どうなる複数税率・インボイスの実務(5)

全国商工新聞 第3381号2019年10月14日付

税額計算の特例(1) 売上税額の計算の特例

 複数税率に対応する準備が整っていない事業者は、基準期間の課税売上高が5000万円以下で売り上げを税率ごとに区分することが困難な場合、4年間、税額計算の特例があります。今回は売上税額の計算の特例を説明します。
 (1)仕入れを税率ごとに管理できる卸売業・小売業者(簡易課税適用者は除く。「小売等軽減仕入割合」と呼ばれる)。計算方法(表1)、具体例(表2)のとおり。

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 これを式に当てはめると、64万8000÷86万8000(64万8000+22万)=(A)小売等軽減仕入割合となりますから、150万円×(A)=111万9815×100÷108=103万6865→103万6000円が8%分の課税売上高(課税標準額)となり、150万-111万9815=38万185×100÷110=34万5622→34万5000円が10%分の課税売上高(課税標準額)。
 (2) (1)の特例を適用する事業者以外(売り上げの中に8%対象品目がある事業者は全て適用)。要件は(1)日々の売上高を8%と10%に分けることが困難(その度合いは問わない)(2)通常の連続する10日間の売上高(いつの期間でも可)。ただし年度ごとは、その間だけは8%と10%に区分計算をすること(表3)。簡易課税制度を選択をしている場合は簡易課税制度により仕入れ税額控除をします。

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 (3) (1)および(2)が困難な場合は、8%と10%の売り上げは総売上高の各100分の50となりますので、軽減税率分の課税売り上げは、700万円×50%=350万円となります(ただし8%の売り上げが中心<50%以上>の卸売、小売業者に限られる)。
 業種等によって異なりますが、いずれかの割合で課税売り上げを算出することができます(計算方法によって納付額が異なる)。

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