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  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第3101号1月6日付
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小企業を第1に! 小規模事業・家族経営は世界が重視

 「小さい企業を第一に考える」―今、世界で小規模企業・家族経営を重視する政策が確実に広がりを見せています。転換点となったのは、00年6月に採択されたヨーロッパ中小企業憲章。08年12月に採択された欧州小企業議定書(SBA=別項)では、この理念を根付かせるための「10の原則」を定めました。日本でも10年6月に中小企業憲章を閣議決定しています。トレンドとなった小企業重視の流れと、小規模企業が日本で果たしている役割についてあらためて検証しました。

欧州では少企業の役割評価
駒沢大学教授 吉田 敬一

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 世界の流れを正確に表現すると、「小企業重視はルールある市場経済の世界のトレンド」といえます。市場原理主義の最先端を行く日本と、マイスター制度や職人企業を国内ルールで守っているドイツ、イタリアとでは図1が示すように自営業者数の推移は逆方向をたどっています。小企業の社会経済的役割が終わったのではないことは、一目瞭然です。

図1

 08年に公表されたEU統計局の資料によると、EU27カ国の企業数は1965万社あります。これを従業員規模別にみると小企業(50人未満)は約1940万社で企業数の98・7%であり、雇用シェアでは50・2%で過半数を占めています。特に従業員9人未満の零細企業を見ると約1800万社で企業数の91・8%、雇用シェアの29・6%に及んでおり、家族経営を中心にした自営業の大きな存在が特徴的です。ちなみに日本の小規模企業(製造業20人以下、第3次産業5人以下)の比重は企業数で87%ですが、雇用シェアは16・2%で、EUと比べると低くなっています。
 EUで中小企業の役割が重視されている理由は二つあります。
 一つは各国国民経済に占める中小企業の大きな役割です。中小企業(EUでは250人未満)は雇用の7割近くを占めているだけではなく、EUのGDP(国内総生産)の6割を生み出しています。日本の場合も雇用の7割以上、付加価値の5割を中小企業が担っていますが、その比重は徐々に低下しつつあります。

 地域で個性発揮
 EUの小企業・自営業の多くは地域文化に根差したモノづくりや商業機能に強みを持っているので、地場産品は「地産・地商・地消」にとどまらず、一部は輸出産業としても発展しており、空洞化しない経済の土台を形作っています。先進国との間の二国間貿易で常に日本が輸入超過になっている代表的な国は図2にあるようにイタリアとフランスです。

図2

 日本が両国から輸入している製品は医薬品を除けば、ワインなどの飲料や農産物、バッグ・アクセサリー・履物・小物などの雑貨類、ファッション製品であり、地域資源を生かしたホンモノ指向で文化度が高い地場産業製品です。
 これらの製品は、小規模な専門業者、農民の地域内分業で生産・販売されており、地域内経済循環の度合いが高く、また経験と技能が不可欠であるため多様な年代層の安定した雇用が生み出され、持続可能な地域経済が形成されています。その結果、欧州の都市はどこへ行っても個性的であり、固有の文化を持ち、固有の生活スタイルを楽しみ、美しい景観が維持・継承されています。
 この点は日本でも「和の生活文化」を感じる地域を思い浮かべれば、その地域の経済基盤は地域生活文化に基礎を持つ地場産業・農林漁業・商店街のまちであるのと同じです。
 小企業が担う第二の意義は、地域コミュニティーの交差点(扇の要)の役割です。コミュニティーは人と人とのつながりが日常生活の中で、夕食の買い物や喫茶店・居酒屋での憩いのひととき、なじみの床屋での会話の楽しみなど、当たり前に存在していることによって可能になります。そのためには、業者が専門知識のみならず地域の情報などを熟知している必要があり、「24時間市民」としての自営業者の役割が不可欠になります。

 21世紀に不可欠
 グローバルに経済活動を展開する大企業では果たしえない役割を小企業は担っているので、EUでは経済のグローバル化が急速に進みだした00年に「小企業はヨーロッパ経済の背骨である。小企業は雇用の主要な源泉であり、ビジネス・アイデアを育てる大地である。小企業が最優先の政策課題に据えられてはじめて、“新しい経済”の到来を告げようとするヨーロッパの努力は実を結ぶだろう」という書き出しで始まる小企業憲章を制定しました。
 そしてグローバル競争力強化に寄与する市場経済の理論と国民経済の特殊性を基礎にした規制政策の二本足の経済政策に踏み出し、エネルギー政策に見られるように地域の多様性と持続可能性を追求する道をまい進しつつあります。
 目を世界に転じれば商工自営業者の役割は終わったのではなく、逆に21世紀経済にとって不可欠な存在であることが見えてきます。中小業者に光を! から中小業者が光になって! という気概で新しい日本の未来をあなたの地域からつくり始めましょう。

少企業が果たす豊かな役割

87%の事務所が少企業
地域の雇用を下支え

 日本の企業数は約421万社。このうち中小企業(資本金3億円以下、従業員数300人以下)は、約420万社で、企業数の99・7%を占めています(図3)。このうち、小規模企業(製造業20人以下、サービス業など第3次産業は5人以下)は366万社で、日本の企業数の87%にも及ぶなど、日本経済の「縁の下の力持ち」的存在です。
 従業員数は、会社の常用雇用数と個人事業所の従業者を合わせると約4297万人。このうち中規模・小規模企業に勤めている従業者は合わせて2470万人で、約63%。小規模企業の従業者数は635万人で16%となっています(図4)。
 小企業は地域で女性や障害者などにも働く場を提供。不況や災害時にも大企業のように簡単に労働者を解雇することなく、雇用の守り手として雇用の維持に力を入れています。

図3、4

仕事生みだし地域活性
リフォーム助成全国に

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中小業者の仕事を広げる住宅リフォーム助成制度

 小企業は、現行の制度を活用するだけでなく、共同の運動で新しい仕事もつくりだしています。
 その一つが住宅リフォーム助成制度。住民がリフォームを行う場合、自治体がその一部を助成するもの。「個人資産の形成に資する」として、多くの自治体は当初これを拒否していましたが、民商・全商連の運動で、04年にはわずか87自治体でしかなかったものが、12年には533自治体へと拡大。また、13年4月には、群馬県高崎市が住宅リフォーム助成をヒントに自営業者の店舗改装費や設備購入費などを補助する商店版リフォーム助成を創設し、全国に大きな反響を広げています。

飲食店は街のオアシス
楽しい会話で疲れ癒やし

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1000人が参加する飯田民商主催の「いいだ夜の街オリエンテーリング」

 居酒屋やスナックなどの飲み屋さんは、街のオアシスとして地域を支え、マスターやママさんなど店主との会話が、明日への活力をつくりだすことも。その経営主体のほとんどが、小企業・家族経営の店です。
 民商・全商連が取り組む「夜の街オリエンテーリング」(スタンプラリー)は、そんなオアシスを支える飲み屋さんを活性化するイベント。地域によっては市民の10人に1人が参加する夜オリも生まれています。
 また、各地で取り組まれる民商祭りは、地域の祭りとして定着し、1万人、2万人が参加し、地域おこしにつながっています。

オリンピックや宇宙にも
大手に負けぬ高い技術

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最先端の技術を担う中小企業者(「下町ボブスレー」の完成記者会見)

 下請け、孫請けとして部品製造の欠かせない担い手となっている中小企業。しかし、そのモノづくりは宇宙や深海、オリンピックなどの最先端でも活躍しています。
 大阪の町工場が取り組み、温室効果ガスの観測技術衛星として宇宙に打ち上げられた「まいど1号」(09年1月)、ソチオリンピックでの採用をめざして、東京都大田区の町工場がつくりあげた「下町ボブスレー」、さらには、日本海溝の8000メートルの深海探査を目的に、東京都大田区の中小業者などが開発した探査ロボット「江戸っ子1号」など、その技術力は大手に負けるものではありません。
 東京・北区の民商会員でもある株式会社日進産業は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が募集していた「ロケットの断熱技術」に貢献する断熱塗料を開発。米国の政府機関、大企業など年間4000人もの人が視察に訪れています。

歴史や風土に根差して
地場産業守り育てる

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「京都の伝統産業」「京象嵌」づくりを支える中小業者

 小企業・家族経営は歴史や風土、伝統に根差した地場産業の守り手でもあります。愛媛県の今治タオル、福井県の鯖江の眼鏡、石川県の加賀友禅、京都の西陣織など伝統産業を支える中心となっているのが小企業です。
 「名工」に表彰された京都の伝統工芸、「京象嵌」の職人の建部一雄さんもその一人。08年に「京の名工」として表彰されました。
 また、昨年11月にはガラス加工業の澤田勝明さんが、「卓越した技能者」として厚生労働大臣から「現代の名工」を表彰されました。

家族経営の重視を要求
全商連・少企業憲章(案)

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日本版・少企業憲章(案)

 全商連が11年7月に発表した日本版・小企業憲章(案)は、(1)小企業政策の根本的転換をすすめる(2)小企業・家族経営の役割を正当に評価する(3)小企業・家族経営の経営環境を改善する政策方向-を打ち出しました。
 このうち、小企業・家族経営の「多様な経済的・社会的役割」として挙げた8項目は以下の通りです。

(1)生きる糧を自ら生み出す活力にあふれ、地域に密着した社会的存在
(2)持続可能な地域づくりと地域経済の再生に不可欠
(3)高齢化社会を支え、新しいモノとサービスを生み出す
(4)人間性の回復に欠かせない存在
(5)日本の風土を熟知し、技術を生かして地域社会の存続と安全確保に知恵と力を発揮
(6)高齢者や障害者、女性に働く場を提供し、地域の雇用を守る
(7)環境・リサイクルに貢献
(8)文化を継承し、地域に豊かさと元気と展望をもたらす

全国商工新聞(2014年1月6日付)
 
   

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