「担当者が変わった途端分納を認めないと言われ、売掛金を差し押さえられた」(大阪府)、「不動産を差し押さえられ、銀行借り入れができず自殺」(山梨県)‐‐。今、全国で人命を奪い、商売をつぶすような強引な滞納処分が相次いでいます。国税庁の「滞納残高の着実な圧縮」方針による消費税滞納と累積・長期、小額滞納事案への滞納処分の強化によるものです。千葉県松戸市で会社を経営するKさんも、分納担保として差し入れを合意した不動産をいきなり差し押さえられた一人。「私たち経営者にとって税務署からの差し押さえは前科一犯も同じこと。税務署長が謝るまで民商と一緒に断固たたかいます」と怒りを語りました。
 |
一方的に差し押さえを強行した松戸税務署 |
「税務署の納税相談はこれでよいのでしょうか」と怒りをあらわにするのは千葉県松戸市で製作所を営むKさん。創業70年、日本で5本の指に入る、各種バネや鋼材の試験機メーカーです。
Kさんは昨年8月末に確定申告。修正申告分を含め消費税など190万円を分納したいと10月5日、税務署に相談に行きました。税務署の若い担当署員は「要望は分かりました。回数が長くなるので担保を入れてほしい」と要求。Kさんは了解し、10万円ずつ6回分の納付書をもらい帰ってきました。
融資できません
ところがわずか1週間後、松戸税務署に会社の建物と土地をいきなり差し押さえられたのです。すぐに取引銀行から呼び出されたKさん。「税務署から差し押さえの通知が来てますよ。一体どうしたんですか。もう融資はできません」と宣告されました。驚いて法務局に行くと、会社の不動産登記簿謄本にしっかり「10月12日、松戸税務署差押」と記されておりびっくり。「目の前が真っ暗になりました」と言います。
すぐに税務署に飛んで行き、差し押さえの件を問いただしたところ、担当とは別の署員が出てきて「説明しているはず」の一点張り。
「担保に入れることは承知したが、差し押さえてくれと自ら税務署に相談に行くほどばかな経営者がいますか。あなたじゃらちが明かない。税務署長を呼んでほしい」と訴えましたが、署員は「面談させるわけにはいきません」と取り継いでくれません。
従業員を7人抱え、長年の会社の信用もあるKさんは、倒産するわけにはいかないと金策に走り、全額を納税しました。
「そしたらすぐ送ってきましたよ、差し押さえ解除の通知を。担保解除の通知なら納得するが、やってることがめちゃくちゃです」と怒りが収まりません。
内容証明で告発
Kさんは1月8日、税務署長あてに内容証明郵便で「70年の社歴を汚されてしまいました。署長自らちゃんと謝ってほしい。この件がなしのつぶてならマスコミにも呼びかけ、名誉棄損で訴えます」と通知。2日後、担当の上司の統括国税徴収官がKさんを2度訪れましたが、やはり「差し押さえのことは話しているはず。ただ説明不足だったことは謝る」と、誤った手続きを一向に認めようとはしませんでした。
励まされて入会
松戸民商を紹介されたKさんは「一緒にたたかいましょう」と励まされ入会、民商の仲間と一緒に3月28日、税務署へ抗議と申し入れを行いました。
総務課長らは「法律に基づいてやっているだけ。第三者と一緒では話はできません」と、言い訳に終始しました。
滞納額190万円に対し、差し押さえた土地建物は固定資産評価額でも1500万円以上。今回の税務署の行為は、国税微収法が禁じる超過差し押さえです。
Kさんは「消費税は過酷な税金です。預かっているって言われたって、プールなんかできません。税務署と勝ち負けで争っているんじゃない。一生懸命頑張っている中小業者が、消費税をひとたび滞納したら、税務署の身勝手な行動で倒産したり、自殺に追い込まれることが許せないのです。民商と一緒にこうした国家的な犯罪を告発していきたい。非を認めるまで頑張る」と決意を語りました。
|