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  トップページ > 税金のページ > 不公正税制 > 全国商工新聞 第3044号10月22日付
 
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消費税還付 輸出大企業20社に1兆1751億円

 「トヨタをはじめ輸出大企業の有力20社だけで、2011年分の消費税の還付金が1兆1751億円に」―。税理士の湖東京至さん(元静岡大学教授)の有価証券報告書に基づく試算で明らかになりました。消費税10%が実施されれば還付金も倍になります。「輸出還付金は消費税最大の不公平」と語り、還付金制度をなくす提案も行う湖東さんに聞きました。

 今年8月に入手した有力20社の決算書によれば、表1に示したように、還付金額が一番多いのはトヨタ自動車。続いて日産自動車です。上位に豊田通商、三井物産、丸紅、住友商事、三菱商事など商社が名前を連ねているのが特徴です。

税務署が赤字
 有力20社の還付金合計は1兆1751億円。この額は全体の還付金額・約2兆5000億円の47%を占めています。つまり有力20社が還付金全体の約半分をもっていくのです。
 これらの輸出大企業の本社がある税務署は税金を返すのに追われています。全国の税務署のうち八つの税務署では、消費税の税収より還付金の方が多く赤字になっています(表2)。赤字額の第1位はトヨタの本社がある愛知県の豊田税務署です。
 トヨタ自動車の決算書の未収入金欄には豊田税務署からの未収入金が346億円あると明記されています。この額は2012年3月期の消費税の確定申告額(確定還付金額)から、中間申告によってすでに還付してもらった金額を差し引いた額です。この金額からトヨタの年間還付金を直ちに計算することはできませんが、いずれにせよ、膨大な還付金があることの動かぬ証拠といえます。

財界の要求で
 トヨタが税務署から還付してもらうお金はトヨタの下請け先などおよそ2万社が苦心惨憺して税務署に納めたもので、トヨタが税務署に納めた税金ではありません。つまり他人(他社)が納めた税金をトヨタ1社がもらうのです。一方は常に納税に汲々としているのに、一方は還付金を楽しみにしている。こんな不公平はありません。
 しかも、消費税の税率が10%に引き上げられれば、これらの企業の還付金は2倍になります。反対に下請け先や中小事業者は納税額が2倍近くになります。20%になれば還付金はいまの4倍になります。下請けや中小事業者の納税額は4倍近くになるのです。
 この仕組みをみれば誰が消費税の税率引き上げを望んでいるかはっきり分かります。財界は「10%では少ない。はやくヨーロッパ並みの20%にしろ」と政府をけしかけています。

ゼロ税率活用
 輸出還付金制度はなぜ認められているのでしょうか。輸出還付金制度は1954年、フランスで採用された付加価値税(日本の消費税と同じタイプの税金)ではじめて導入されました。
 その理由は、「外国のお客さんからフランスの税金はもらえないから」というもの。当たり前です。そこでフランスは輸出売上にゼロ%をかけることを考えました。一方、仕入れに入っている(とされる)税金分は輸出に対するものも引くわけです。これを仕入税額控除方式といいます。
 すると図1のように還付金が計算されます。つまり、輸出還付金制度は「ゼロ税率」と「仕入税額控除方式」によって可能になるのです。
 日本でもフランスが発明したこの仕組みをそっくりいただいてトヨタなどの輸出企業に巨額の還付金が支払われています。輸出還付金は政府が税金を使って輸出企業に補助金を出すのと同じです。輸出金額が多くなればなるほど還付金が大きくなります。そのため、アメリカなどから批判されている制度なのです。

輸出だけ優遇
 消費税には同じ非課税でも「ニセ」の非課税があります。病院やお医者さんの社会保険診療報酬は消費税が非課税となっているため患者から消費税分をもらえません。こちらの非課税は輸出と違いゼロ税率が適用されません。ですから非課税といっても還付金がないので、診療材料や薬、診療器具に含まれている消費税分は返してもらえません。
 つまり病院やお医者さんは消費者と同じなのです。これを「ニセ非課税」といいます。還付金のある輸出免税と「ニセ非課税」の間にも不公平があります。医師会などは輸出と同じようにゼロ税率にして消費税を還付してほしいと運動していますが、かなう見込みはありません。


消費税を直接税化して是正し中小業者の消費税負担を解消

 不公平で批判のある輸出還付金制度をなくす方法はあるのでしょうか。あります。一つは簡単です。消費税を廃止すれば輸出還付金制度もなくなります。でも、「財源がない、いきなり廃止するのは無理だ」という人もいます。
 そこで二つ目の提案をします。それは消費税を間接税ではなく直接税にすることです。具体的に言いますと、いま大きな企業(資本金1億円以上)だけに課税されている法人事業税の「付加価値割」という税金があります。
 この税金と消費税はよく似ています。そこでこの二つを合体することを提案します。法人事業税は道府県民税でいうまでもなく直接税です。直接税を還付することはガット(関税貿易一般協定)の協定に違反となります。
 法人事業税の付加価値割は資本金1億円以上の法人だけに課税しますから、その数はおよそ4万社程度。零細事業者を含む消費税の納税義務者約350万事業者の99%が消費税から解放されます。また、直接税ですから消費者への価格の影響もありません。加えて、取引の邪魔をする面倒な計算や事務負担もなくなります。いいことづくめの仕組みですが、まだ世間に知られていません。
 法人事業税の付加価値割の税収額は税率にもよりますが、10%にすればいまの消費税の税収とほぼ同じになります。その上、輸出還付金を支払う必要がありませんから、その分2兆5000億円も増収になります。こういう思い切った見直しも考えていく必要があるのではないでしょうか。

表1

表2

図1

全国商工新聞(2012年10月22日付)
 
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