い批判が出るありさまで、導入は困難と言えましょう。

憲法13条違反の番号制度廃止に

 個人番号は財務省がエサを与えて普及しようとしたことでも分かるように、国民の間に浸透するかどうか分かりません。住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が全く機能しませんでしたが、政府はその二の舞になるのを恐れています。個人番号はまず税金と社会保障関係に使われますが、やがて医療や銀行などにも広く利用されます。憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される」と規定しています。プライバシーまで監視する個人番号制度はこの規定に抵触します。事業者も国民も何もメリットがない個人番号制度を廃止することが大切です。
 「消費税が10%に引き上げられるのは反対だけど、どうしても引き上げるというならせめて飲食料品は軽減税率にしてもらいたい」「財務省の還付方式には反対だが、軽減税率は賛成」という人がいます。しかし、軽減税率はそもそも悪税・消費税の延命措置にしかすぎません。軽減税率があろうがなかろうが、物価は需要と供給の関係で決まります。軽減税率が適用される物品が2%安くなるという保証はありません。悪税・消費税の恥部を覆い隠そうとするのが軽減税率です。軽減税率を導入するのではなく、消費税の税率を引き下げ、やがてなくすことこそ国民本位の税制といえるでしょう。

全国商工新聞(2015年10月12日付)
 

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