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  トップページ > 税金のページ > 消費税 > 全国商工新聞 第3258号04月03日付
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消費税5%で景気は劇的に改善 富裕層の税逃れただせ
 =森永 卓郎さん(経済アナリスト/獨協大学教授)に聞く

 中小業者に過酷な負担を強いてきた消費税が導入されて4月1日で丸28年。「消費税率を8%に引き上げて景気が失速したのだから、5%に下げて景気低迷から脱出すべき」と提案する話題の書『消費税は下げられる!』(角川新書)を出版した、経済アナリストで獨協大学教授の森永卓郎さんに話を聞きました。

話題の新著を出版『消費税は下げられる!借金1000兆円の大嘘を暴く』
8%への増税が景気失速させた

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 −中小業者の切実な願いは「消費税率が8%に引き上げられてから本当に大変、5%に戻せ」です。その気持ちにピッタリの本ですね。
 2012年末に安倍政権が発足しましたが、13年は株価が2倍近くに上がるなど絶好調でした。
 それが、翌14年には前年比0・9%減、リーマンショック以来5年ぶりのマイナス成長(平成17年基準)に落ち込んだ。14年4月1日からの消費税8%への増税後、物価は3・5%上がったが賃金は0・5%増にとどまり、実質賃金はマイナス3%になったからです。節約して失速したのではなく、庶民の懐に金がないから失速したのです。
 御用学者は「増税の影響はせいぜい3カ月。駆け込み需要で買いだめた食料や日用品は3カ月で食いつぶすから」と豪語しましたが、真っ赤なうそだったことが明らかになりました。8%に上げて景気が失速したのだから5%に下げれば劇的に良くなる。子どもでも分かることです。
 もう一つの理由は、‘日本の財政は破綻寸前で、世界最悪’という理由が消滅したからです。
 独立行政法人や国立大学法人を含む、広い意味での日本政府の連結決算は、借金が1370兆円ある一方、資産が930兆円あり、差し引き借金は440兆円。GDP(国内総生産)の9割程度で、他の先進国並みの借金にすぎません。
 さらにアベノミクスで、日本銀行が年間80兆円という猛烈な勢いで、民間銀行が保有する日本国債を買い続けた結果、この数カ月以内に、日銀が保有する国債残高は440兆円に達することは確実です。借金440兆円と相殺されることから、日本政府は実質無借金経営を達成したことになるのです。借金がないのに増税を続ける理由はありません。

消費税を1円も払わない富裕層
 −自身の体験も交え、中小業者が消費税を転嫁できない一方、富裕層が消費税を負担していない実態も紹介しています。
 毎回、出版社と大ゲンカしています。原稿料の消費税分を支払ってくれと言うのですが、なかなか払ってくれない状況もあるのです。立場の弱い中小業者は、自らの仕入れには消費税をきっちり支払いますが、得意先には消費税を転嫁できない。
 税務署は容赦なく消費税を徴収する結果、消費税の滞納額は4396億円に膨れ上がっています。新規滞納額全体の6割以上を占め、所得税の1552億円、法人税の634億円をはるかに上回っています。中小業者が消費税を転嫁できていない何よりの証拠です。
 一方で、例えば、都心の超一流ホテルには金持ち専用の部屋がいっぱいあって、食事や洗濯などを高額料金で全部やってくれますが、富裕層は自分の会社の経費で支払い、消費税分は仕入税額控除できるので1円も支払っていないのです。銀座のバーやゴルフも会社の経費。生活の全てで消費税がかかりません。
 そういう手段を持たない庶民だけが消費税を負担させられているのです。低所得者ほど負担率が高い逆進性の問題と併せて、消費税は二重の意味で金持ちに有利なんですね。

応能負担税制で財源十分にある
 −「引き下げの財源は?」との疑問もありますが。
 高齢化が進む中で、膨らむ社会保障の財源をどうするのかという問題があります。消費税を社会保障の財源に充てるのは最悪の選択です。
 健康保険料も厚生年金保険料も雇用保険料も、現在は労使折半ですが、今後、社会保障のコストを全額消費税で賄うとなると、消費者に負担が押し付けられ、大企業の負担だけが軽くなるからです。
 日本のサラリーマンは、年収300万円なら所得税で5%、住民税で10%、社会保険料で約15%と、税・社会保険料の負担は収入の30%に上ります。
 一方で、年収何十億、何百億の大金持ちの最大の所得源は株式の譲渡益ですが、上場株の場合、税・社会保険料の負担率はたったの20%でしかありません。
 庶民が3割負担しているのに、富裕層は2割しか負担していない。社会保険料も本来応能負担にすべきなのです。この超・逆累進課税こそ社会的不公正そのものです。
 20%支払っているのはマシな方で、もっとひどいのは海外に逃げる。国際決済銀行の統計では、日本は英米を抜いて世界最大のタックスヘイブン利用国になりました。詳しくは本を読んでいただきたいのですが、こうした税逃れを取り締まり、応能負担、生計費非課税の原則で税制を見直し、将来的に消費税の全廃をめざすべきです。  昔、小学校の社会科の授業で、農民に重税を課した悪代官が「百姓と菜種油は、搾れば搾るほど取れる」と高笑いするテレビ番組を見たのですが、今、政府がやっていることは悪代官と一緒です。
 消費税は、現在の景気低迷を続けるだけの8%凍結ではなく、せめて5%に引き下げよ−。そう主張する国民的な運動が正しいし、日本経済や日本財政にも一番いい。中小業者の皆さんの頑張り時だと思います。

図1・図2

図3

全国商工新聞(2017年04月03日付)
 

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