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  トップページ > 税金のページ > 許すな!国税通則法改悪 > 全国商工新聞 第2961号 2月7日付

税金 許すな!国税通則法改悪
 

国税通則法「改正」 納税者の権利侵す大改悪
 =TCフォーラム代表・弁護士 鶴見祐策


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 18世紀までの絶対君主政の下では人民に勝手に税金をかけ、従わない者には重い刑罰が科されました。これに対する人民の怒りが勃発し市民革命が成就して、人民の意思を代表する議会が承認した法律がなければ課税できないという近代憲法の大原則が確立されました。日本国憲法では30条と84条に租税法律主義が明記されています。
 
 ところが、官僚主導の税法では、課税と徴税の便宜が優先され、納税者に配慮した条項はほとんど見当たりません。1962年に制定の国税通則法も課税権の強化が目的でした。それが日本特有の強権的な調査を横行させ、増額修正を強要する「慫慂」をまん延させました。
 これに対して納税者の権利を守り、前進させる運動が全商連・民商を中心に展開され、裁判闘争も旺盛に取り組まれました。そのたたかいと世論の前に国税庁は「税務運営方針」(1976年)を作って職員に配布しました。税務調査は「公益的必要性と納税者の私的利益との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で納税者の理解と協力を得て行うもの」と記述されています。しかし実務ではまったく無視されてきました。
 
 諸外国では納税者の権利保障が当たり前になっています。OECD加盟国で残るのは日本だけです。かつて民主党、共産党、社民党が通則法の一部改正を共同提案しましたが、自民党など与党が多数を占める国会で廃案となった経過があります。納税者の権利を政策に掲げた民主党政権が実現したことから、今度こそと立法化に期待した向きは多かったでしょう。しかし今回の法案では完全に裏切られました。官僚たちの巻き返しの結果でしょう。
 まず「納税者権利憲章の作成」をうたいながら、その内容、形式ともに「憲章」の実質をまったく備えていないのが問題です。その中身は「申告」「更正」「納付」「督促」など手続きの羅列にすぎません。納税者の権利擁護の基本理念が皆無なのです。諸外国で掲げられている「納税者の誠実性推定の原則」が確認されていません。
 この納税者を信頼する原則こそ、税務行政の公正と透明性の出発点です。税務調査の理由開示、事前通知の履行、理由付記の実施、課税側の立証責任も、すべてこの原則に基づくのであり、これに反する処分が違法とされる根拠となります。裁判規範としても機能できるのです。「憲章」は国税庁長官が公表するだけです。納税者に個別に提示して理解を求めることは想定されていません。
 
 調査の事前通知の必要も、税務署の判断次第にまかされています。やむを得ない場合に限る反面調査の「補充性」も明記されていません。いきなり銀行調査もできることになります。
 肝心の調査の「理由」と「必要性」を相手に告知する義務の明示がありません。これは致命的です。嫌がらせ的な調査のあげく慫慂の形で増額修正の強要が広く行われてきました。この悪しき慣行を「勧奨」の表現で公認するのも許し難い限りです。調査終了時の結果の告知には「一事不再理」の原則がなく、再調査の余地を残しています。
 
 今回の「改正」は租税法律主義との整合性を欠き、実質的な「改悪」というほかありません。立法にあたり「個人の尊厳」「国民の権利」につき最大限の尊重を求めている憲法13条にも真っ向から違反しています。憲法12条は、国民の権利保持に「国民の不断の努力」を要請しています。この「改悪」を許さないたたかいが、いま私たちに課せられています。

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