全商連トップページ
中小施策 税金 国保・年金 金融 経営 業種 地域 平和・民主 教育・文化 県連・民商 検索
 全商連とは活動方針・決議署名宣伝資料調査婦人部青年部共済会商工研究所発行案内入会申込リンク
  トップページ > 税金のページ > 確定申告(自主計算) > 全国商工新聞 第3066号4月8日付
 
相談は民商へ
 
税金 確定申告(自主計算)
 

大特集! 民商版 税務調査に強くなる方法

 「改正」国税通則法に基づく税務調査が始まります。罰則を伴う強権的な税務調査が起こる可能性があります。しかし改正法の趣旨には調査手続きの透明性と納税者の予見可能性の向上、税務署の説明責任の強化がうたわれ、「調査は納税者の理解と協力を得て行う」とされています(別項=下・「国税通則法の改正趣旨」)。国税庁の内部文書には調査権限を一定制限しているものもあります。これらの内容を知り、納税者の権利を学び不当な税務調査から身を守ることが大事です。「税務調査に強くなる方法」を解説します。

事前通知が義務に10項目をチェック
 事前通知はこれまで法律に定めがありませんでしたが、今後は税務調査の前に納税者への事前通知が原則、義務化されました。
 事前通知を行う時期は「あらかじめ、納税義務者に対し…、通知するものとする」(通則法74条の9第1項)と定め、「調査開始日前までに相当の時間的余裕をおいて、電話等により事前通知する」(事務運営指針)としています。従って、調査前日の事前通知などは断って当然です。
 事前通知すべき事項は10項目(下図)。税務署員から電話があったときには、慌てずしっかりとメモを取りましょう。このうち一つでも欠けると事前通知の不備に当たり、適正手続きを欠いた違法調査となります。
事前通知の10項目
 電話による事前通知では本当に税務署員かどうかの確認ができませんから十分注意が必要です。
 また、税務署員が突然、納税者の自宅や店舗を訪問し、その場で事前通知をして税務調査に移行することは原則できないことになりました(問答(1))。突然の調査は断りましょう。

家族に協力義務はない
 事前通知の相手方は、実地調査を受ける納税者か、その税務代理人に限られます。
 税務署は、納税者に行うべき事前通知を、納税者の妻や家族など親族に依頼することはできません(問答(2))。このことは家族の間でも徹底しておきましょう。
 税務署員に協力を要請されても断りましょう。「社長さんの携帯電話番号を教えてください」と依頼されても「個人情報なので」と断りましょう。

やむを得ない場合 日付の変更は当然
 通則法(74条の9第2項)では「税務署長等は、通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して、(日時・場所について)変更するよう求めがあった場合、協議するよう努める」としています。
 「事前通知後においても、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合等には、申し出ていただければ変更を協議します」(税務調査手続に関するFAQ一般納税者向け)としています。
 また、「単に多忙であることをもって、合理的な理由に該当するとは判断できませんが、多忙であることの具体的内容を聴取し、個々の実情を斟酌した上で、『業務上やむを得ない事情』として調査日程等の変更が可能か否か検討する」(税務調査手続等に関するFAQ職員用)としています。
 調査日程などの変更の申し入れは、口頭による申し出で差し支えないとしています。
 税務当局側からの変更も可能としています。税務調査はあくまでも任意調査。都合が悪いときに日時を変更することは当然です。きっちりと説明しましょう。
やむを得ない場合 日付の変更は当然

「提示・提出」も納税者の承諾必要
 「(税務署員が)調査について必要がある場合において、帳簿書類その他の物件(その写しを含む)の提示・提出を求めるときは、質問調査等の相手方となる者の理解と協力の下、その承諾を得て行う」(事務運営指針)としています。提示・提出を強要することはできません。
 一方で「帳簿書類その他の物件の検査」に関して、正当な理由なく提示・提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出した場合は、罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科される規定が作られました。
 しかし岡本榮一国税庁次長は「罰則をもって強権的に提示、提出要求をすることは考えてない」と国会で答弁しています(11年11月18日、衆議院財務金融委員会)。
 全国商工団体連合会(全商連)の交渉でも、国税庁は「罰則があるからといって強権的にやらない」「提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、納税者の理解と協力の下、その承諾を得て行う」と答えています。
 提示・提出は「写し」を含み、コピーでも問題はありません。その場合、「何を見たいのか」「何の科目か」などを特定して、該当部分の写しを提出すればよく、総勘定元帳や現金出納帳などの原本を提出する必要はありません。
 一方、「帳簿などの提示がなかった」と、消費税の仕入れ税額控除否認がこじつけられる恐れもあり、柔軟な対応が大切です。

パソコンデータのお持ち帰りは拒否を
 税務署側は、パソコンを利用して作成された総勘定元帳などのデータを保存(コピー)して持ち帰ることまで想定しています。しかし、調査先で印刷帳票を確認すれば済むことであり、データをUSBメモリーなどにコピーしなければならない理由はありません。
 コピーされたデータは個人情報であり、個人情報保護法により行政機関が保有する情報には規制があります。さらに提出されたデータは、税務署のパソコンで利用するのですから、そのままハードディスクにコピーされる恐れがあります。
 「調査終了後、確実に消去する」と言うでしょうが、返却できない物件を留め置くことは認められません。データの持ち帰りは断りましょう。

帳簿類のコピーは必要な部分に限定
 税務署員がコピーした帳簿書類などの提出を求めた場合には、合理的な理由を確認しましょう。理由が納得できてから提出すればいいのです。
 原本の必要な部分に限ってコピーするようにしましょう。コピーした紙媒体の資料といえども所有権は納税者にあり、勝手に持って帰ることはできません。
 コピーした資料を持って帰る行為は「留置き」です。納税者の承諾を必要とし、納税者が拒否しても罰則はありません。持ち帰りを承諾した場合、税務署員に預かり証の交付を求めましょう。
 大阪国税局交渉(2月22日)では、「コピーを作成する場合は納税者の承諾を得た上で行う」「留置きした物件を署内でコピーする場合も、事前に納税者の承諾を得る」と確認。その上で「コピーなども返還の有無を納税者に確認して持ち帰る」「税務署が作成したコピーも返還の有無を確認する」と回答させています。
帳簿類のコピーは必要な部分に限定

勝手な反面調査は税務運営方針違反
 国税庁の税務運営方針は「反面調査は、客観的に見てやむを得ないと認められる場合に限って行う」と制限しています。ところが、税務署は納税者本人の調査を行う前に取引先や金融機関などを調査する事例が後を絶たず、得意先から取引を停止される事態まで起きています。
 反面調査は納税者への本人調査を行い、そこで出た疑問を確認する必要があるときにだけ、納税者の承諾を得て行うべきものです。
 通則法「改正」で事前通知が法制化されたことにより、事前通知前の反面調査は手続き違反といえます。
 さらに予見可能性の向上など国税通則法の改正趣旨に照らしても、本人調査前の反面調査の違法性は明らかです。

事前通知なければ理由の説明を要求
 事前通知なしで税務調査に来た場合でも、署員は納税者に対して調査への理解と協力を求めることに変わりはありません。事前通知がない場合でも、「調査の目的」「調査の対象となる税目」「調査の対象となる期間」などについては、その場で納税者に速やかに通知しなければなりません。
 なぜ自分が無予告調査になったのか理由をただすとともに、慌てずに通知事項をメモに取りましょう。
 任意調査では、納税者の都合を無視して強制的に調査はできません。突然の臨場で対応できない場合には、その旨を伝えて、お引き取り願いましょう。

税務調査のフローチャート

修正申告の勧奨は断ることができる
 税務署員が調査の結果を説明する前に「納税義務者の主張なども踏まえた非違内容を取りまとめ(る)」としていることからも、調査では自らの主張をしっかりと述べることが大切です。
 また、更正(申告した所得額や税額を是正すること)や決定(税務署が無申告の納税者に所得額や税額を決定すること)などをすべきと認められる場合は、税務署員はその額や理由など調査結果の内容を説明します。原則口頭で行われるため、納得のいくまで質問しましょう(問答(3)(4))。
 調査結果の説明後、修正申告(自分で所得額などを修正すること)を勧奨するとしています。応じるかどうかは納税者が決めることができ、納得できない場合は断れます。断った場合は更正などの処分となります。
 修正申告をした場合、更正の請求(5年間)はできますが、不服申し立てはできません。修正申告する場合も、税務署の押し付けではなく自分で決めることが申告納税制度の基本。納得できないままに書類に押印することはやめましょう。

税務調査の終了は書面通知が原則に
 税務調査を行った結果、「更正決定などをすべきと認められない」場合には、その旨を書面で通知することになりました。
 しかし、「新たに得られた情報に照らし非違がある」と税務署が判断すれば再調査ができるという、問題のある規定も盛り込まれています。
 再調査の理由を明らかにさせ、「新たに得られた情報」についても開示させることが大切です。「新たに得られた情報」の説明がなければ、調査手続きの透明性の向上という改正趣旨に反します。

不当な処分の場合異議の申し立てを
 修正申告の勧奨を拒否し更正処分を受けた場合や、決定処分を受けた場合に納得のいかないときは、その通知を受け取った翌日から2カ月以内に異議審理庁(税務署長)に対し異議申し立てをすることができます。
 異議審理庁は処分が適法なものか、適正な課税であるのかを審理します。納税者には自分の意見を口頭で述べる権利があります。その後、異議決定((1)却下(2)棄却(3)取り消しのいずれか)を行いますが、納得いかない場合は、国税不服審判所に審査請求をすることができます。さらに不服がある場合は裁判を起こすことができます。
 すべての不利益処分(白色申告含む)に理由付記が実施されることになり、理由が記されていなければ違法処分となります(問答(6))。

自主申告を貫いて納税者の権利守り
 憲法は「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」(30条)、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」(84条)と租税法律主義を規定しています。
 つまり租税の賦課、徴収が法律に基づいて厳格に行われ、権力の乱用から納税者の人権・生活を擁護することが求められています。この租税法律主義を具体化したのが「申告納税制度」です。
 申告納税制度は、納税者自らが税法に基づいて所得や税金の計算をして税務署に申告する権利(自主申告)のことで、国民主権を宣言した戦後の民主憲法の根幹といっても過言ではありません。全商連は、申告納税制度を守るよう一貫して奮闘してきました。

調査は任意なので納税者の承諾必要
 税務調査は、その目的から課税処分のための調査、滞納処分のための調査、犯則事件のための調査、不服審査のための調査に分けられます。
 「改正」通則法でも通常の税務調査は、任意調査であることが明確になりました。任意調査は犯則調査のときの強制調査と違います。通則法74条の8でも「当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」とし、あくまでも納税者の理解と協力が前提です。
 判例でも「質問検査の行使がいやしくも納税者の営業活動を停滞させ…それはもはや任意調査の限界をこえるものである」(1968年3月31日東京地裁)と戒めています。

納得ができるまで調査理由開示求め
 国税通則法第16条では、申告納税制度を「納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則」としています。ですから税務署員が調査に来たときに、納税者が「調査理由」を聞くのは、当然の権利です。
 全商連は税務署に「調査の際は事前に連絡し、その理由を述べること」を求めた請願署名運動に取り組み、第72国会(1974年)の衆議院大蔵委員会で「事前通知の励行と調査理由の開示」を内容とする請願を採択させています。
 税務署員は「所得の確認」と言いますが、これは「目的」であって「理由」ではありません。納税者が納得できるような具体的な調査理由が必要です。
納得ができるまで調査理由開示求め

守秘義務を理由に立会人排除できぬ
 立ち会いは「税務署員の密室の犯罪」を防止するもので、憲法13条「個人の尊重、幸福追求権」、31条「適正手続き」を確保するために不可欠です。納税者の権利を守るために尊重されなければなりません。
 立会人を置くかどうか、誰を立会人にするかは、納税者が決めること。納税者の私的権利に属する問題で、税務署員がとやかくいう問題ではありません。
 税務署員は守秘義務を理由に立会人を排除しようとしますが間違いです。税務署員の守秘義務の問題は、国民のプライバシーを当局側が漏らすことを禁止しているもので、第三者の立会人は関係がありません。「税理士法に違反する恐れがある」とも言いますが、立ち会いは、税務代理行為を行うためではなく、税理士法違反には該当しません。

民商の仲間同士で自主記帳を学ぼう
 そもそも帳簿とは所得税法で「財務省令で定めるところにより、帳簿を備え付け」としていますが、記帳義務違反については懲役刑や罰金刑は課されていません。
 憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される」としています。税務署は個々の業者の実態に即した記帳を尊重しなければなりません。
 民商では、領収書など原始記録の保存方法や実態に即した記帳方法を工夫して自主記帳に生かしています。こうした資料や記録によって申告所得の計算根拠を示すことができれば、それも立派な記帳です。
 民商ではパソコン記帳学習会や簿記学校を開き、みんなで教え合って自主記帳をしています。民商に入会して自主記帳・自主計算を進めましょう。

税務調査手続き等に関するFAQ
 国税庁が「改正」国税通則法に伴う税務調査の具体例を問答形式で税務署員に通達した「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)」の一部を紹介します。納税者が知っておくことで不当な税務調査に歯止めをかけましょう。(FAQ=よくある質問)

☆【事前通知の方法】
(問(1))納税義務者と電話による連絡が取れないことから、納税地に臨場したところ納税義務者と面接することができた場合、その場で事前通知を行い調査に移行することはできるか。
 (答(1))改正通則法74の9条第1項には「あらかじめ、当該納税義務者に対し、実地の調査を行う旨を通知するものとする」と規定されていますので、原則として、そのまま調査に移行することはできません。

☆【事前通知の相手方】
(問(2))納税義務者の親族に対して、納税義務者に事前通知の内容を伝えるよう依頼することは可能か。  (答(2))事前通知の相手方は、実地の調査の相手方となる納税義務者とその税務代理人とされています。従って、個人の納税義務者への事前通知については、税務代理人を通じて行う場合を除き、納税義務者本人に事前通知を行う必要がありますので、納税義務者の親族に依頼することはできません。
【結果説明の方法】
(問(3))(更正決定等をすべきと認める場合の)調査結果の内容説明は、調査のどの段階で行う必要があるのか。
 (答(3))「更正決定等をすべきと認める場合」とは、調査において、納税義務者及び税務代理人の主張等も踏まえた非違内容を取りまとめ、その内容について部内決裁を了とし、全ての質問検査等を終えた状態をいうものと解されますので、この段階で調査結果の内容説明を行うことになります。
(問(4))調査結果の内容説明を書面により行うよう納税義務者から申し出が合った場合は、どのように対応すればよいか。
 (答(4))調査結果の内容説明の方法について特段規定されていませんが、運用上は、原則として、口頭により行うこととします。口頭で行う場合であっても、必要に応じ、非違の項目や金額を整理した資料など参考となる資料を示すなどして、納税義務者の理解が得られるよう十分な説明を行うとともに、納税義務者から質問等があった場合には、分かりやすく回答するよう努める必要があります。

☆【更正決定等をすべきと認められない旨の通知書】
(問(5))「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」の法的効果はどのようなものか。
 (答(5))その通知行為自体が何らかの法的効果を生じさせているものではなく、法律上は事実行為に当たると考えられますが、当該通知をもって一連の調査が終了すること、また、法令上定められている「新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき」の要件に該当しない限り、同一税目・課税期間について再度の調査を行うことはできないことに留意する必要があります。

☆【理由附記】
(問(6))理由附記をせずに行った不利益処分は、直ちに違法として取り消されるのか。
 (答(6))平成25年1月1日以後に行う不利益処分には、法令に基づき、理由附記を行う必要があるため、理由附記をしていない処分は、違法なものとして取り消されることになります。

調査対策に活用を 資料集を作製=全商連
 全国商工団体連合会(全商連)は『「改正」国税通則法対策資料集No.2』を作製、普及しています。情報公開法に基づく開示請求で入手した「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)」などを掲載しています。国税当局の動きを知り、税務調査対策を進める上で必読の資料です。
 頒価300円。お問い合わせは最寄りの民主商工会まで。

* * *

☆別項
 国税通則法の改正趣旨〜法令解釈通達の「制定分」より〜
(1)調査手続きの透明性(手続きの意思決定過程の見えやすさわかりやすさ)を高める
(2)納税者の予見可能性(危険な事態や被害が発生する可能性があることを事前に認識できたかどうか)を高める
(3)課税庁の納税者に対する説明責任(権力を持つ行政が、外部の利害関係者に自身の行動について事前・事後に説明する責任)を強化する。
※( )内は挿入
商工新聞購読はコチラ

全国商工新聞(2013年4月8日付)
 
相談は民商へ
   
  ページの先頭