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  トップページ > 税金のページ > 許すな!国税通則法改悪 > 全国商工新聞 第3001号 11月28日付

税金 許すな!国税通則法改悪
 

国税通則法改悪で3党合意 廃案こそ中小業者の願い

 民主党、自民党、公明党3党は10日、税制調査会長会談で今臨時国会で法人税減税と国税通則法改悪案を成立させることで合意しました。全国商工団体連合会(全商連)は11日、談話を発表。廃案に追い込むため、引き続き納税者、国民と固く連帯してたたかうことを表明しています。3党合意の国税通則法改悪案について関本秀治税理士が解説します。

強健調査が横行――税理士 関本秀治さんが解説

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 民主、自民、公明3党の税制調査会長は11月10日、11年度の税制改正について、「法人課税と納税環境整備以外の項目は今改正から削除」することを決めました。これは民自公3党の密室協議によるもので、与党議員にさえ知らされないで行われました。
 6月末までに決められていなかった税制関連法案のうち、法人税減税と国税通則法(通則法)改悪だけを今国会で成立させようとするもので、予想された最悪の結果をもたらすものです。
 民主党は、納税者権利憲章の制定を選挙公約の目玉の一つに掲げて09年の総選挙で勝利し、政権の座に就きました。
 政府はこの公約を実行しないだけでなく、(1)更正の請求(過大な申告を減額させる請求)期間を1年から5年に延ばす(2)全ての更正処分に理由を附記する―ことと引き換えに、税務調査権を大幅に強化する法案を十分な審議をすることなく強行成立させようとしています。
 質問検査権については現在、納税者に対して「質問し」、帳簿書類などを「検査することができる」と規定されているだけですが、改定案は、新たに帳簿書類などを「提示」「提出」させ(通則法74条の2〜6)、その帳簿などを役所に「留置くことができる」(74条の7)と、これまでのどの税法にもなかった強力な権限を新設しようとしています。提出に応じないときは1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
 事前通知の規定も設けられますが、見逃せないのは「事前通知を要しない場合」(74条の10)が法定されることです。これまでも予告なしの捜査まがいの違法調査でトラブルが絶えませんでしたが、この規定ができると、それを武器に「恐怖の税務調査」が横行しかねません。
 62年(昭和37)の通則法制定時には、一般的な記帳義務や質問検査権の強化などは、納税者や学界、労働組合まで巻き込んだ反対運動によって盛り込むことができませんでした。その「積み残し」部分を一気に強行しようとしているのが今回の通則法改定案です。これは半世紀にわたる財務官僚の“悲願”でした。
 財務官僚が、従来の経緯を知らない民主党の無原則的な妥協体質を利用して強行突破を図ろうとしている構図が透けて見えます。
 民主党は、更正請求期間の延長や理由附記などで「実をとった」と言い訳していますが、実をとったのは財務官僚です。
 納税者に有利な減額更正は、現行法でも職権でできますし、国民が課税処分など不利益処分を受けるとき理由を知るのは当然の権利です。異議申し立てをすれば、異議決定の段階で理由附記は義務付けられています(84条4項)。課税庁にとっては痛くもかゆくもない規定です。
 罰則付き提出要求で役所に引き上げた帳簿などについての返還の規定もありません。重箱の隅をつつくような執拗な調査で納税者は際限なく痛めつけられそうです。
 それでは、いまなぜ質問検査権の強化を狙っているのでしょう。それは、まぎれもなく消費税10%というような大増税に対する納税者国民の反対運動を、税務調査の権力化という手段によって抑え込もうとしているからにほかなりません。
 質問検査権の規定が通則法に一本化されることによって、民主商工会や民主団体、多くの労働組合に対しても通則法に基づく強権的な調査を、あらゆる税法を使って強行する危険があります。
 63年に始まった民主商工会への大弾圧も納税者の権利を主張する業者に対する税務調査を口実に行われたものであったことを、私たちは決して忘れることはできません。

「義務・罰則は不必要」佐々木憲昭議員(共産)が質問――国税通則法衆院審議(11月18日)

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国税通則法改定の問題点をただす日本共産党の佐々木憲昭衆議院議員(11月18日、衆院財務金融委)

 日本共産党の佐々木憲昭衆院議員は18日、財務金融委員会で課税庁の権限強化のみとなる国税通則法改正案について質問。民主党が政権公約で掲げた「納税者権利憲章の制定」の投げ捨てを自民・公明と合意したことについて政府の姿勢をただしました。
 佐々木議員は「『税務運営方針』は税務調査に対する税務職員の基本指針で間違いないか」と確認。安住淳財務相は「これをしっかり守って、やっていく」と答弁しました。
 さらに、佐々木議員は税務調査があくまで納税者の合意を得て行う任意調査であることを確認。事前通知が文書でなく口頭とされたことから「店の前で携帯電話で『今から行くぞ』と通告しても事前通知なのか」と追及。国税庁の岡本榮一次長は「事前通知の実施については相当の時間の余裕を置いて行う」と答えました。
 また、帳簿書類の罰則規定付きの提示・提出義務化について「拒否ができるのか。同意に基づく調査で罰則があるのはおかしい」と追及すると五十嵐文彦財務副大臣は「強制的行使はできない。あくまでも納税者の承諾の下で行う」。岡本次長は「運用上、正当な理由なく拒否した場合に罰則の適用があり得るが、罰則をもって強権的に提示・提出を要求することはない。あくまで納税者の協力を得られるよう努めるという従来の運用は変更しない」と答えました。
 提出した帳簿を税務署に留め置く規定について岡本次長は「納税者から返還の求めがあった場合、できる限り早急に返すよう努めていく」と答弁しました。
 こうした政府答弁からも理念なき「改正」の実態が浮き彫りになりました。また、民主党が自民党の圧力に屈して「納税者の権利憲章制定」など、これまで示してきた考え方を投げ捨てたことは、政権与党としての資質が問われる問題です。

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全国商工新聞(2011年11月28日付)
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