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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3132号8月25日付
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“従業員の給与”返して 差押さえ解除求め審査請求=兵庫・尼崎

 社会保険料(厚生年金保険・協会管掌健康保険)の滞納を理由にした差し押さえが急増しています。兵庫・尼崎民主商工会(民商)のMさん=縫製=も売掛金が入金された預金を差し押さえられ、従業員に給料を支払うことができませんでした。「従業員に支払う給料分の差し押さえを解除してほしい」と日本年金機構尼崎年金事務所に請願書を提出し、社会保険審査会にも不服申し立てをしてたたかっています。

 売掛金標的に
 「いま、年金事務所の人が差し押さえに来ています」。銀行員の言葉に頭が真っ白になったMさんは、しばらくその場から動けませんでした。この日(5月19日)は売掛金の入金日で、翌日が給料日。差し押さえられたのは売掛金347万円の全額で、そのうち300万円は従業員の給与に充てるものでした。
 Mさんの頭に浮かんだのは、二十数人の従業員の顔。家庭の状況を知り尽くしているだけに、給料が未払いになるとどうなるのか分かっています。気を取り戻したMさんは、その足で尼崎年金事務所へ。「従業員の中には母子家庭や重度障害の人もいる。給与を受け取れなければ、たちまち生活が行き詰まる。従業員の給料を返してほしい」と訴えましたが、「486万円が滞納になっている。解除はできない」の一点張り。その上、担当者は、「なしのつぶての滞納者であることが差し押さえの最大の要因」という言葉を投げつけました。
 民商に行き、声を詰まらせながら話をすると「私を責めずに『これまで、よう頑張ってきたやないか』と励ましてくれた」と話すMさんは、また声を詰まらせました。
 Mさんは5年前、社会保険労務士に強制加入であることを指摘され、正社員5人を社会保険に加入させました。会計処理のすべてを従業員に任せていたMさんは2010年8月、年金事務所に呼び出され、280万円が未納になっていることを初めて知りました。分納を相談すると毎月70万円の納付を迫られ、納入日が近づくと担当者から電話が入るように。約束どおりに納付できないときもありましたが、それでも3年余り、毎月、出向いて保険料を納付していました。

 従業員も嘆願
 ことし2月になってから担当者が代わり、電話が入らなくなりました。仕事に追われていたMさんは2月から4月まで納付に行けず、4月22日、年金事務所に納付相談の電話を入れていました。
 「担当者から差し押さえの話はなかった。私はなしのつぶての滞納者じゃない」―。Mさんは差し押さえの翌日、土谷洋男会長=印刷=や事務局員と一緒に年金事務所に出向いて抗議。土谷会長は「給与の差し押さえは制限されている。従業員の給与分の差し押さえを解除すべき」と厳しく指摘しました。しかし、担当者は「解除できない」と繰り返しました。
 金策に走り回ったMさんは、食事も喉を通らず、夜も眠れない日々…。差し押さえから4日後、気付いたらJRの踏み切りで自殺を図ろうとしていました。「死んだらあかん」。老夫婦と中年の男性に止められ、われに返ったMさんはその時、「死ぬな、生きて責任をとれ」と自分に言い聞かせました。
 給与を取り戻すために何ができるかを考え、従業員に嘆願書を書いてもらったところ、全員が自分の名前とひとことを書いてくれました。Mさんは26日、その嘆願書と社会保険料の「納付の猶予」申請書を提出し、28日に再び従業員と一緒に年金事務所に出向きました。従業員も「私たちの給与を返してほしい」と声を上げ、3時間にわたって抗議しましたが、年金事務所は差し押さえ解除に応じませんでした。
 Mさんは6月7日、社会保険審査会に審査請求書を提出。併せて胸の内をつづった8枚の手紙と「給与分の控除を求める請願」を年金事務所に届けました。
 Mさんはいま、自宅の電気やガスを止められ、工場の2階で寝泊まりをして金策に追われながら夜遅くまでミシンを踏んでいます。つらくなると民商に出かけ、元気をもらっています。「勉強会に何度も誘われたけれど、行こうとしなかった。今回のことで学ぶことがどんなに大切かを思い知った。絶対に従業員の給与を取り戻す」とMさんは決意しています。

従業員が提出した嘆願書(抜粋)


保険料負担の軽減と納税緩和の適用急務

 社会保険料の滞納を理由にした差し押さえ件数は、2万2556件に上り(2012年度)、日本年金機構が10年1月1日にスタートして以降、差し押さえ件数は急増しています(グラフ)。

厚生年金保険料の滞納事業所数と差し押さえ件数

 厚生年金保険料は応能負担の原則が適用されておらず、月給61万円の社長と月給1億円の社長の本人負担の保険料は同じです(図)。事業所負担も小規模ほど重く、厚生年金保険に加入している176万事業所のうち4人以下は56・3%と半数以上を占め、事業所規模が小さいほど収納率が低くなっています。

厚生年金保険料負担率

 186回国会で成立した「小規模企業振興基本法」の付帯決議では「社会保険料が小規模企業の経営に負担になっている現状があることに鑑み…従業員の生活の安定も勘案しつつ、小規模企業の負担の軽減のためにより効果的な支援策の実現を図ること」が決議されています。
 保険料負担の軽減とともに、国税と同様に法律に基づき、社会保険料の「納税緩和措置」(納付の猶予、換価の猶予、滞納処分の停止)を適用させることが大切です(表)。

納税の猶予、換価の猶予、滞納処分の停止

全国商工新聞(2014年8月25日付)
 

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