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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3177号7月20日付
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税金 徴税攻勢
 

おとり調査でやりたい放題 違法、不当調査に怒り=山口・周南民商

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不当な税務調査に抗議した佐藤さん(前列中央)と民商の仲間たち

 税務署員がおとり調査(内観調査)をした上に事前通知もなく税務調査を始め、大がかりな反面調査を実施。所得税の青色申告を取り消した上に消費税の仕入税額控除も否認し、多額の税金を追徴するという不当な税務調査を受けた山口・周南民主商工会(民商)の佐藤都さん=飲食。納税者の権利を侵害し、事前通知を義務化した国税通則法にも逸脱した調査は違法として課税処分の取り消しを求めています。

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1人で来店したお客さんにも会話を楽しんでほしいと接客を大切にする佐藤さん

突然の調査が
 佐藤さんが経営するスタンドバー「ウィズミー」は周南市内でも有数の繁盛店です。「1人で来店するお客さんも従業員との会話を楽しんでほしい」という思いから16人の従業員を雇用し、店舗を拡大して売り上げを伸ばしてきました。
 そこに目を付けた光税務署。13年10月16日、事前通知もなく突然、広島国税局の職員と光税務署の署員が佐藤さん宅に訪ねてきました。チャイムとともに何度もドアをたたき、外には他の署員が張り込むなど犯罪捜査のようでした。
 駆け付けた周南民商の海田敏治事務局長が「なぜ事前通知をしなかったのか」と抗議すると「理由は言えない。これが事前通知だ」と開き直り、部屋に入れるよう要求。「日を改めてほしい」と話し1時間ほどのやり取りの末、署員はようやく引き上げました。

ツケを強要し
 1カ月後の11月14日から佐藤さんは調査に応じますが、税務署は民商の仲間の立ち会いを拒否。年が明けた14年1月7日の調査で、統括官の顔を見た佐藤さんは驚きました。調査直前に来店したお客さんだったのです。
 統括官は自分の誕生日プレゼントを店の女の子に要求し、ネクタイを受け取っただけでなく、酔っぱらってツケを強要。「この店はツケもできないのか」と怒鳴っていました。

常連客に反面
 並行して常連客への大がかりな反面調査を実施。「勤務先に税務署員が来て迷惑した」「調査が入った店にはしばらく行けん」などの声が寄せられ、客足が遠のきました。
 精神的に追い詰められた佐藤さんは眠れない日が続き、うつ病と診断。「どうしてこんな目にあわなければならないのか。生きることに疲れ、死ぬことも考えた」と声を震わせます。

青色取り消し
 3月13日に更正処分が通知され、現金出納帳や売上伝票の提示がないことを理由に所得税の青色申告を取り消し、消費税の仕入税額控除も否認。平成22年(10年)から3年間で所得税と消費税を合わせて約730万円(本税+過少申告加算税)を追徴しました。

人件費で推計
 署員に金額の根拠を質問しても「広島市内の給料が同等の店を参考にした」と答えるだけでした。
 「広島市と周南市では物価が違うし、店の形態でも客単価が違う。うちの店は1人のお客さんにも従業員をつけているので人件費が高い。実態を無視した課税は納得できない」と佐藤さんは5月に異議申し立てしました。異議決定では23年分消費税の更正処分と過少申告加算税の一部を取り消したものの、その他は棄却されたため、14年8月に国税不服審判所に申し立てました。
 裁決を前にした今年6月2日、周南民商は光税務署に抗議。佐川宏助県連会長や藤井和美民商副会長、代理人の金巨功税理士、小田隆典税理士など10人が駆けつけました。仲間は「調査経過記録書」のほとんどが黒塗りに加えて100カ所近くの誤りがあると指摘し、併せて公金(捜査費)を使って調査直前に内観調査していることを追及。総務課長は「私費で飲みに行っており、何ら問題ない」と居直りました。
 不服審判所は6月30日、申し立てを棄却。藤井副会長は「違法なおとり調査の上に推計課税の仕方もおかしい。納税者の権利を守るため佐藤さんと一緒に頑張りたい」と話しています。

処分は取り消すべき
税理士・金巨功さん
 税務調査に着手することが分かっている飲食店に例え自費であっても来店することは常識では考えられないこです。統括官はこの店に税務調査が行われることを知る立場、来店を控えるのが市民の常識です。にもかかわらず、5回も来店しプレゼントを要求する、ツケを強要する行為は公務員という立場をはき違えた「公私混同」の極みです。
 調査経過記録書の多くが無予告現況調査前の反面調査。調査経過記録書を分析すると延べ32回、11人の職員を動員し、都合57人を調査しています。
 これほど大がかりな反面調査をするならば、相当大きな脱税の疑いがあり、大きな増差税額等があるはずですが、結果として「同業者」の人件費を基礎に推計課税するという特異な方法で課税処分をしています。しかも3年間のみの更正処分で、かつ重加算税ではなく過少申告加算税で済ませています。このことからも無理な課税であったことの証左と考えられます。
 さらに税務署は売上伝票、現金出納帳の提示がないことだけで推計課税をしています。仮に推計するのなら仕入金額を基礎とした推計方法、本人の記帳に基づく推計方法または資産負債増減法によるべきです。
 この税務調査は憲法の要請する「個人の尊厳」(13条)、「適正手続きの保障」(31条)、「住居不可侵」(35条)が不当に侵害され、その他の憲法上の要請から大きく逸脱しており、違法な調査手続きがされたことから課税処分は取り消すべきです。

全国商工新聞(2015年7月20日付)
 

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