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  トップページ > 税金のページ > 不公正税制 > 全国商工新聞 第3071号5月20日付
 
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動き出す税務署 改悪国税通則法で強権調査

 確定申告期が過ぎ、今年から実施されている改悪国税通則法の下で税務調査が始まっています。その実態は、強権的文言による収支内訳書の督促や適正手続きを欠いた税務調査、違法な更正処分もあり、看過できません。各地の民主商工会(民商)は、納税者の権利を学び税務調査対策を進めています。

税務調査におわせ収支内訳書を督促
 各地の税務署は、強権的な文言を用いた「文書」で納税者に収支内訳書の提出を迫っています。しかし、収支内訳書の提出は法律上、罰則のない「訓示規定」です。「行政指導」としながら強権的文言で督促する「文書」は行政手続法に違反します。
 神奈川・小田原税務署は4月11日付で「書類の提出について」と題した「督促文書」を白色申告者に送付。「書類(収支内訳書)を提出しない場合、調査を実施する場合があり、この調査の結果、申告内容を是正することとなったときは、過少(無)申告加算税が課されることがある」としています(矢印部分)。

行政手続法にも違反し
 行政手続法第32条では「あくまでも任意の協力によってのみ実現される。行政指導に従わなかったことを理由に不利益な取扱いをしてはならない」としています。また、35条では「当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確にしなければならない」としています。「その責任者は表記の税務署長です」では、その要件も満たしておらず、違法な文書となります。
 収支内訳書制度の導入が国会で問題となっていた1984年当時、民商・全商連は短期間のうちに約600万人分の個人署名、1万7500もの団体署名を集め、導入撤回を迫りました。こうした運動によって、当時狙われていた罰則が取り払われ、収支内訳書の提出は納税者本人の意思に委ねられることになりました。
 同時に、衆参両院で「納税者の過大な負担とならないよう十分留意する」との付帯決議も採択されました。
 さらに、その後の運動を通じて、国税庁は収支内訳書が未提出でも「確定申告は有効」「不利益は与えない」との見解を示しました。これは今も変わっていません。

収支内訳書 未提出理由に税務調査しない=神奈川・小田原
 神奈川・小田原民商と神奈川土建西相支部の役員ら7人は4月22日、強権的な文言で収支内訳書の提出を迫る小田原税務署と交渉。総務課長に「収支内訳書が出ていないことをもって調査はしない」と認めさせました。
 交渉で民商の松浦隆雄会長らは、(1)収支内訳書については「納税者に過大な負担とならないように十分留意する」と定めた国会(84年)の付帯決議を尊重し、以後、このような文書は送付しないこと。いかなる強要も行わないこと(2)(確定申告書に)収支内訳書の添付がないことを理由とした不利益を与えないこと-を求める請願書を提出。
 その上で松浦会長らが「提出を督促する文書が、なぜ、昨年と今年で違うのか」と追及すると、総務課長は「文書は国税局の指導で実施したもの。行政指導としてやっている」「提出は任意で強権的な意味はない。提出のお願いだ」と答えました。
 松浦会長らが「お願いであるなら、昨年と同じ文書でよいのではないか」「調査を実施する場合もあるという文言は行政指導の範囲を超えている」と迫ると、総務課長は「要望は国税局に伝える」と答えました。約1時間の交渉の末、総務課長に(1)収支内訳書の提出は任意であること(2)未提出を理由に税務調査を行わないこと(不利益になることはしない)と回答させました。

小田原税務署が納税者に送りつけた収支内訳書を催促する文章

税務調査 理由付記で不当性判明=広島北
 広島北税務署は先ごろ、広島北民商会員で白色申告者の電気工事業者の総収入金額を過大に計上して所得税の更正処分を行ったことが、処分の理由を示した文書(理由付記の文書)から明らかになっています。電気工事業者は「処分は違法」と取り消しを求め、税務署に異議申し立てをしています。
 広島北税務署による総収入金額の過大計上は、「改正」国税通則法で、通知されることになった3月5日付の「処分理由を示した文書」で判明しました。
 昨年9月、電気工事業者は自宅で税務調査に臨み、帳簿書類を提示。しかし税務署員は立会人を理由に調査をせず退席。無断で取引先などへ反面調査を行いました。
 「処分理由を示した文書」には、反面調査などから電気工事業者の平成22年分の総収入金額(計8社で881万456円)を「確認した」として、所得税の更正処分と加算税の賦課決定処分を行っています。しかし「取引先」欄の上から7番目の業者(取引金額17万4900円。産業廃棄物処理業者)について、電気工事業者は「取引をした事実はない。更正処分は違法である」と異議を申し立てています。

広島北税務署の更正処分の理由を記した問題の文章のコピー

推計で消費税課税業者に 取消もとめ異議申立=岡山・西備
 岡山・西備民商のNさん=民宿=は先ごろ、笠岡税務署による不当な税務調査を受け、民商と一緒にたたかい、一部は是認となり、その旨の通知書を受け取りました。
 是認とならなかった部分についてNさんは、「税務署は実額で所得を把握をする努力をせず、推計課税をした。事実誤認で違法。取り消せ」と異議申し立てをしています。
 同税務署員5人は昨年9月、白石島の5軒の旅館と民宿を臨場。なかには経営者の事務所に勝手に上がり込み、金庫の現金を数えるなど不当な税務調査もありました。
 民商はこの間、民宿業者を交えた税金懇談会で対策を立て、税務署や広島国税局との交渉で不当調査の実態を告発しました。
 Nさんは、今年3月、平成19年から5年分の消費税の調査のうち、4年分について是認となり、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」を受けました。通知書は「改正」国税通則法の実施により、行われるようになったものです。
 しかし税務署は、平成22年分の消費税について、水道光熱費をもとに推計で課税売上高を1000万円超とし、決定処分を行っています。
 平成21年から3年分の所得税も推計で更正処分をしています。

岡山・西備民商のNさんが受け取った是認通知

税務調査の事前通知文書 「都合悪い」と延期=和歌山
 和歌山税務署は4月10日、和歌山民商会員の鉄工業者に税務調査を実施するための事前通知を文書で送りました。
 「改正」国税通則法で、税務署の事前通知が義務化されました。通知方法は「原則、電話により口頭で行う。電話による事前通知が困難と認められる場合は、税務当局の判断で書面によって事前通知を行う場合もある」(国税庁発表の税務調査手続に関するFAQ 一般納税者向け)とされています。
 和歌山税務署が送付した事前通知の文書は「税務調査の実施のお知らせ」。「改正」国税通則法で定められた10項目は示されています。問題は、文書の発行日が4月10日でも実際に会員に届いたのは同月12日と、調査日時(4月18日)までの期間が1週間弱とあまりに短い点にあります。
 国税庁の岡本榮一次長は、国会(2011年11月、衆議院財務金融委員会)で「調査手続きの透明性と納税者の予見可能性を高めるという制度の仕組みを鑑みれば、(事前通知は)調査開始日までの相当の時間の余裕を置いて行う」と答弁。税務行政に詳しい弁護士の鶴見祐策さんは「調査日時は、納税者側で遺漏なく準備できるよう相当の猶予期間(例えば原則14日前)を置いて決められるべき」と指摘しています。
 鉄工業者が事前通知を受け取るまで、和歌山税務署からは税務調査の日程調整の連絡はありませんでした。一方的に日時を示してきたことから、鉄工業者は調査を延期させています。
 今後の税務調査で事前通知(文書や電話で)があった場合、民商の仲間にすぐに知らせて対策をとるとともに、都合が悪い場合は調査日時を延期させましょう。
※FAQとは「よくある質問」のこと

和歌山税務署の文章による事前通知

税務調査の事前通知 要件不足は違法=岐阜北
 岐阜北税務署から電話での事前通知を受けた、岐阜北民商のHさん=外壁工事=は初めての税務調査に不安が募りましたが、支部役員らの励ましを受けて4月4日に民商に入会しました。仲間と納税者の権利を学び、対策を重ねて税務調査に臨んでいます。
 税務署員は4月2日、「確定申告の内容を確認させてほしい」とHさんに電話を入れてきました。同業者から民商を紹介され、翌3日に民商事務所を訪ねました。民商では、メモに残した税務署員との電話のやり取りを元に、法律で義務付けられた10項目の事前通知を税務署員が伝えていたのかを確認。7項目しか伝えておらず、適正手続きを欠いていることが分かりました。瑞穂支部長の村瀬彰生さんらが税務調査を乗り越えた経験を伝え「民商は頼りになる。一緒に頑張ろう」と激励。Hさんは4日、入会を決めました。
 16日、副支部長宅で対策会議を開催し、税金対策部役員ら5人が参加。Hさんから税務署とのやりとりの経過を聞いた上で、自主計算パンフを使って納税者の権利を学びました。3月に民商などが行った税務署交渉で、「事前通知で行うべき10項目は、一つでも欠けたら適法とは言えない」と総務課長が回答したことを確認しながら、今後の税務調査の進め方を話し合いました。
 「税務署員と会うときはみんな立ち会うので心配はいらん」との支部の仲間の励ましに、Hさんは「税務調査になって心配だったが、民商に入って税務調査を乗りきりたい」と語りました。
 5月10日に税務調査を受けることを決め、前日には会長の伊藤次雄さんも加わった「税務調査のリハーサル」で対策をとりました。

全国商工新聞(2013年5月20日付)
 
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