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  トップページ > 国保・年金のページ > 国民健康保険 > 全国商工新聞 第3269号6月26日付
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「従業員の給与」と訴え 介護報酬差し押さえ解除=福島・いわき民商

職権「換価の猶予」に
 延滞金を含め700万円の社会保険料の滞納を理由に介護報酬が差し押さえられ、銀行口座の凍結を受けていた福島県いわき市の平田浩さん(仮名・39)=介護事業所。インターネットで全国商工団体連合会(全商連)のホームページを見つけ、いわき民主商工会(民商)に相談。仲間とともに平年金事務所と交渉し、5月24日、介護報酬の差し押さえが解除になり、年金事務所長の職権による「換価の猶予」が認められました。

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平田さんに届けられた「換価の猶予通知書」

 「介護報酬が差し押さえられて収入が途絶え、原発事故による東電からの賠償金も底をつき、従業員に給与が払えなくなった。廃業を考え、死んだ方が楽になるかもしれないと何度、頭をよぎったことか…。民商に出会えなかったら解決はできなかった。同じように苦しんでいる人たちの力になりたい」。困難を乗り越えた平田さんは民商に入会し、思いを口にしました。
 平年金事務所の差し押さえは2015年12月から1年半に及び、その間、月額約90万円の介護報酬が断ち切られました。許せなかったのは差し押さえが強行される直前、お金をかき集めて15万円ほどを納付した時、職員が「はした金はいらない。差し押さえすれば簡単なんだ」と暴言を吐いたことです。はらわたが煮えくり返る思いでした。

従業員も一緒にたたかう覚悟で
 従業員の川崎みどりさん(仮名)が全商連のホームページを見つけ、平田さんは1月19日、電話で相談しました。介護報酬が差し押さえられていることを話したところ「それは、おかしい」と言われ、その言葉に平田さんは救われました。
 この間、平田さんは民商や全商連の仲間に励まされながら倉林明子参院議員(共産)の力も借りて年金事務所と交渉。「介護報酬は人件費が含まれているので、その分は差し押さえを解除してほしい」と訴えましたが、職員は「差し押さえしているのは介護報酬であって給与ではない」との姿勢を崩しませんでした。これには川崎さんも激怒。「私は1人で中学1年生の子どもを育てている。給料の遅配・欠配が続いたら生活が成り立たない」と平田さんと一緒に立ち上がりました。
 「事業所を辞めて失業保険をもらった方が楽かもしれないけれど、原発事故で自宅待機になった時にも平田さんは給与を支給してくれた。だからどうしても差し押さえを解除させて事業を継続してほしかった」と川崎さん。年金事務所との交渉にも参加し、「従業員の給与が介護報酬に含まれているかどうか調べてほしい」と食い下がりましたが、職員は「完全には調べられない」と不誠実な態度を取りました。
 切羽詰まった川崎さんは厚生労働省に電話をかけて「このままでは生きていけない」と訴え。後日、平田さんは厚労省担当者から「労働契約をコピーして、売り上げは手書きでいいから集計するように」など交渉について具体的なアドバイスを受けました。

人件費は報酬に含まれると認め
 しかし、年金事務所は「差し押さえているのは給与ではない」との認識を改めませんでした。腹に据えかねた川崎さんは再度、「介護事業しかやっていない事業所が従業員の給与を払うのは介護報酬以外に何があるのか」と抗議すると「借り入れと資産売却」とあぜんとするような回答が。「口座が凍結させられ、借り入れができると思うのか。売却できる資産がどこにあるのか」とさらに詰め寄ると職員はようやく「資産はない、借り入れもできない。一般的に人件費は介護報酬に含まれる」と認めました。
 粘り強い交渉の結果、介護報酬の差し押さえは解除されるとともに5月24日から1年間、社会保険料の換価の猶予を実現。10月から160万円の社会保険料を7回で分納することになり、「これでやっと従業員に給料を払うことができる」と笑顔を取り戻しました。
 平田さんは2004年7月、高齢者や障害者を支援する介護事業所を立ち上げ、訪問介護や介護用品の販売、介護タクシーなど事業を展開し、利用者を増やしてきました。
 しかし、震災後、従業員や利用者が避難し、売り上げが減少。資金が回らなくなり、期日どおりに社会保険料を納付することが困難になっていました。
 この間、交渉に参加したいわき民商の佐竹勝裕さん=保険代理店=は「粘り強く交渉する中で職員の態度や誤りを改めさせることができた。平田さん本人の頑張りがあったからこそ実現した。この成果を大いに知らせ、力にしたい」と話しています。

【参院厚労委】介護報酬の差し押さえやめよ 倉林明子議員(日本共産党)がただす

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介護報酬の差し押さえの問題を取り上げた倉林議員

「個々の実情に配慮し慎重に」と塩崎厚労相が答弁
 社会保険料の滞納を理由に、年金事務所が介護事業所に支払われる介護報酬を差し押さえている問題が、8日に開かれた参議院厚生労働委員会で取り上げられました。
 倉林明子議員(共産)は「小規模な介護事業所は資産もなく介護報酬のほとんどが人件費になっている」ことを指摘した上で「介護報酬の差し押さえは労働者の賃金を丸ごと差し押さえるようなもので、介護利用者にも被害が出かねない。実態をつかんだ上で慎重な対応が必要」と強調しました。
 塩崎恭久厚労相は「介護報酬が事業所の主な収入源になっている中で、差し押さえの対象から介護報酬を除外するのは収入構造上からも現実的ではない」との見解を示し、人件費が介護報酬に含まれていることについて言及しませんでした。
 一方で、塩崎厚労相は介護事業所への滞納処分が利用者に与える影響を懸念して「今後も個々の実情を十分に配慮した上で慎重に行いたい」と答弁しました。
 猶予制度の周知について伊原和人年金管理審議官は「猶予制度の概要を記したリーフレットを年金事務所の窓口に備え、納付相談時に猶予制度の説明を行うとともに必要に応じて申請書等を渡している」と答弁。「きめ細やかに早めの滞納相談に乗ることが求められる。督促と併せて猶予制度を積極的に知らせるべき」との指摘に対して同管理審議官は「猶予制度の周知の重要性を認識しているので、これまでの取り組みに加えて何ができるか検討したい」と答弁しました。
 倉林議員は「社会保険料が高い一方で介護報酬が低い。納付できず事業所が追い込まれ、実際に倒産しているケースもある。生存権を保障するという観点からも一層の負担軽減をすべき」と訴えました。
申請型「換価の猶予」社保適用わずか
 質問の中で2015(平成27)年度から実施された申請型「換価の猶予」制度の適用件数が明らかに。国税は15年度に2万4300事業所、16年度に2万5174事業所に適用されているのに対して社会保険料は15年度に14事業所、16年度に97事業所と適用件数がわずかであることが判明しました。

積極的に納税緩和適用すべき=浦野 広明さん(立正大学法学部客員教授)
 国民は、誰でも年をとり、老齢に伴う心身の変化で要介護状態となり、入浴、排せつ、食事などの介護、機能訓練、看護、療養上の管理その他の医療を要すること(要介護)が避けられない。要介護者は、自立した生活を営むことができるよう、国・自治体に対して、福祉の増進を求める権利がある(介護保険法1条)。介護保険を含む社会保障の権利の根拠が憲法25条(生存権)にあることは言うまでもない。
 介護保険法に基づく介護事業所の職員は、利用者宅を訪問し、要介護者が安心して自宅で生活できるようにサービスをしている。介護サービスを提供する介護事業者には、介護サービス提供の対価として、介護保険制度に基づき国民健康保険団体と公費(市町村)から、介護報酬が支払われる。
 介護事業者が経営難から社会保険料を滞納した場合に、事業者に支払われるべき介護報酬を年金事務所が差し押える事態が発生している。
 国税徴収法などは給与の一定額を「差押禁止財産」としている。塩崎恭久厚労相は「介護報酬を差し押さえの対象から外すのは現実的ではない」としているが、この判断は間違っている。
 東京都福祉保健局の調べによれば、介護事業者の平成27年度決算における労働分配率は90・7%である。つまり、介護事業者が受け取る介護報酬収入の90・7%は労働分配(給与)に充てられる。介護報酬は一皮むけば内情は給与(差押禁止財産)なのである。年金事務所は滞納者の実情を見て、積極的に納税緩和制度の適用をする義務がある。

全国商工新聞(2017年6月26日付)
 

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