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  トップページ > 税金のページ > 許すな!国税通則法改悪 > 全国商工新聞 第2962号 2月21日付

税金 許すな!国税通則法改悪
 

「共通番号制度」の問題点 立正大学法学部教授・浦野広明

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プライバシー侵害し国民生活を管理
 菅政権は1月28日、あらゆる事項を一つの番号で把握する「共通番号制度」の基本方針を決めた。14年6月をめどに個人、法人、任意団体などに番号を付け、15年1月からの利用開始を図るとしている。年金手帳や医療保険証などの機能をICカード1枚にまとめて配布するのである。今秋の臨時国会に「番号法案(仮称)」提出をめざしている。
 番号付けは、個人には住民基本台帳ネットワークをもとに総務省が、法人・任意団体(人格のない社団等)には国税庁が行う。
 11年度「税制改正大綱」は番号制度について、(1)取引を行うときには取引の相手先に番号を告知する、(2)取引の相手方が税務当局に提出する法定調書に番号を記載すると述べている。国家があらゆる取引を管理しようというのである。

 すでに政府税調は、07年11月の答申で納税者番号制度について「現在、税務当局が行っている各種資料の『住所・氏名』による名寄せ・突合に代え、資料に記載される『納税者番号』を用いることによって作業の効率化を図り、適正・公平な課税を実現しようとするものである」と述べている。
 政府税調委員は09年10月、事務局が提示した次の文書を検討した。提示文書は、番号制度を税務面で利用する場合について次のように述べている。「税務面における『番号制度』とは、納税者に広く番号を付与し、(1)各種の取引に際して、納税者が取引の相手方に番号を『告知』すること、(2)納税申告書および取引の相手方が税務当局に提出すべき資料情報(法定調書)に番号を記載することを義務づける仕組みである。これにより、税務当局が納税者から提出される申告書の情報と取引先の相手方から提出される資料情報をその番号をキーとして集中的に整理(名寄せ)・マッチング(突合)できるようになり、納税者の所得情報をより的確に把握することが可能となる」-さらに提示文書は、資料情報の範囲(法定資料)を拡大することにより、現行の資料情報(全53種)年間約1億4000万枚がいっそう増大し、所得把握が可能になるとしている。
 利子所得や配当所得の支払いなどをした場合、その支払者等は、所得税法や相続税法の規定によって各種の支払調書、源泉徴収票等を税務署に提出する義務を負う。この提出義務を負うものが「法定資料」である。提出義務者が法定資料を提出期限までに出さなかったり、偽りの記載をして税務署に出した場合は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処される(所得税法第242条)。
 10年度「税制改正大綱」は「番号制度は主として給付のための制度」であるとし、給付を理由に番号制度を正当化しようとしている。給付の考えを政財官界の考えに即して分析すると次の三つの問題が出てくる。(1)何のために(目的)、(2)どのような内容か、(3)どのような仕方か、である。
 順にいえば、(1)給付の目的は国民の利益を目的にするものでなく、権力の国民支配の一手段であり、体制維持のためである、(2)保護の内容は国民各層にわずかな給付を与えながら、大企業・資産家にわずかな税負担しかさせないことにより多くの給付を与える、(3)給付するという名目でわずかな金を与え、受給者を規制する。国税通則法の改悪も納税者を規制する点では同根である。

 情報は、必要に応じて民間にも知らされる。給付を受けたいと申告した場合には、税務署(歳入庁)は所得・資産を徹底的に調査する。銀行借入をする場合にも、銀行は所得・資産を調査する。税務署と大企業が一体となって、全面的に国民の私生活に関する情報管理に乗り出す。プライバシーを侵害する共通番号制度は憲法13条違反であり、認められない。

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