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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3022号 5月14日付
 
税金 徴税攻勢
 

「申述書」もとに重加算税 納税者だます税務署は許せない=岩手・一関

 不当な税務調査で7年分の修正申告を強いられ224万円もの追徴を課せられた岩手・一関民主商工会(民商)の菊池芳郎さん=養鶏。民商の仲間とともに一関税務署とたたかい、署長の職権による減額更正をかちとりました。「民商と一緒に頑張って良かった」と笑顔で語っています。

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勝利報告集会で報告する菊池さん

 4月19日、一関市内で民商が開いた「闘争勝利・報告集会」。たたかいを支えた役員・会員23人を前に菊池さんは「ここまでたたかえたのは民商と家族、友人の支えあればこそ。本当に前向きに頑張る気持ちになれた」と感謝を述べました。

言われた通りに書けと「申述書」
 菊池さんが税務調査を受けたのは10年12月2日のこと。5日間の調査の末、調査官は菊池さんに対し「営業にかかる経費が実際よりも多い」と言いがかりをつけ、その理由を文書で説明するよう指示しました。菊池さんは「経費が多かったのであれば、それは申告書の書き方が分からなかったため」との文書を提示しました。
 しかし、調査官は菊池さんが故意に経費を水増しし、脱税を図ったと決めつけ、「言われた通りに文書を書けば税金が減額される」とほのめかし、調査官自身が口述した「経費について実際より多く記載しました。申し訳ありませんでした」という内容の「申述書」の作成を強要しました。
 その上で、税務署は菊池さんに対し、一切説明せずに、税額のみが印字された7年分の修正申告書に押印を指示。本税と重加算税を含めた224万円の追徴税額が発生し、地方税を含めるとその額は480万円まで膨れ上がりました。
 菊池さんは税務署に出向き、「払えない。助けてほしい」と懇願しました。しかし、署員は「銀行から借りて、それでもだめなら取引先から借りて払え」と脅し、月々8万円以上を支払うことを誓約させました。

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不当な税務調査をはね返し減額更正を実現した菊池さん夫妻(前列右から2人)と小野寺会長(後列左から2人目)ら民商の仲間

民商に入会し、国税庁とも交渉
 「税務署の言うことは絶対だと思っていた。とんでもないことをしてしまった」と自分を責めていた菊池さんは、近所に住んでいた商工新聞読者に相談。民商に行くように勧められ、11年2月に入会しました。民商の役員とともに納税者の権利を学習。7年分の調査、重加算税は「高額・悪質」な場合だけであること。納税者をだまし、「申述書」を書かせて「脱税」を認めさせるやり方は明らかな不当行為であることなどを学び、「税務署員の行為がいかに不当かが分かった。もう黙ってはいない」とたたかうことを決意。民商三役とともに11年9月、署長の職権による追徴税額の減額を求めて税務署と交渉し更正の請求書を受理させました。
 その後、日本共産党の大門実紀史参院議員や全商連の支援を受け、7度にわたって税務署と交渉。今年1月26日には国税庁交渉に参加し、数々の不当行為を告発するとともに、更正の請求を認めるよう求めました。

ずさんな調査と算定が明らかに
 その結果、税務署は2月17日、修正申告における税額の算定根拠とした資料を開示しました。その内容は水道光熱費や車両費などがゼロ。配偶者控除が除外されるなど、極めてずさんだったことが明らかになりました。
 菊池さんは3月2日、早期の更正決定を求める請願書を税務署に再度提出。税務署は3月14日、04〜06年の3年分については所得税の追徴・重加算税のすべてを取り消し、07〜09年の3年分は重加算税の取り消しも含め51万500円減額、総額139万4600円が減額されました。
 たたかいを支えた小野寺喜久雄会長は「職権での減額更正を認めさせたのは画期的。権利を学んだことが力になった。何より菊池さん自身の頑張りが大きかった。この成果を民商全体の力にしたい」と話しています。
 菊池さんの妻・禮順さんは「7年分と聞いて目の前が真っ暗になった。真面目な夫にこんなことが起こるなんて思っても見なかった。1人では何もできなかった。みんなの力があればこそ」と感謝しています。
 菊池さんは「納税者を人間扱いしないような調査は絶対に許せない。二度とこういった問題が起きないよう、自分も運動に参加し、大いに奮闘したい」と話しています。

▼申述書(しんじゅつしょ)=税務署が、通常の任意の事後調査で、納税者に書かせる文書。「脱税していました」「申し訳ありません」「ふかく反省しております」などの文言を入れ、納税者に署名押印を求めるケースが多発。これらの書類を元に、故意に「所得を仮装・隠蔽した」と見なして、わずか1万円の課税に対して重加算税をかける事例まで発生。また、異議申し立てなど訴訟に発展した場合には“自白”の証拠にしようとしている。同種のものに「聴取書」「確認書」「質問てん末書」などがあるが、すべて法定外文書であり、提出や署名の必要はない。

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全国商工新聞(2012年5月14日付)
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