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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3161号3月23日付
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岡山・倉敷民商事件 最終弁論で無罪主張

 岡山・倉敷民主商工会(民商)の小原淳事務局長と須増和悦事務局次長が無資格で「税務書類を作成」したとして、税理士法違反で不当に起訴された倉敷民商事件の論告求刑公判(第10回)が3月5日、岡山地裁(松田道別裁判長)で行われました。検察側は小原さんに懲役1年6月、須増さんに懲役1年を求刑。弁護側は最終弁論で、「政治的意図に基づく差別的な立件」であり、「可罰的違法性はない」とし、公訴棄却を求め、無罪を主張しました。

「可罰的違法性はない」弁護団“差別的立件”棄却訴え
 この事件は13年5月、広島国税局が倉敷民商会員だったI建設の法人税法違反に関わって民商事務所などを捜索。その際差し押さえた証拠品をもとに翌14年1月、同容疑とは関係のない税理士法違反で小原、須増さんや、事務局員の 屋町子さん宅を捜索・差し押さえ、その後、2人を税理士法違反で、 屋さんを税理士法と法人税法違反で逮捕・起訴したものです。
 小原、須増さんの勾留は6カ月余に及び、 屋さんにいたっては今も保釈されず、勾留は1年以上に及ぶ異常な事態となっています。
 最終弁論で弁護側は、「別件捜索・差し押さえ」ではなく「公訴権乱用にはあたらない」との検察側主張に対し、脱税の実行行為者であるI建設社長などは身柄拘束もされず、パソコンなども取り上げることもなかったと指摘。
 さらに青色申告会など「納税協力団体」では、税理士資格を持たない職員が申告書を作成していたにもかかわらず、これまで刑事責任が問われていないことに言及。「本件訴追は民商の組織と活動に対する徴税権力の政治的意図に基づく弾圧」であり、「差別的な立件」として、公訴棄却を求めました。
 また、検察側は2人は「自分で判断する意思も能力も持たない会員」たちの求めに応じ、「自己の判断に基づいて申告書を作成した」と決めつけた上、その行為は資格者だけに限定した「税務書類の作成」にあたり、税理士法に違反すると主張。自主申告権については「憲法上の根拠がまったく不明であり、極めて独自の解釈に過ぎない」と、暴論を展開しました。
 これに対し弁護側は、租税法律主義を規定した憲法84条、申告納税制度を定めた国税通則法に触れ、「申告納税制度は憲法上の国民主権原理の租税法的展開であり、参政権が国民主権原理に立つのと同様、申告納税権は主権者である納税者の基本的人権である」と真っ向から反論しました。
 さらに、税理士法の成立過程や問題点にも触れながら、税理士業務の独占について憲法の基本原理に照らした根源的な見直しを提起しました。
 「税務書類の作成」が税理士法に違反する、との検察側主張に対しては、「『税務書類の作成』は、申告納税制度の下で事業所得がある限り国民誰もが行う行為であって、専門家の職務に委ねる合理的理由はない」と強調。
 資格者だけに業務を独占させている「保護法益」とは、税理士による報酬独占の「権益保護」ではなく、「適正な納税義務の実現」だ、と指摘。2人が行った行為は「税務行政の円滑に資する行為」であり、しかもそれは「会員が提供するデータをパソコンに打ち込む手助けに過ぎ」ず、「税務書類の作成にもあたらず、税理士法違反の余地はない」と主張しました。
 さらに「税務書類の作成」に限って刑事罰を、刑事手続きの適正の観点、青色申告会などは刑事責任が問われたことがないことをあげ、「いかなる検討をしても2人に税理士法違反の罪が適用されるべきでない」とし、無罪を主張しました。

公正な判決求める 小原さん、須増さん意見陳述

 最終弁論で逮捕・起訴された岡山・倉敷民商の小原淳事務局長と須増和悦事務局次長が行った意見陳述を紹介します。

困っている人を助けるのが原点 小原淳さん
 私は子どものころから、強い人と弱い人がいたら、弱い人の見方になりなさいと言われて育ってきました。それが私の人生の原点です。
 景気が悪いからと単価を切り下げる元請けに苦しめられる鉄工所、税務署の強引な調査で取引を切られた溶接工事業者、住民税の強制的な差し押さえで生活費まで奪われた土木工事業者、銀行が突然、借入金を一括で返せと言い出し、相談に来た製造業者…。中小業者の経営と暮らしは運動して守らなければどんどん壊されていくのです。
 目の前で困って泣いている人がいるのに助けない。それでいいのでしょうか。目の前で困って立ちすくんでいる人を助けた。それが罪に問われるのでしょうか。
 私が民商に入ってから、一度も税務署や警察から、私の行為が税理士法に違反するなどと警告を受けたことはありませんでした。昨年2月13日の逮捕は突然のことでした。このような逮捕・勾留はいったい民主主義の国である日本で行われていいものなのでしょうか。
 184日もの間、家族とも民商の仲間とも隔絶されました。中小業者の仲間と頑張ってきた私の人生が犯罪なのかと、本当につらい日々でした。
 家族の支え、多くの傍聴者、日本中から寄せられる支援の声に私は救われました。近所の人たちや子どもの学校関係者も「あなたたちの仕事が違法であるわけがない。頑張って」と温かい言葉をくださいました。
 あらためて申し上げます。私は無罪です。裁判官には公正な判断をお願いします。

税制の民主化と納税者権利守る 須増和悦さん
 私は無罪を主張します。
 私は会員の自主記帳と自主申告を支える活動をしただけです。
 私は倉敷民商の事務局員として、プライドを持って仕事をしてきました。厳しい経営環境の中で、一生懸命に頑張る会員の皆さんの姿から多くのことを学びました。倉敷民商の会員の皆さんが、私を事務局員として育ててくれました。
 この国は、これから格差がどんどん広がっていきます。私はその中で奮闘する会員の力になっていきたい。中小零細業者が輝ける世の中にしたい。税制の真の民主化、納税者の権利を守るた活動に微力ながら力を尽くしたいと思っています。
 どうか公正な判断をお願いします。

弁護団が行った最終弁論(要旨)

全国商工新聞(2015年3月23日付)
 

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