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  トップページ > 住宅リフォーム助成制度のページ > 全国商工新聞 第3119号5月19日付
 
相談は民商へ
 
 
業種 建設土木
 

住宅リフォーム助成で業者・住民・地域元気に

 業者も住民も地域も元気にする住宅リフォーム助成制度。前回調査(2012年)に比べ95自治体増え、秋田、山形、静岡、広島、佐賀の5県を含む全国628自治体(13年度)で実施されたことが全国商工新聞の調査で分かりました。秋田県では、県での実施が5年目を迎えました。

経済波及効果1626億円 補助額の24倍=秋田

生活応援と受注に直結
 「暮らしの基本である住宅のリフォームに銭っこ乗っけるのは、筋が通った話だよ」。秋田県能代市内に住むHさんは、フェンス工事がはじまったばかりの自宅の庭を見ながら力を込めました。
 昨年10月、床、トイレ、玄関周りなどをリフォームし、かかった費用は約200万円。施工した能代民主商工会(民商)会員に勧められたのが、リフォーム助成制度の活用でした。
 同市のリフォーム緊急支援事業は50万円以上の工事に対し、工事費の10%(上限20万円)を補助するもの。県実施の住宅リフォーム助成制度も併用できるため、補助金は35万円に膨らみました。
 「両方使えるというのがいい。ちょっとグレードアップしたリフォームができたかな」と、Hさんは笑顔を浮かべました。
 補助金を使って屋根や壁の塗装工事を頼んだ76歳の年金暮らしの男性もいます。能代民商会長が請け負いました。
 工事費は63万円ですが、県・市を合わせた補助金が12万円出るため、実質的な負担は50万円余り。「市民の生活を応援してくれる制度。業者は仕事が増えるし、経済効果もあるでしょう」と、この男性は“分析”しました。

県制度が市町村後押し
 能代市でリフォーム助成制度が創設されて今年で5年目を迎えました。能代市の大工組合会長は、制度を活用しこれまでに60件以上のリフォーム工事を受注。「申請の手続きなどは大変だけど、お客さんに『今年もリフォーム助成がありますよ』と声をかけることが仕事の受注増につながる」と強調します。
 会長もこの4年間で15件、能代民主商工会(民商)会員も40件程度の仕事を確保しました。「市内の業者みんなが活用できるのが住宅リフォーム。その実現をめざして運動してきた民商に誇りを感じる」と3人は、口をそろえました。
 能代市だけでなく、県内自治体のリフォーム助成を後押ししているのが、秋田県の「住宅リフォーム推進事業」です。
 県の制度創設前にリフォーム事業を実施していたのは25自治体中、わずか3市町でしたが、県の制度創設とともに一気に20自治体に広がりました。県の担当者も「県の制度創設が、市町村でリフォーム助成をつくる大きな力になったのは間違いない」と強調します。
 住宅リフォーム助成に先立ち、県は08年のリーマンショック後、リフォーム改修の融資に対する利子補給制度を創設。しかし、利用が低調で、参考にしたのが、「申し込みが殺到」などと報道された横手市の「住宅リフォーム補助制度」(50万円を限度に工事費の15%を補助)でした。

「公共土木」上回る影響
 県でも「直接補助の方が有効」「起爆剤としての有効性がある」と議論になり、「50万円以上の工事に対し10%補助(上限・現在は15万円)」を基本とした制度がスタートしました。
 県がまとめた4年間の事業効果(別表)によると、県制度の活用件数は5万1000件超。補助金総額は68億6200万円超で、工事総額は約1032億5000万円に上ります。産業連関表を使って試算した経済波及効果は約1626億円で、投資した補助金の24倍に相当します。

秋田県住宅リフォーム推進事業の事業効果

 県がまとめた利用状況(サンプル調査)では、工事内容も屋根の張り替え・塗装、台所・浴室の水回り改修、トイレの水洗化、内装工事と幅広いのが特徴。建設業の受注額では個人が29%を占めるなど、小企業・家族経営が住宅リフォームを支えていることを示しています。
 先の県の担当者は「住宅リフォームは公共土木と比べても経済波及効果は大きく、影響のすそ野が大きい。消費税増税という経済情勢の中で、経済対策として引き続き必要な政策だ」といいます。
 県にリフォーム助成創設を要望し続けてきた秋田県商工団体連合会の小玉正憲会長はいいます。「住宅リフォームは、業者も住民も地域も元気にする制度。全国に広がっているが、さらに広げていくためには、使い勝手の良い制度をつくるとともに、県レベルでの制度創設が大いに求められている」

営業チラシ作製 受注に威力=新潟

 「これほど活用されたチラシはない」―。新潟・新発田民主商工会(民商)が作製した「リフォーム活用チラシ」が好評です。
 「制度を活用して業者が元気になってほしい」との思いが込められたチラシは、業者の仕事をつくりだす営業ツールにもなっています。
 新発田市の「住宅リフォーム支援事業」は10万円以上のリフォーム工事に対し、工事費の20%(上限20万円)を補助するもの。12年から始まり今年で3年目を迎えます。対象工事も幅広く「県内でも使い勝手のいい制度」と喜ばれています。
 同制度は民商が10年前から要望。4年前の市長選挙でも候補者に公開質問状を出して実現を迫り、公約に掲げて当選した二階堂馨市長が当選2年目に創設したものです。

リフォームチラシ(一部画像加工)の反応などを集約した活用表

市の職員招き説明会を開催
 創設とともに制度の活用にも力を入れた民商は、その直後に市の担当職員を招いて「説明会」を開催。業者やリフォームを考える市民など41人が参加しました。「リフォーム活用チラシ」は、その説明会に合わせて作ったものでした。
 「住宅リフォームは今がチャンス」との大きな見出しをつけたチラシは、制度内容を簡潔に説明。右下には業者名を書き入れる空欄があり、ゴム印を押すだけで、その業者の「営業チラシ」として活用できるもので、今年で3枚目となります。
 このアイデアを考えたのが「いつも業者がどうしたら元気になるか」を考えていると話す民商事務局員。夫が建築業者で「リフォーム助成を活用して仕事を獲得してほしいと思いついた」といいます。
 チラシは商工新聞にも折り込み、会員全員に配布。さらに手分けして建設業者を訪問し、活用を呼びかけながら手渡しました。「これは使える制度だ」「もっとチラシがほしい」と対話も弾み、20〜30枚とチラシを要望する業者も。会外の建築関連業者にも「制度を使ってください」と手渡す役員も生まれ、リフォーム助成創設を共同で要望してきた畳や板金組合にチラシの活用を呼びかけました。

活用集約表で反応が分かる
 さらに制度の活用を「目に見える形」でつかもうと工夫したのが、「チラシ活用集約表」です。
 支部ごとにチラシを届けた「業者名」「枚数」「感想・反応」などを事務局員が書き込むもので、「感想欄」には「4軒の見積もり対象あり」「知り合いにもチラシを配ります」などと書き込まれ、活用状況や業者の反応が一目で分かるものとなっています。
 この2年間で5軒の工事(工事総額700万円)を受注した加藤建築の加藤正男さんもチラシを活用して仕事を確保してきた業者の一人。
 「民商のチラシがあれば、一枚で制度の説明もできるし、営業の力にもなる。いつも持ち歩いている。今年もすでに2軒の仕事を頼まれている」と笑顔いっぱいです。

◇   ◇

 新発田市「住宅リフォーム支援事業」 …10万円以上のリフォーム工事に対し工事費の20%を助成(上限20万円)するもの。13年からは3世代同居や75歳以上の高齢者がいる場合、10万円を上乗せ加算。対象工事は内装、外装、トイレなどの水回り改修、温水洗浄便座の設置などと幅広く、シロアリ対策も対象。

耐震など別枠加算 工事額256億円=佐賀

 佐賀県が実施した「住宅リフォーム緊急助成事業」(11年〜13年度)は、使い勝手もよく、3年間で1万5000件を超える利用があり、30億円の助成金に対し、工事総額は256億円に上りました(表1)。

表1 佐賀県の住宅リフォーム緊急助成事業の実績

 同事業は、50万円以上のリフォーム工事に対し工事費の15%(上限20万円)を交付する「基本助成」と、耐震・エコ工事などに対する「加算助成」(上限20万円)の二本立て。限度額は合わせて40万円。基本助成の工事対象も幅広く、加算助成は基本助成を補完するものとして位置付けられています(表2)。

表2 佐賀県住宅リフォーム緊急助成事業住宅リフォーム対象工事一覧表

 また、佐賀県は3年間で利用した1万5368件のうち、1万4887件(97%)からアンケートを回収。「リフォームのきっかけ」として、「リフォームを検討していたが、『助成事業』を知って時期を早めた」(63%)、「リフォームを考えていなかったが『助成事業』を知ってリフォームした」(13%)を合わせると76%に達し(12年調査・11年70%、13年74%)、リフォーム助成がリフォームを喚起し、仕事おこしを促進していたことを示すものとなっています
 県の担当課は「経済波及効果などの分析はこれから。しかし事業を続けてほしいという声が多く寄せられている」と話しています。

住宅リフォーム助成 実施628自治体

 628自治体へと広がった住宅リフォーム助成制度。中小業者の転廃業の加速化、消費税増税による景気の減退が予想される中で、「業者も住民も地域も元気になる」同制度の発展・充実が求められています。

住宅リフォーム助成制度の実施自治体と実施率

 第一に、全国の市町村における住宅リフォーム助成の一層の創設・継続です。
 今回の調査でも県を除く市区町村での実施率は35・8%です。これをさらに広げましょう。定住対策や分譲マンションなども対象とするなど、地域の特性を生かした取り組みが求められます。リフォームは家の築年数によって継続的な需要が生まれます。長期的な制度の継続と改善は住民の願いでもあります。
 また、京都府与謝野町が実施した産業連関表を活用した住宅リフォームの経済波及効果の分析は、リフォーム助成だけでなく、地域産業の構造把握、地域循環型の経済政策を立案するうえでも注目されます。
 第二に、リフォームの対象の拡充です。
 群馬県高崎市が創設した商店を対象にした「まちなか商店リニューアル助成事業」は、リフォームの商店版として全国の注目を集めています。北海道訓子府町も店舗改修や施設設備への補助も含めた「既存店舗リフォーム」を創設しました。沖縄県名護市でも検討が進んでいます。
 町工場に対しては、全商連は家賃補助などを求めて運動してきました。商店に加え、工場の補修、設備への補助などを含んだ「町工場リフォーム」などを実現させましょう。
 第三は、県段階での住宅リフォーム助成制度の創設です。
 今回の調査でも、県での創設は5県にすぎず、実施率は10・6%にとどまっています。
 背景には「財政難」や「税金を個人の資産形成には使えない」という考え方がありました。
 しかし、国も「住宅リフォーム推進事業」を創設し、13年度の補正予算に20億円を計上しており、「個人の資産形成」を理由にして拒む根拠はなくなっています。「財政難」にしても、住宅リフォームが、投資する助成金をはるかに上回る経済波及効果や、「業者も住民も地域も元気にする」制度であることを、佐賀、秋田などの事例で押し出し、創設を迫ることが重要です。

住宅リフォーム助成制度実施自治体一覧
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全国商工新聞(2014年5月19日付)
 
   

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