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  トップページ > 全商連の活動 > 全国商工新聞 第2927号 5月24日付
 
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貧困は最大の人権問題=宇都宮健児日弁連会長に聞く

 多重債務の問題をひたすら追いかけ、過酷なサラ金の取り立てから被害者を守ってきた宇都宮健児弁護士(64)が4月、日本弁護士連合会(日弁連)の会長に就任しました。本紙にもたびたび解説やコメントを寄せてたたかいを激励し、名誉村長を務めた「年越し派遣村」では国を動かしました。貧困問題の解決に全力を挙げ、「社会的弱者の立場に立つ」ことを信念とする宇都宮弁護士に日弁連会長としての思いを聞きました。

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日弁連の会長に就任した宇都宮健児弁護士。生存権を守ろうと弱者の立場に立ってたたかっています

 日弁連会長の道を選択したのは長年、多重債務や貧困と格差の問題を取り組んできた活動が土台にあります。全国の民主商工会(民商)の会員さんとも、高金利引き下げや過払い金を取り戻す運動に取り組んできました。

 貧困対策本部
 日弁連の中に貧困問題に関する対策本部を立ち上げました。中心的な課題として位置づけ、全国の弁護士会で生活保護や労働相談に応じる体制を整え、法改正に取り組みたい。日弁連は基本的人権の擁護と社会正義の実現を弁護士・弁護士会の使命と考えて、さまざまな問題に取り組んできています。貧困や格差問題は、社会問題であると同時に最大の人権問題。日弁連が全力を挙げて取り組むべき問題だと思います。

 自殺者3万人超
 多重債務を苦にした自殺や夜逃げが多発し、自殺者はこの12年間、毎年3万人を超えています。そのうち経済苦で亡くなっているのは7000人です。
 夜逃げをする人は年間10万人といわれています。多くの人が取り立てを逃れるため、住民票を移動せずに逃げています。そうすると、就職が難しくなる。しかも、住民票がないので国民健康保険にも加入できず、病気やけがをしても受診することができません。そういう人たちが毎年、大量に生み出されていることが多重債務問題を取り組む中で分かってきました。
 夜逃げをした人がネットカフェで寝泊りしたり、路上生活をしたり…。多重債務問題に取り組んできた弁護士や司法書士は、数年前からホームレスの支援活動を始めました。首都圏ではホームレス支援のネットワークができ、炊き出しに合わせて無料法律相談をするようになりました。

 反貧困のネット
 私もその活動に参加し、そこでNPO法人や自立生活サポートセンター「もやい」で野宿者を支援していた湯浅誠さんと出会い、07年に「反貧困ネットワーク」を立ち上げました。当時、貧困問題は社会的に注目されていませんでした。格差は議論されても貧困の広がりが社会的に浸透せず、政治の世界でも議論されなかった。
 貧困問題を解決するには支援団体や当事者が集まって貧困を可視化する、つまり目に見える形でアピールし、解決を迫ることが必要でした。

 年越し派遣村
 その具体化が08年12月の「年越し派遣村」でした。派遣切りされた労働者が500人以上、東京・日比谷公園に詰めかけました。
 マスコミで連日報道され、貧困の広がりが目に見える形となり、貧困を可視化したわけです。そのことで、「反貧困」という言葉が定着しました。なぜ、日比谷公園だったかというと目の前に厚生労働省があり、その先には国会議事堂があるからです。日本の政治の中心で貧困問題をアピールしたわけです。貧困と格差が広がり、国民生活が破壊されていることが浸透し、昨年8月の総選挙で政権交代を実現させる力にもなりました。
 しかし、政権交代をしても景気は回復していません。解雇しにくくしたので、新たな派遣切りは行われなかったが、仕事が見つからない、野宿者は増える、炊き出しに並ぶ人も増えました。本来、派遣村は政府や自治体がやるべきこと。われわれはそのことを要望し、昨年暮れには136自治体が派遣村的な取り組みを行いました。これは一歩前進です。
 しかし、一方では生活保護を受けて住まいを得て就職活動をしても仕事に就けない状況が広がっています。雇用創出や経済の活性化は現政権に課せられている大きな課題です。
 同時に職を失った人や生活保護を受けている人たちが、自分たちの生存権を守るため、司法のセーフティーネット「民事法律扶助を拡大してくれ」と要求することが大事です。
 弁護士が政府に要求するだけでは、解決できません。受益当事者と日弁連が連携して世論を変え、政府を動かすことができるのです。

 業者が元気に
 経済不況で中小業者に対する下請けいじめ、貸し渋り、貸しはがしなどのトラブルが続出しています。日本経済を下支えしている中小業者が元気になることが日本経済の活性化につながります。日弁連も、中小企業法律支援センターを設置して、中小企業の支援を行うとともに、この4月1日からは、中小企業のための「ひまわりほっとダイヤル」(全国共通専用ダイヤルTel0570・001・240)をスタートさせました。不況に負けないで頑張りましょう。


 宇都宮健児会長プロフィル
 1946年愛媛県生まれ。1969年に東京大学法学部中退、司法研修所入所。1971年に弁護士登録、東京弁護士会に所属する。
 日弁連では、貧困と人権に関する委員会、弁護士報酬敗訴者負担問題対策本部委員、上限金利引き下げ実現本部本部長代行、多重債務対策本部本部長代行などを歴任。
 著書は『弁護士、闘う 宇都宮健児の事件帖』(岩波書店)、『大丈夫、人生はやり直せる‐サラ金・ヤミ金・貧困との闘い』(新日本出版社)、『反貧困‐半生の記』(花伝社)など多数。


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全商連会館で懇談した左から西村副会長、宇都宮弁護士、国分会長、海渡日弁連事務総長

宇都宮会長が全商連を訪問
国分会長らと懇談
 日弁連の宇都宮健児会長は4月28日、全商連会館(東京・目白)を訪れ、国分稔会長、西村冨佐多副会長らと懇談しました。
 宇都宮会長は日弁連が中小企業法律支援センターを設置したことを報告するとともに、生存権を保障する観点から「生活保障法」に名称を変え、生活保護の拡充を図るなどの改正案を発表したことを話し、運動への協力を呼びかけました。
 また、弁護士のワーキングプアの問題にも触れ、「司法修習生への給与が貸与制になろうとしている。ロースクール時代から借金を抱え、経済的事情で弁護士を断念する若者が増えかねない。対策本部を立ち上げ、権利の守り手を育成したい」と述べました。
 国分会長は「『生活保障法』は時宜にかなった提起。生存権を守るため、一緒に運動を強めたい」と応えました。

   
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