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  トップページ > 税金のページ > 不公正税制 > 全国商工新聞 第3187号10月12日付

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消費税7837億円 輸出大企業10社に「還付」

税率8%で1.8倍に 中小業者が納めた税金 大企業の懐へ
元静岡大学教授・税理士 湖東 京至さんが解説

 下請け業者の単価をたたく一方で、消費税を税務署から還付されている輸出大企業。その還付金が7837億円(輸出大企業10社)となり、税率が8%になって1・8倍に激増していることが湖東京至税理士(元静岡大学教授)の推算で明らかになりました。突如、出された個人番号(マイナンバー)を使って増税分の一部である酒類を除く飲食料品のみを還付するという財務省案。湖東税理士は「還付制度や軽減税率は悪税の延命措置にすぎない」と批判し、還付金の実態と軽減税率の本質を解説します。

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 表1を見てください。わが国を代表する製造業10社は税率が8%に上がったため、還付金(頂く税金)が大幅に増えています。還付金が一番多いのはトヨタ自動車で、前年の年間還付金額は1402億円に対し、今年は2594億円、1192億円も増えています。2位は日産自動車で前年の年間還付金757億円に対し、今年は1212億円へと、455億円も増えています。3位のホンダ以下各社も軒並み還付金が激増していることが分かります。
 力の弱い中小企業は、8%への税率引き上げで売り上げが増えなくても納める消費税額が増え、資金繰りに苦しんでいるのに、これらの大企業は税率引き上げで何ら痛痒を感じないばかりか、頂く税金が増えるため、かえって得をしているのです。

なぜ増えるのか

 消費税の仕組みは一つひとつの商品に8%をかけた税金を納める単純な間接税ではありません。事業者が納める消費税は、年間の売上額に8%をかけた金額から年間仕入額などに8%をかけた金額を差し引いた額を納めます(これを仕入税額控除方式といいます)。売り上げに8%上乗せしようがしまいが、納税しなければならない一種の事業税なのです。
 それに対し大企業は、単価をたたきにたたいて下請け業者に納品させ、実質的に消費税を払ってもいないのに払ったものとして8%の仕入税額控除を受けます。一方、輸出売り上げには8%をかけるのではなくゼロ税率をかけます(答えはゼロ)。このように仕入税額控除方式を悪用して仕入れに含まれているとみなされる消費税分をそっくり還付してもらうわけです。
 それが5%のときは年間仕入額の5%分でしたが、8%になれば年間仕入額の8%に増えます。例えば、年間仕入額が100億円あれば、その5%は5億円ですが、8%になれば8億円になります。つまり還付金は3億円増えることになるのです。

一度も納めずに

 許せないのは、トヨタなどの輸出大企業は自分で消費税を税務署に納めたことは一度もないということです。仕入先や下請けが苦労して納めた税金をトヨタなど最終輸出業者だけが頂く仕組みになっています。税金の還付というのは自分が納めた税金が多かったとき返してもらうことをいいます。トヨタなどの輸出大企業は、下請けや取引先が税務署に納めたものを自分が納めたものとしてもらっているのです。他人が納めた税金を自分が納めたものとして返してもらうのは一種の横領です。もし2017年4月から10%に引き上げられたなら、輸出大企業への還付金はさらに増えることになるでしょう。

7税務署が「赤字」に 10%への増税やめよ

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 表2は消費税の税収が赤字になっている税務署を、マイナスの大きい順に並べたものです(平成25年度年分、各国税局の発表資料による)。なんと、ここでもトヨタの本社がある愛知・豊田税務署が1位、日産の本社がある神奈川税務署が2位、マツダの本社がある広島・海田税務署が3位となっています。この数字はその税務署管内の事業者が納税した申告納税額を差し引いた額を示しています。例えば豊田税務署の場合、還付金額は1788億円ありますが、申告納税額が347億円ありますからこれを差し引きすると赤字額が1441億円になるのです。豊田税務署の還付金額1788億円の90%はトヨタ自動車1社への還付金と思われますので、トヨタの平成25年度の還付金は少なく見ても1600億円になると推量できます。

不公平の是正を

 トヨタなど各社は還付金額を一切公表しません。表1に示した各社の還付金額は私が大ざっぱな有価証券報告書を基に推計計算したものですから、推計も大ざっぱにならざるを得ません。ただ、還付金があることは否定できません。それは表2に示したように赤字の税務署があることからも推定できます。また、政府・財務省の予算案の説明によれば、平成25年度の還付金は3兆2237億円(税率5%)、平成26年度の還付金は3兆2920億円(税率5%、一部8%)、平成27年度は4兆4736億円(税率8%)に増えています。つまり8%に上がったことにより還付金額が大幅に増えることを政府自身が承知しているのです。  重要なのは、税務署から輸出大企業にリベート(還付金)が振り込まれていること、そして税率が上がれば上がるほど還付金額が増えることです。また、還付金のない診療所や病院にある非課税制度と輸出売り上げに対するゼロ税率制度との間に不公平があるということです。このうえ不公平を拡大しないためには10%への税率の引き上げをやめさせること、そしてカナダのように税率を引き下げさせることが大切です。

全国商工新聞(2015年10月12日付)
 

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