どうなる複数税率・インボイスの実務(3)

全国商工新聞 第3379号2019年9月30日付

店内飲食と持ち帰り

 店内飲食(イートイン)、持ち帰り(テークアウト)の両方を行っている事業者が多いというのが日本の特徴です。欧米では世界的なチェーン店以外は、どちらか一方しかやらないというのが普通です。10月からこの二つを混在したまま複数税率を導入するというのは、世界でほとんど例がありませんから、大混乱が生じているのです。
 価格設定について見てみましょう。ヨーロッパのマクドナルドやスターバックスでは、イートインとテークアウトで料金を分けていないようです。これは実質的な値上げを意味します。とはいえ、材料以外の経費にかかる消費税のほとんどが10%になりますし、区分経理の手間も増えることから、小規模な事業者ほど10%に合わせた料金設定をしなければ経営がさらに厳しくなります。
 一方で、これはお客さんに対する値上げになりますから、簡単に実行するというわけにはいきません。価格決定権のある大企業は、仕入れ価格の上昇などを理由に消費税率に関係なく値上げを行います。その結果、価格決定権の強い事業者はいいですが、厳しい競争にさらされている中小・零細な事業者は、経済や価格の作用によって転嫁できず、最終的に消費税の納税で苦しめられるという怪奇な事態となってしまいます。

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 店内飲食と持ち帰りがある場合、価格設定は頭の痛いところです。値段の設定については大手チェーン店でも方針が分かれています。値上げをするなら増税される2019年10月以外には考えられませんが、簡単に値上げができない事業者は少なくありません。机上の計算しかしていない政府は、生業破壊となるこの事態に対して、何ら対策を講じていません。

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