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ブックスページワンに設けられた「本屋さんが選んだ食と健康フェア」

変わる業界 書店再生へ果敢に挑戦

 ネット書店や電子書籍の台頭により書店が苦境に立たされている中で、日本書店商業組合連合会(日書連)が、街の書店を元気にするための取り組みを進めています。欠かせないのが収益の改善。返品本を減らし利幅を広げることで、書店が責任を持って仕入れ、責任を持って販売することを拡充しようとしています。

魅力の1冊本屋が選び

 東京都北区のとある書店。店内の一角にある「本屋さんが選んだ食と健康フェア」のコーナーが好評です。食材の基本から発酵食品、主菜や副菜のレシピ、ヘルシーおかず、薬膳など食と健康に関する書籍がずらり。代表取締役の片岡隆さんは「食と健康は旬のテーマ。これまでは健康や料理、医学を別々に配置していたが、食と健康を一つのコーナーにするとお客さんの目に入り、ニーズに応えられる」と自信を持って語ります。
 このフェアは日書連が実施している企画です。書店再生委員会の委員がロングセラーを中心に食と健康をテーマにした実用書48点72冊を選び、それを1セットにして出版社に注文。8月から11月末までの4カ月間委託販売するというものです。385書店から408セットの注文がありました。昨年度に続く取り組みで、もともとは日書連に加盟する東京都書店商業組合(東書商)の書店再生委員会が提案したもの。この書店では1セットを注文。在庫本を加えて155冊のうち85冊を販売。「100冊を仕入れ、5割が売れることはまれなこと。取次店からの本を待っているだけでは街の書店は成り立たない。これからは季節ごとに書店が選んだ本をお客さんに提案したい」と意欲的です。
 書籍・雑誌の販売額は約1兆7400億円と推定されています(12年)。出版市場は消費税が5%に引き上げられたころから縮小傾向が顕著になり、特に月刊誌・週刊誌は97年をピークに15年連続のマイナス。パソコンやスマートフォンの普及などで情報源や娯楽の価値が多様化する中で減少しています。分類別に見ると書店では雑誌の売り上げが最も多く、平均で35%を占め、店舗規模が小さいほどその割合が高くなっています(表1)。雑誌の低迷は街の書店を直撃し、2万2200店(99年)あった書店数は現在、1万4200店(12年)と15年間で8000店減っています。日書連の組合員もこの10年間で7463店(04年)から4459店(13年)に減少しました。

表1 分類別売上高構成比(2012年)

何が必要か議論重ねて
 日書連では書店再生が待ったなしの課題となり、経営を持続させるためには何が必要かの議論を積み重ね、まとまったのが「書店再生のための5項目」(※)です。中心に「責任仕入れと責任販売で書籍、雑誌ともに2%の収益を改善させる」を掲げました。従来の返品自由な委託販売に代わる販売方法です。
 出版物の流れは図1のとおりです。新刊本は出版社の販売実績に基づくライン配本と取次店が作ったパターン配本によって書店に配本されています。パターン配本とは書店の大きさ、陳列ジャンル、売り上げ、返品率、入金率によって書店を「S、A、B、C…F」と七つのランクに分けて配本するシステムです。「今の配本が制度疲労を起こしていて書店の経営を困難にしている」と指摘されます。
 出版市場では年間約8万点の新刊本が発行されていますが、平均初版部数は1点あたり5000部ほどで全国の書店に行きわたらないのが現状。「小規模な書店ほど新刊本が納入されず、本が偏在し、読者のニーズに応えられないことが売り上げ減少につながっている」というのです。
 パターン配本だけに頼るのではなく、書店が責任を持って仕入れ、責任を持って販売することを拡充して収益を改善させる-。日書連ではそのことが書店再生には欠かせないと位置付け、その一環として「食と健康フェア」を取り組みました。書店が能動的に本を販売する姿勢と増売実績を示して出版社や取次店と交渉し、書店の収益改善をめざそうとしています。
書店を取り巻く環境はここ数年、大きく変化しています。ネット書店の拡大もその一つで、ネット書店の市場は1500億円(08年)に達し、この5年間に5倍近く増えています。とりわけネット書店の7割近くを占めるといわれているアマゾンは街の書店にとっては脅威。加えて電子書籍が普及し、12年度729億円の市場規模は17年度には2400億円に拡大されると予想されています(図2)。
 日書連の舩坂良雄会長は「他国と比べても書店数が多く、全国津々浦々まで毛細血管のように書店が存在している。街の書店は子どもたちに読み聞かせをするなどの活動に力を入れ、地域の人たちと共存しながら情報や文化を発信してきた。書店の目線で優れた本を掘り起こし、文化的な生活を支えていきたい」と話します。街の書店が果たしてきた役割に確信を持って、厳しい経営環境を乗り越えようとしています。
※書店再生のための5項目…(1)責任仕入れと責任販売で書籍、雑誌ともに2%の収益改善(2)雑誌の付録とじは書店業務からなくす(3)万引きロスの負担軽減(4)取次特急便の書店負担をなくす(5)実験販売200書店計画

図1 出版物の流れ

図2 電子書籍市場規模の推移

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日本書店商業組合連合会とは
 1945年12月17日に「日本出版物小売統制組合連合会」(全連)として結成され、戦後の混乱とインフレの中で書店経営を守るという緊急な課題への対応に全力を傾けた。1988年には法人格を持った現在の日本書店商業組合連合会に組織を変更。劣悪な取引条件の改善に取り組むとともに、出版文化の普及発展に貢献している。46都道府県にある書店組合が加盟し、傘下組合員は4459店(13年4月1日現在)。

全国商工新聞(2013年11月25日付)
 
   

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