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  トップページ > 地域のページ > まちづくり > 全国商工新聞 第3038号 9月10日付
 
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再生エネへ挑戦を 循環型経済で地域再生へ 第10回夏期研究集会

 全商連付属・中小商工業研究所は8月25、26の両日、広島県福山市で10回目となる夏期研究集会を開きました。研究者、自治体職員、民主商工会(民商)会員ら200人が参加し、「共同、連帯の力で循環型経済の地域再生を」テーマに原発に代わる再生可能エネルギーへの挑戦をはじめ、地域循環経済の担い手としての中小業者の役割や新しい仕事おこしの政策方向などについて活発な議論を交わしました。

循環型経済で地域再生
中小商工業研究所 中小業者の実践呼びかけ

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200人が参加して交流した夏期研究集会

 同研究所の太田義郎運営委員長(全商連副会長)は、大手企業がすでに再生可能エネルギーに参入する一方、中小業者が「待ちの姿勢」になっていることについて「これでいいのか」と提起。「この研究集会で大いに学び、地域循環経済の実践の一歩を踏み出そう」と呼びかけました。
 大友詔雄・NERC(自然エネルギー研究センター)センター長が「雇用、仕事、エネルギーの地域内循環を目指して」をテーマに記念講演。大友氏はオーストリアのギュッシング市が、自然エネルギーを活用し、50社を超える企業参入と年間1100人の雇用増を実現した取り組みや、再生可能エネルギーの100%自給地域が500を超したドイツの実践、木質チップ、ペレットを活用し、燃料を節減をした上、雇用・経済を活性化させた事例にも触れ、住民が参加する「地域循環経済」の可能性と仕組みづくりを強調しました。
 特別報告として、「NPO法人鞆まちづくり工房」の戸田和吉さんが、「潮待ちの港」といわれる世界遺産級の鞆の浦の豊かな自然と文化、商工業にについて紹介。京都府与謝野町の岸部敬・産業振興会議議長は、農業を地域の産業として位置づけた"与謝野町流"の中小企業振興基本条例の制定経過、条例の特徴について熱く語りました。愛知、兵庫、大阪の参加者も再生可能エネルギーやものづくりへの提言についての実践を報告しました。
 26日は、六つの分科会を開催。「循環型地域経済への展望」や「原発依存からの脱却と再生可能エネルギー」などをテーマに活発に討論。再生可能エネルギーへの実践やリフォーム助成制度の改善、省エネ住宅への挑戦などの取り組みが紹介されました。
 討論を受け、まとめをした名城大学の井内尚樹教授は、鞆の浦の優れた自然に触れながら「川上、川中、川下という流れ全体を見て循環を考える必要がある」と強調した上で、循環型の地域経済の発展のために「未利用・未活用の地域資源を発見し、住民が主体となった運動を実践し、次の研究集会では豊かな経験を持ち寄ろう」と結びました。

6分科会で議論深める
第1分科会 豊かな地域の創造、自治体の役割確認
 駒澤大学の吉田敬一教授が「EUの金融危機、グローバル化や天変地異など地球レベルの予測不能な高リスクに対応するには、多国籍大企業の利害を基本にした成長戦略ではなく、エネルギーを含めて地域資源を活用する地域内経済循環力を高めた個性豊かな地域経済づくりが必要」と問題提起。これを受け参加者が報告しました。
 愛知・知多中央民商の成田完二さんは、ドイツなどの事例も紹介し、日本でも断熱性を高めた省エネルギー住宅の必要性について報告。宮城県連の永澤利夫事務局長は、「二重ローン解消や私的整理による債務整理が進まないことが、地域循環を担う生業再建の遅れになり被災地復興が進まない原因になっている」と指摘しました。
 新潟県連の青木敦志事務局長は原発立地自治体の柏崎市政の現状を分析し、「原発をなくすことによって真の経済発展の可能性が開ける」と強調。北海道・帯広民商の志子田英明会長は、「条例制定から4年を経てようやく十勝の小麦を活用した生産・加工・製品化の地域循環のプロジェクトも動きだした」と成果を報告しました。
 吉田教授は「循環型経済をつくる上で、コアとなる自治体の役割は大きい」とし、「先進の経験に学び、来年の全国商工交流集会に向け、取り組みを広げ成果を持ち寄ろう」と呼びかけました。

第2分科会 域内資金循環の仕組みづくり模索
 第2分科会では静岡大学の鳥畑与一教授が、「財界肝いりの『日本再生戦略』に対置し、小企業・家族経営の繁栄を基礎にした地域経済発展のために、地域で資金を循環させる活性化の仕組みが必要」と問題提起。
 参加者は、金融円滑化法の打ち切りを前に貸しはがしの動きが出ていることに対し「金融機関や保証協会との懇談を進めている」ことや「料飲オリエンテーリングなどの取り組みの中で金融機関の理解を広げている」など紹介しました。
 全商連が制定を要望している日本版地域再投資法についても、「金融機関の地域貢献と同時に、小企業への資金供給の円滑化を目的とし、行政と住民によるコントロールが必要」「家族経営は地域密着であることに信用がある。地域で汗を流すことを商店街のみんなでやり通せばマネー資本主義を打破できる」など活発な議論が展開されました。
 嘉悦大学の三井逸友教授は討論を受け、「民主党政権は入口で小企業育成を掲げながらも、出口で切り捨てる施策を進めている。矛盾が拡大するだけに制度や規制に対して具体的に声を上げていく時」と締めくくりました。

第3分科会 再分配機能回復と増税阻止の運動強化
 第3分科会では、座長の太田義郎全商連副会長が「持続可能な社会のために税と社会保障の『再分配機能』を取り戻すべき」と座長報告。
 清家裕・税経新人会全国協議会理事長が、「政府が今後、社会保障4経費(医療、年金、介護、少子化対策)の財源を消費税に限定するならば、際限のない税率引き上げとならざるを得ない」と消費税増税と社会保障制度改革推進法の問題点を指摘しました。
 討論では、兵庫県連の藤原紀嘉事務局長が、神戸市の「旧ただし書き」方式への移行に反対する運動や国民健康保険(国保)改善運動を民商運動の原点である「集まって話し合い、相談し、助け合う」ことで前進させてきたと報告。
 大阪・都島民商の西岡定男副会長は、橋下・大阪市長が府知事時代に「国保は府の仕事ではない」と暴言を吐き、大幅な保険料(税)の引き上げにつながる国保広域化の先頭に立ってきたことを厳しく批判しました。
 佛教大学の金澤誠一教授が、生活保護基準の切り下げの動きなど政府が保障する最低限度の生活水準(ナショナルミニマム)の危機的状況を警告。国民が一致して貧困を生み出す政治とたたかう運動の重要性について強調しました。

第4分科会 地域商業と地域産業の再生の道探る
 300年以上の伝統を誇る薬酒「保命酒」(ほうめいしゅ)の製造・販売を守り続ける老舗など、地元の協力を得て、国重要文化財の「太田家住宅」で行われた第4分科会。小企業を第一に考える自治体施策づくりを研究しました。
 和歌山大学の足立基浩教授が、イギリスや国内各地の事例として学生と協力して自ら取り組むオープンカフェの経験を紹介。「独自の魅力を高めて、楽しい空間をつくり、関心を持ってくれる人を増やすこと」と、元気な商店街づくりの教訓を報告しました。大型商業施設の郊外出店を抑制できる都市計画の策定や、商業施設と公共交通の一体整備を進める重要さも指摘しました。
 高千穂大学の川名和美教授は「危機感がない、経験がない、実情把握が不十分」と、地域産業振興施策停滞の原因を指摘。こうした状況を変えるのは、多様な人々が参加する学習の場を広げること、住民が生活しやすく長く住み続けられるまちづくりが大切と訴えました。
 参加者からは、住宅リフォーム助成制度を改善した経験や地場産業振興に向けた地域実態調査の計画が紹介されました。また、公共事業に偏重している自治体産業施策や地権者と行政による再開発計画の独断専行をどう変えていくべきかなど、地域振興・まちづくりをめぐって議論されました。

第5分科会 地域分散型のエネルギー計画を

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脱原発と再生可能エネルギーの可能性を語り合った第5分科会

 第5分科会では京都大学大学院の植田和弘教授が「今、問われているのは電力エネルギーのシステムそのもの」と指摘。再生可能エネルギーが脱原発を進める代替エネルギーとしてだけではなく「それは地域資源であり、地域分散型ネットワーク社会への移行を示唆する電源」であり、「地域経済循環の活性化、国土全体のバランスのとれた発展への可能性を作り出すことができる」と強調しました。
 問題提起を受け、埼玉県連の菊池大輔会長は、比較的落差の少ない河川などで使える小水力発電を大学と協同し開発を進め、特許も取得して試作に取り組んでいること、東京・蒲田民商の佐々木忠義さん=機械加工=は、大友詔雄NERCセンター長の協力も得て、熱交換装置「スターリングエンジン」や風力発電の開発に挑戦していることを報告。また地元広島市内のミサワ環境技術株式会社の田中雅人執行委員が、地中熱を利用したクリーンエネルギーシステムとその活用事例について報告しました。
 会場からもバイオマスや潮流を利用した再生可能エネルギーに挑戦する発言や質問も相次ぐなど活発に討論。植田氏は「自治体版エネルギー基本計画」に取り組む重要性を強調し、技術、工場、資金調達が再生可能エネルギーに取り組む上で鍵になるとまとめました。

移動分科会 歴史あふれる町並み 鞆の浦探訪

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「常夜灯」や船から揚げられた荷物を貯蔵した「浜蔵」など鞆の浦の歴史を学んだ移動分科会

 日本を代表する景勝地、鞆の浦(福山市内)。移動分科会は、瀬戸内海の中央に位置し、潮の流れの変わる「潮待ちの港」として発展してきた歴史ロマンあふれる街並みを現地ガイド・釜谷勲さんの案内で探訪しました。
 江戸時代の灯台「常夜燈」を出発し、江戸初期に始まった薬酒・保命酒の酒蔵で国の重要文化財の指定を受けている「太田家住宅」を視察。坂本龍馬と海援隊が乗っていた蒸気帆船「いろは丸」が、紀州藩の船と衝突・沈没し、その賠償交渉が行われた様子を「いろは丸展示館」で学びました。
 城下町特有の四つ角の少ない道、船で使用した木材を再利用した壁の蔵も、鞆の浦の町並みの特徴。「塩水に漬かった船の木材は虫がいないから長持ちする」との説明に、参加者は江戸時代の人々の知恵と工夫に感心しきりでした。
 1983年に湾を埋め立て架橋する動きが表面化。市民の反対運動は、映画監督の大林宣彦氏や宮崎駿氏など著名人からも支持を得て広がり、県は計画を断念。歴史的な景観を守るのは今日的な課題でもあります。釜谷さんも「歴史や景観の宝を持つ地域を、住民がどう育てるか話し合っていくことが大事」と語りました。
 鞆の浦を初めて訪れた大阪・富田林民商会長の藤井寛さんは「地元の富田林市も歴史のある町。鞆の浦を見て歴史の生かし方を勉強できた」と話しました。

全国商工新聞(2012年9月10日付)
 
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