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中小商工業研究所
 

第20回商工交流会 売上伸ばす工夫に感動

業者が輝く社会めざし
 「全国の商売の工夫や発想に感心。本当に来て良かった」-。延べ1300人が参加し、中小業者が地域で果たす役割に確信を広げた第20回中小商工業全国交流・研究集会(2〜3日、愛知県豊橋市)。多彩な分科会や産業遺産の見学、物産展などを前号に引き続き、紹介します。

産業集積の再生こそ 第1 新たなものづくり

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実践的な報告が注目を集めた「ものづくりと産業集積再生」の分科会

 小林世治・元日本大学教授が「公正取引の実現だけでは苦境を打開できない」と問題提起。中小製造業は、世界人口の72%(約40億人)を占める所得3000ドル以下の層に向けた、簡素で使い勝手が良く修理しやすい製品づくりなど、社会貢献型ビジネスの展開が必要と指摘しました。
 永田瞬・高崎経済大学准教授は、倉敷のジーンズ生産の集積の実態を報告。縫製労働者の低賃金構造のなかで、「技能の継承につながっていない」問題点を指摘し、「末端技術者の技能を社会的に評価する必要性と、それを可能にする中小企業の経営安定が欠かせない」と語りました。
 山本篤民・日本大学准教授は伝統工芸品などで商品のリニューアル・ブランド化を通じて再評価されつつある現状を報告。「ネットワークの活用や顧客ニーズに合った改良・開発が先細りの克服につながるのでは」と問題提起しました。
 その他、橋沢政實さん(千葉・佐原)が、自社製品の国外輸出での課題や今後の方向性について、土屋章さん(岐阜・各務原)が廃棄物を利用し消臭剤を開発した「環境ビジネスの現状」を報告。中小商工業研究所大阪ものづくり部会から製造業者訪問の取り組みが報告されました。
 山本氏は「産業集積が壊れると地域経済循環の維持が難しくなる。人材確保・育成が急務。地域ぐるみで支える体制をつくり、中小企業・小規模企業振興条例で計画を立てて進めることが大事」とまとめました。

地域建設業の課題は 第2 仕事おこしの実践
 56人が参加。永山利和・日本大学元教授が空き家増加や社会資本老朽化、公契約条例などを例に持続可能な発展方向を問題提起し、市村昌利・建設政策研究所専務理事が政府・国交省による「建設キャリアアップシステム」や「建設産業政策2010+10」の概要を紹介しました。
 実践報告では、熊本市の松尾正さんが熊本群発地震に対する建設業ならではの支援を紹介。「若いころに民商青年部で商売を熱く語り合い、その継続が顧客の笑顔を呼ぶ今の仕事につながっている」としました。
 また、愛媛県四国中央市の合田政直さんは、民商が建設業協会などの団体や個人と協力し、経済効果も示して住宅リフォーム助成を実現した経過を報告。積極的に活用しつつ、制度改善や商店リニューアルに挑戦したいと話しました。
 神戸市兵庫区の下田耕一さんは「信頼できる従業員を雇えるよう仕事量を増やしたい」と将来展望を語り、民商が作成した「兵庫区業者名簿」を小・中学校に届けて懇談しているとしました。
 質疑応答で、市営住宅の改修・補修や発注・元請け・下請けの関係の在り方、小規模工事簡易登録の生かし方、顧客の夢を一緒に実現する経営努力、法定福利費を含む積算単価実現への決意などが活発に討論されました。建設業でのものづくりの本来的な楽しさを次世代に伝える大切さが共有されました。

商業の発展方向探る 第3 活気あるまちづくり

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物産展では、本紙で紹介した「葵丼」(味噌カツ丼)や守口漬、ういろうなど14ブースが出店。三河湾で取れたのり、しらすちりめんせんべいなど海産物珍味を初出店した「マルナカ珍味」の3代目、寺田容子さん(豊橋)は「準備するうちに、だんだん面白くなってきた。全国の人といろんな話ができて楽しい」と笑顔でした

 足立基浩・和歌山大学教授は、少子高齢化が進む中で商店街は公的な役割を持っていると指摘し、中心市街地から優先的に活性化させるイギリスの政策や、各地の空き店舗対策などの事例を紹介しました。
 岡崎まちゼミの会代表の松井洋一郎さんは、「まちゼミ」は、全国300地区に広がっており、「お客さんの満足」「個店の繁栄」「街の発展」につながると報告しました。
 京都三条会商店街振興組合専務理事の馬場雅規さんは、春の売り出し、盆踊り、地ビール祭りなど商店街が結束して成功させてきたと述べ、「対話でき、笑顔が行き交う商店街はこれからも絶対に必要」と力説しました。
 小森裕之さん(岐阜・中濃)は、地域中小業者から歓迎されている美濃加茂市の商店版リニューアル助成(最高50万円)について発言。
 尾塚三夫さん(熊本・益城)=文房具=は、熊本地震後の区画整理事業や災害公営住宅建設の遅れなど行政の対応の問題点を指摘しました。

チャンスを生かして 第4 サービス業の革新
 変化する経営環境やニーズにどう応えて商売を伸ばすのか、ITの活用などの実践を交流しました。
 近藤増雄さん(愛知・一宮)=工業用ミシン販売・修理=は、地場産業の毛織物が衰退し、ミシンを修理できる業者が減る中で開業。ミシンの困り事になんでも応えるなかで得意先も広がり、息子さんが後を継ぐことに。「ホームページで繊維以外の業種にも顧客を広げている」と話しました。
 早川護さん(愛知・豊川)=コーヒー豆販売=は「コーヒーの疑問に答えるとともにインスタグラムの活用などで顧客を増やしている」。
 野口和彦さん(岐阜北)=フラワーショップ・バルーンショップ=は「柳ケ瀬という立地を生かしバルーンギフトを入れたことで商売が広がった」などレポートが続きました。
 助言者の兵庫中小商工業研究所の近藤義晴さんは「変化への対応が、同時に個店や経営者の魅力を高め経営を伸ばす結果となっている」「インターネットで販路を開拓しているのも共通」と助言しました。
 SNSの活用やインスタグラムに大きな反響があり、新たなツールを商売に生かす工夫が交流されました。

果たす役割に確信が 第5 女性と家族経営

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仲間の発言にあたたかな拍手を送る「家族経営における女性の役割」の分科会参加者

 助言者の吉田敬一・駒澤大学教授は「市場原理主義の下で疲弊の度を増す中でも、中小業者の存在意義がなくなったわけではない」と強調した上で、地域社会の崩壊を防ぎ、暮らしを守る、地域密着型家族経営の使命を明らかにしました。
 愛知県連婦人部協議会の宮崎喜美子さんが、県婦協で開いている月1回の「経営セミナー」が、経営を数字で捉え、暮らしと営業を見直すための契機になってきたことを報告。吉田氏は「損益分岐点を明らかにして、経営の目標を家族で共有することで、経営の次の一手が打てる」と助言しました。
 「近くの団地の高齢者を独りぼっちにさせないことが開業の動機。仕事はきついけどやりがいはある」(弁当総菜)、「女性だからと開業資金の融資がなかなか受けられなかった」(美容室)など女性経営者をめぐる厳しさも交流。
 個店としての営業努力を通じ、地域社会のニーズに応え、地域内経済循環を支える中小業者の役割に確信を深めました。

循環型経済の構築へ 第9 自治体の役割探る
 小規模企業振興条例を生かした循環型の地域づくりの実践が報告・交流されました。
 志子田英明さん(北海道・帯広)は、条例制定10年を振り返り、地域がどう変わったかを報告。「地域のポテンシャルはまだまだいくらでもある。小規模に焦点を当てた条例への進化を図りたい」と抱負を語りました。
 荻原誠さん(群馬)は、県内全36自治体への要請を3年続け、「店舗改装支援補助」などの創設の広がりや、民商・県連を「小規模企業支援団体」であることを認めるなど行政との相互理解が深まっていると語りました。
 西尾栄一さん(大阪・吹田)は、造園業務のダンピング受注の問題をただす上でも「地域経済の循環および活性化」を記した条例が力になったと報告。他の分野でも公正な官公需発注を広げていきたいと決意を述べました。
 山元歩美さん(京都・中京)は、地域循環の実現に向けた「ぐるぐる循環ネットワーク」について、「会員を増やし、足元の情報を集め、学習を深め、活動を発信し、お金・ヒト・仕事の循環への理解を広げていきたい」と報告。加賀茂さん(広島・福山)は、市が製造業者の実態調査を始めるなど、これまでにない行政の変化を報告しました。
 岡田知弘・京都大学教授は「EPA『大枠合意』で物品もサービスも開放される危険が。地域経済を守る防波堤としての条例を広げていくことが求められる」と助言しました。

権利を守る制度活用 第11 税と社会保障考える
 社会保障の切り捨てや強権的な税徴収がいのちと暮らしを脅かしている現状を明らかにし、税と社会保障のあるべき姿を探究しながら、納税者の権利を学びました。
 金澤誠一・佛教大学教授が「社会保障制度の根源的意義と自営業層」を報告しました。
 貧困を防止し、経済を安定させるためには「税と社会保障の一体改革」ではなく、本来の税制・社会保障制度の確立が求められると呼び掛けました。
 税経新人会の戸谷隆夫税理士は、負担しきれない納税を緩和させる制度を解説。「滞納は悪なのか」と問いかけ、憲法第25条の生存権や第29条の財産権などの租税法の法源を示し、滞納があっても基本的人権は擁護されなければならず、納税の猶予や換価の猶予、滞納処分の執行停止などの制度の活用を訴えました。
 参加者からは「地域で取り組んだ納税猶予などを税務署に認めさせた」(静岡県)、国保都道府県単位化の問題について(大阪府、埼玉県)、「社会保険料徴収で年金事務所と交渉し換価の猶予を認めさせた」(岐阜県)事例などの報告がありました。

経営力つけ助成助成金申請も 基礎講座1 事業計画の作り方

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会場からの質問に答える講師の上品忍さん(右端)

 上品忍・中小企業診断士が講師となり、事業計画の作り方と実践方法を学びました。
 上品氏は「事業計画は自社の強み、弱みを明確にし、経営方針、目標を明確にする上で大切」と強調。「15年に制定された小規模企業振興基本法を踏まえ、(1)ものづくり補助金(2)持続化補助金などが創設された。事業計画作りと併せ、大いに挑戦しよう」と呼び掛けました。
 四つのポイントとして、(1)決算書の固定費と変動費の分析から自社の限界利益と損益分岐点を知る(2)お客さんを傾向ごとに分類し、ターゲットとするお客さんにどんなサービスを提供するのかのマーケティング(3)顧客と競合他者に対して自社の資源と差別化を図るSWOT分析(4)以上を踏まえ、段階的な経営目標を立て、定期的に見直す-などを強調しました。
 会場からは「事業計画作りを会社の将来を考えるきっかけづくりにしたい」「助成金で断られたが、どう改善すればいいか」などの声が寄せられました。

融資獲得の実践交流 第12 地域金融のあり方
 金融庁の事業性評価融資の促進や、信用保証制度の部分保証の強化など、資金繰りをめぐる環境変化の現状を押さえつつ、融資獲得の実践、あるべき地域金融について議論を深めました。
 鳥畑与一・静岡大学教授は「政府の政策方向は、地域金融機関と中小零細企業の淘汰再編を促進し、地域経済の基盤を破壊する懸念がある。低生産性でも小規模事業の継続そのものに価値があることを示し、自らの事業の継続性の分析と改善、情報発信をする必要がある」と述べました。
 田畑俊郎・金融労連書記長はマイナス金利政策などで「収益が悪化する地域金融機関を整理淘汰する狙いも見え隠れする。顧客サービスの切り捨てや中小業者・労働者いじめには労働組合として警鐘を鳴らしたい」と語りました。
 服部守延・愛知県連会長は、名古屋市内の銀行本店懇談の経験と、県条例が求めているリレーションシップバンキング機能の発揮の必要性を強調しました。
 参加者からは、借り換え保証制度の活用や事業計画を力にした融資獲得の実践が出され、IR型カジノが地域経済に甚大な影響を及ぼす問題も議論されました。

「ガラガラ」糸をつむぎ オプション企画 三河紡績機を見学

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天野武弘さん(右)から説明を受け、作動するガラ紡を見学したオプション企画

 交流会終了後には、オプション企画として愛知大学の生活産業資料館に展示されている「ガラ紡績機」などの特別見学が行われ、研究者や学生、機械加工業者など25人が参加しました。
 愛知大学中部地方産業研究所研究員の天野武弘さんが「弱くて太くてむらがある糸ができるので、ガラ紡績機はほとんど使われなくなった。しかし今では味のある糸に注目が集まっている」と解説。綿から綿糸を紡ぐ「ガラ紡績機」と糸を合わせる「合糸機」、合わせた糸を撚って強度を高める「撚糸機」の3台を動かしました。1873年に発明され、60年代まで三河の地場産業を支えた木造の機械は、「ガラガラ」と元気よく音を立てて作動。3台が動く状態で展示されているのは珍しいとのことで、参加者は歓声を上げながら精巧な動きに興味深く見入りました。

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