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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3255号3月13日付
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【Q&A解説】国犯法を編入し強権的調査を強化 国税通則法の改悪法案

納税者の権利保護こそ世界の流れ
 納税者の自主申告権や任意調査の手続きなどを定めた国税通則法(通則法)と、脱税などの犯罪を取り締まる国税犯則取締法(国犯法)を一本化する通則法の改悪法案が2月27日、衆院を通過。参議院で審議が始まっています。法律の一本化で税務調査に与える影響は、今後どんなたたかいが必要なのか-。Q&Aで解説します。

Q:通則法は何を定めているの?
A:自主申告権など国税の共通的事柄
 確定申告の時期を迎え、民主商工会(民商)の会員は自主記帳・自主計算に基づいて申告書を作成し、自らが申告書を税務署に提出しています。「納付すべき税額は納税者の申告により確定する」と納税者の自主申告権を規定しているのが通則法です。事前通知など税務調査の手続きや税金を納められない時に活用できる納税緩和制度、納得できない課税処分に対する不服申立制度など国税についての基本的・共通的な事柄が定められています。
 また、税務署員の質問検査権について「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」など課税権の限界を示しています。

Q:国犯法はどんな法律か?
A:脱税など犯罪を取り締まる
 通称‘マルサ’と呼ばれる国税局査察部が大型脱税者を摘発する時の根拠法にしているのが国犯法です。1900(明治33)年に制定・施行されました。
 国犯法は(1)国税の犯則(査察)事件の調査(2)犯則事件の処分(3)通告処分、その他国税局長または税務署長の処分(4)国税の徴収・納付を阻害する犯罪及び本法に基づく検査を妨害する罪の処罰(5)扇動犯に関する22の条文で成り立ち、地方税にも準用されています。
 犯則事件には納税額を故意に免れようとする脱税犯(ほ脱犯)と、脱税にまでは至っていないが、放置すると脱税する危険があると考えられる秩序犯(租税危害犯)があり、2010年度「税制改正」で罰則が強化されています。

Q:どんな改悪がされるの?
A:調査権限を強化し通則法に編入
 政府は国犯法が1948(昭和23)年の改正以来、大幅な改正がされず、経済のICT(情報通信技術)化などに対応できていないことを「改正」理由に挙げ、刑事訴訟法と関税法の二つの法律にある調査手続きを定めるとしています。
 パソコンだけでなく外部のサーバに保存されている電磁的記録や、レンタルサーバ業者が管理している電磁的記録の差し押さえも可能に。郵便物差し押さえや日没後の強制調査も可能にしようとしています。
 さらに臨検・捜査・差し押さえをする時の立会人に都道府県職員を追加しています。悪質な脱税やタックスヘイブン(租税回避地)を利用した税逃れを防ぐことは必要です。しかし、そうであれば、犯則事件の調査手続きを通則法に入れなくても国犯法を「改正」すれば済む話です。

Q:通則法と国犯法が一本化すると?
A:任意調査と強制調査の境が曖昧に
 通則法は任意調査の手続きを定めた法律です。一方、国犯法は脱税などの犯罪を取り締まるための強制捜査の手続きを定めた法律です。目的や権限が異なる二つの法律を一本化すれば、任意調査と強制捜査の境目が曖昧になる恐れがあります。
 財務省は「犯則調査で定めている強制的な権限が課税調査でも流用されたり、課税調査と犯則調査がなし崩し的に一連のものとして運用されたりすることは一切ない」と説明しています。
 衆院財務金融委員会(2月22日)で宮本岳志議員(共産)が国犯法と通則法を一本化する問題を取り上げ、星野次彦国税庁次長は「課税調査を犯則調査の証拠集めの手段として位置づけるものでない。質問検査権(通則法74条8)は犯罪捜査のために認めれたものと解してはならないと規定されている」「査察調査と課税調査の位置づけ、権限が変わるものではない」と答弁しました。
 しかし、今でも強制調査の手法が任意調査に用いられ、納税者の権利・人権を無視した強権的な調査が全国で横行しています。
 国税庁が「強制調査の権限が任意調査に及ぶことはない」と強調しても、それを保障する条文はどこにも示されていません。
 しかも、今回の「改正」で国犯法で定められていた懲罰的な罰則「国税の徴収若しくは納付しないことを扇動した者は、3年以下の懲役または20万円以下の罰金に処する」を通則法の罰則として明記しています(通則法「改正」案126条)。「払いきれない税金を無理して払う必要はない」などと‘扇動’した第三者が罰せられる恐れがあります。

Q:改悪を許さないためには?
A:納税者の権利を守る運動強めよう
 納税者の権利を守るたたかいを強めることが必要です。
 納税者の権利を保護するのが世界の流れです。OECD(経済協力開発機構)加盟国34カ国・非加盟国15カ国の計49カ国のうち、米国やイギリス、フランス、ロシアなど36カ国が、法律または行政文書の形式によって納税者の権利を保護する「納税者権利憲章」を作成・公表しています。
 日本の税務行政は、納税者の人権を侵害して強権的な徴収を行ってきました。納税者の権利を全面的に保障するためには、税務行政に適正手続きを根付かせ、応能負担原則や生活費非課税など民主的な税制を確立させることが不可欠です。全商連の提言する「納税者の権利宣言」(第4次案)、「納税者の権利憲章」(第2次案)をさらに発展させ、国民的な運動を巻き起こすことが求められています。

全国商工新聞(2017年3月13日付)
 

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