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  トップページ > 税金のページ > 不公正税制 > 全国商工新聞 第3148号12月15日付

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税制のゆがみ正せば消費税増税必要ない

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中央大学名誉教授・富岡幸雄さんが提唱
 財界や大企業は日本の法人税率が先進国の中で極めて高いと主張し、引き下げを求めています。その要望に応え、自公政権は法人税減税を成長戦略の柱に掲げる一方で、2017年4月に消費税を10%に引き上げると断言しています。長年、不公平な税制を是正すべきと主張してきた富岡幸雄・中央大学名誉教授(商学博士)は「大企業が正しく納税すれば消費税増税は必要ない」と唱えています。

法人税実効負担率0.02%
―― 日本の法人税は本当に高いのでしょうか
 大企業と財界は法定正味税率(マスコミが報じる実効税率)35.64%が高いと叫んでいますが、実際に納めている実効税負担率(個別企業の利潤に対する実際の納税額)は法定正味税率をはるかに下回り、諸外国の法人税より低いのが実態です。
 私は『税金を払わない巨大企業』(文春新書)の中で、大企業が税金を払っていない実態を企業名を挙げて明らかにしました。実効税負担率の低い大企業のうち1位から10位に名を連ねたのは世界に名だたる大企業ばかりです(表1)。5期通算では1位のみずほフィナンシャルグループの税引前純利益が1兆2218億5500万円もありながら、法人税の納税額は2億2500万円、実効税負担率はわずか0.02%です(表2)。事業所得430万円の中小業者に当てはめると「300円」しか税金を納めていないことになります。法人税と個人事業者の所得税の計算方法は違います。しかし、事業所得が430万円の中小業者(夫婦・子1人)の場合、控除額は約236万円で所得税は9万7000円ですので、「300円」がいかに少ないか、ということです。

表1

表2

―― なぜ、そんな事態が起きるのでしょうか
 根本問題は経済がグローバル化しているのに、国家を前提とした税制が時代遅れになっていることです。今の租税法は国家を前提にしているので、その作用は水際で止まる。つまり日本の富裕層や多国籍業が海外で何をやっても、日本政府は手も足も出せないというわけです。
 その大きな問題の一つがタックス・ヘイブン(租税回避地)の利用や海外関連企業との取引操作によって課税所得を抑える「移転価格操作」を悪用した租税回避です。この二つを組み合わせて活用すれば税金を限りなくゼロに近づけられます。
―― 大企業には税制のさまざまな優遇措置もありますね
 「受取配当金益金不算入制度」によって、企業が国内にある他社の株式を保有している場合に、その受取配当金を課税される益金に算入しなくてもよくなっています。子会社や関係会社の株式などに関わる配当は、課税対象にしなくてもいいわけです(子会社や関係会社以外の投資によるものであっても50%が益金不算入)。
 例えば1位の第一生命保険の受取配当金は、過去7年間で3兆9659億5700万円で、税引前純利益の4.56倍もあります(表3)。
 さらに、租税特別措置。これは“税の伏魔殿”というべきものです。
 驚くことに2012年度の全減税額1兆3218億823万円のうち資本金100億円超の巨大企業が47.72%を占め、1社当たり平均8億9728万円相当もの減税を受けています。
 最高はトヨタ自動車で、1社だけで1342億円です。しかも研究開発税制である試験研究費の税額控除だけの減税です。

表3

不公平税制が財政壊す
―― 大企業を優遇する一方で、消費税10%を断言しました
 そもそも消費税は国民をだます欺瞞と謀略で出来上がった、「あってはならない」税金なのです。だから私は“不義の子”だと言っているわけです。国民から税金を収奪するタックスマシーン(自動集税装置)です。
 4月に税率を8%に引き上げましたが、一気に3%も上げた国はどこにもない。正気の沙汰じゃない。増税によって、国の経済も国民の暮らしも中小業者の経営も悪化した。増税は間違いだったわけだから5%に戻すのは当たり前です。10%への引き上げ延期なんて生ぬるい。中止、できれば廃止なんですよ。
―― 消費税増税は必要なかったと
 法定税率に基づいて大企業に適正に納税させていれば、消費税を増税しなくても良かったばかりか、これほど財政赤字に苦しむ必要もなかったわけです。大企業を優遇するあまり、国民にそのツケを回して過重な負担を強いる-ゆがんだ税制に危機感を感じています。
 私は19歳で学徒動員され戦地に赴きました。日本を戦争に駆り立てた原因の一つに国家財政のもろさがあり、それを補うために他国に侵出を企てたのです。二度と戦争を起こさないために日本を内側から強くしなければならない。そう思って1946年に国税庁に入り、15年間勤め、退官後は税務会計学を創設し、研究を続けました。その中で日本の財政が弱いのは税の不公平さにあると気付き、体を張って不公平な税制とたたかってきました。
 消費税は「資本主義最後の税金」といわれるように、究極の大衆課税で諸悪の根源です。
 10%への引き上げは、絶対にやめさせなければなりません。

▽プロフィール
富岡幸雄(とみおかゆきお)
 1925年生まれ。中央大学名誉教授、商学博士、富岡総研代表。国税庁、大蔵事務官、国税実査官を経て1965年中央大学商学部教授。通産省中小企業承継税制問題研究会座長、政府税制調査会特別委員などを歴任。現在は日本租税理論学会理事、日本税務会計学会顧問を務める。今年9月に出版された『税金を払わない巨大企業』(文春新書)が話題を呼んでいる。

全国商工新聞(2014年12月15日付)
 

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