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−中小商工業への震災対策強化の緊急提案−
1995年3月
  1. 何をどう解決すれば営業を再建できるか


(一) 営業再開の土台―生活再建への四つのキメ手
1.休業補償制度の創設
2.債務免責の特別措置を
3.人間性守る住宅確保
4.中小業者の従業員確保と業者団体の事務職員の生活補償を

(二) 営業再開の可能性を明確に
1.事態を打開する三つの基本
2.地震倒産を1件も出さない」倒産防止と金融対策
3.医療、社会保障分野の施策拡充

(三) より豊かな地域への復興のために
1.住民・業者の合意を原則にした復興計画を
2.復興財源は増税でなく、予算の浪費にメスを
3.公共事業は地元業者に優先発注を
4.資材の価格つり上げ、取引停止など悪徳商法の規制
5.新分野進出助成など中小企業施策の総見直しを
6.総合経営相談活動の継続・充実を

2.災害につよい国づくり、まちづくりをめざして
1.地震国日本と国政の任務
2.防災と大企業の責務
3.中小業者の経営と防災

おわりに


一、何をどう解決すれば営業を再建できるか

(一) 営業再開の土台―生活再建への四つのキメ手

 被災地は、中小企業・中小業者の集積が高い地域であり、この地域 での復興のためには中小業者の営業再開が決定的に大きな意味をもちます。
 この中小業者が営業の再開に向かうためには、まず何よりもその土台となる生活が 最低限度安定、保障されなければなりません。中小企業・中小業者の場合は、住 宅、働く場を失った上に、事業用資産の損失など二重、三重に個人財産を失う甚 大な被害を受けており、その再建のためには、営業再開の土台となる生活を補償 する制度の創設がどうしても必要です。そうしてこそ、事業者として、その再開 ・再建の活動に必要な力を発揮することができます。
  そのためには、次の四つ がキメ手です。

1、休業補償制度の創設
 地震によって休業を余儀なく されたすべての業者に対する「休業補償制度」を創設することです。 激甚災害 法の条文には、「やむを得ず事業を休止し」という明記もあるように、激甚災害 の場合の休業認定は不可能ではありません。
 労働者向け制度では就職内定者に対する失業給付の特例や、また、学生への奨学金制度など保険金等の掛金を条件 としていない制度もあります。個人財産の国家補償という基本的立場を踏まえて 、今ある各種制度を中小業者向けに適用する発想で、休業補償制度を創設するこ とは道理があります。
 この場合、生活保護基準を下限とし、従前の事業者所得を基準に金額を算定し、地域を限定せず、「地震によって休業せざるを得ない」すべての業者を対象にすることです。

2、債務免責の特別措置を
  生活再建と営業再開への意欲を育てる上で、次に大切なことは、国が、被災者の過去 の借金、債務を免除、軽減する特別措置をとることです。
 中小業者等が債権者 である場合もあることを考慮し、中小業者、国民の犠牲とならないよう、国家が 肩代わりして個人補償をおこなうことが必要です。 国・自治体は、過去の融資 分の返済猶予や特別災害融資制度の創設など、一定の措置をとっていますが、こ れまでの債務の上に新たに借金を背負うことは、中小業者にとって大きな負担に なることは変わりません。
 「負けるな大震災」の気概に燃えて営業再開に踏み 出す中小業者の決意と努力が継続し、成功するように支援することこそ行政の責 任です。
 関東大震災の時の被害額は、当時の国家予算の3倍でした。それでも 日銀が、割り引くことが困難な手形を割り引くことや債務免責などの特別措置を とりました。当時と比較にならない経済力をもつ今日、決してできないことでは ありません。

3、人間性守る住宅確保
   いまなお数10万人の人びとが避 難所や、建物が危険で他の地に非難しての生活を強いられています。その正確な 数も把握されていない、異常な事態が続いています。この状態を一刻も早く解決 することは、生活と営業再建の土台です。そのためには、現在のすすめ方のいく つかの改善が必要です。
@応急仮設住宅について、大規模用地への建設に限定せ ず、隣近所の人間関係が破壊されない小規模・小単位の用地への建設もすすめる こと。 とくに、中小業者の場合、住宅の場所が営業再開の展望と連続するよう 、この考え方が大切です。
A仮設住宅での生活が長期になる可能性もあり、風呂 、冷暖房設備、テレビ・冷蔵庫等を備えたものにすること。島原のときように、 大企業がこれらを設置あるいは商品提供すべきです。
B住宅の応急修理をすすめ ること。 建物危険度の判定だけでは居住可能、修理可能の判断ができません。 中小業者等、民間の専門家の力を集中して、破損住宅の応急修理を急ぐことが必 要です。そして、その経費(専門技術者の全国的集中と修理費用)に対する国の 援助を強めることです。
C自力住宅復興資金を創設し、個人負担を大幅に軽減す ること。

  以上の改善と新しい制度創設によって、住宅確保の規模と速度を引き 上げることができます。これと並行して、公営住宅建設に着手することが必要で す。

4、中小業者の従業員確保と業者団体の事務職員の生活補償を
 営業再開の条件をきりひらく上で、従業員の確保は不可欠の要件です。そのために 、休業のやむなきに至り、賃金の支払いができなくなった中小零細業者について 、その従業員すべてに対して雇用を継続したままで基本的賃金を支給する特例制 度を創設すべきです。
 また、被災地は、中小企業・中小業者団体、組合も多い 地域です。個々の業者の営業再開、地域経済の復興のためにも、こうした団体の 役割は震災前以上に重要になっています。その役割発揮には、中小業者・団体と 苦楽をともにしてきた専従事務職員のはたらきは欠かせません。
 組合費・会費 によって業者団体等の活動を維持している組織では、今回の震災によって会員業 者が組合費等を納入できない事態が生まれています。それは、専従事務職員の給 与が支払えないことになります。
 従業員への生活保障の考え方を発展させて、 こうした団体の専従事務職員の給与補償をおこなうことが緊急に必要です。

(二) 営業再開の可能性を明確に

 いま、もっとも緊急に求められている ことは、営業再開の見通しを明らかにすることです。中小企業・中小業者の営業 再開は、人間らしい生活ができる真の地域経済の復興・まちづくりへの確実な道 です。それは、「中小業者の営業再開は神戸復興のシンボル」という市民の声が ひろがっていることでも明らかです。
 いうまでもなく、被災地の圧倒的多数の 中小企業・中小業者は、「この地で営業を再開したい」という希望をもっていま す。しかし、現実は、その希望や意欲を打ち砕きかねないほどに営業再開の条件 が破壊されています。
 いまこそ、国等の責任において営業再開に必要な環境と 条件の復旧・整備の計画、スケジュールを業者の前に示し、迅速に実行すること です。

1、事態を打開する三つの基本
 建物の解体・処理のスピードア ップ、ガス・水道の復旧、神戸港、交通機関、道路の復旧・整備、店舗、工場、 作業所、倉庫の確保、部品、物資、設備の確保等々、営業再開のためにどうして も解決しなければならない課題が山積しています。
 これらの問題の具体的な解 決が遅くなればなるほど営業再開が遅れ、業者に経済的、心理的負担が重くのし かかってくることになります。 この事態を打開するため、政府、自治体、関係 大企業は、
(1)市民を信頼し、市民のエネルギーに依拠し、市民とともに解決 する立場に立ちきること
(2)迅速に作業をすすめるスケジュールを作成し、中 小業者・住民にも示すこと
(3)公務員や復旧作業人員の全国的な集中をはかる こと
を基本的な解決方向として格別の手だてをとり、知恵も出し尽くすことです 。
 建物の解体・処理については、ある地域では最後は三年先になるとか、多く のところで一年以上かかるといわれています。公費負担額の引き上げと地元中小 業者への発注、自力処理への援助等でスピードアップすることが必要です。
 仮 設工場、仮設店舗についても業者の要求をくみあげ、その場所や規模についても 業者とともに力を尽くすことが欠かせません。
 一方、非常な困難のなかから、 自主的に営業再開をめざす動きも生まれています。こうした中小企業・中小業者 に対する支援としても環境整備は急がれており、また、従来の制度などの枠にこ だわらずに格段の措置をとって支援することが重要です。
 私たち中小業者は、 自らの生活は自ら再建していく意欲と責任を自覚しています。そして業者として の事業活動を通して、経済的・社会的役割を引き続き果たしていく立場に立って います。
 一つのビルで営業を営む業者みんなで「テナント会」をつくって、復 旧・復興の自主的努力を始めたり、数人の事業主が力を寄せあって、靴製造を開 始した例はその典型です。
 技術・技能は残された業者が、さまざまな困難のな かから、新しい可能性の追求に立ち上がりつつある時、行政が、明確に営業再開 の可能性を示すことが当然の責任です。

2、「地震倒産を一件も出さない」 倒産防止と金融対策
 被災地を中心に全国的に「地震倒産の急増」が心配さ れます。従来型の倒産防止対策にとどまることなく、次のような措置をとること が必要です。
@直接被害、間接被害という区別をやめ、地震によって受注・発注 、代金の回収、商品・資材の円滑な流通、仕入れ単価などさまざまな経営上の影 響を受けた場合は、すべて特別金融制度の対象にすること。
Aり災証明の発行手 続きが行政区域によって違いがあり、混乱している面もあることを配慮して、融 資受付の必要条件にしないこと。
B割引困難な手形を日銀が割り引くなどの特別 金融措置をとること。
C必要書類、金融審査を思いきって簡素化、迅速化するな ど、従来の倒産防止、金融制度を大きく変える措置をとること。

 もともと、戦 後最大規模の不況によって、中小業者の営業は重大な危機が続いていました。も ちろん、この不況は天災ではありませんでした。さまざまな政策要因による不況 との必死のたたかいのさなかに、今回の地震に見舞われたという条件を充分考慮 すべきは当然です。
「受注を受けて生産中に地震で、注文がストップされた」「 春ものシューズが入荷せず就職・入学シーズンの売れ時に売る物がない」、関西 方面の観光やイベント中止で旅館等の相次ぐキャンセル、余震への恐怖による消 費低迷など、経営被害は深刻です。 東京協和、安全の2信用組合への乱脈融資 事件を真に反省し、深刻な被災者対策を思い切ってつめよるべきです。
 従来型 の倒産防止対策では、今の事態の解決にならないことは明白です。

3、医療 、社会保障分野の施策設拡充
 中小業者の営業再開の条件をきずく上で、軽 視できない問題は、医療などの分野の特別の対策です。
 いまの国会に、自営業 者の多くが利用している国民健康保険制度の改悪案が提出されていることは、阪 神大震災対策に逆行する問題として、厳しく糾弾されるべき問題です。
 中小業 者の健康破壊は、一般の労働者以上にすすんでおり、本来、大きな政治・社会問 題です。 政府は、医療費、保険証の焼失等に対してそれなりの措置をとること にしていますが、業者自身が健康を維持できるための措置や、介護を必要とする 家族への援助などで、一段の踏み込んだ支援策がとられなければなりません。安 心して営業再開、事業活動の再建に専念できるために、欠かせない対策です。身 近な自治体の施策拡充と国の自治体への財政支援が必要です。

(三) より 豊かな地域への復興のために

 私たちがめざす復興は、地震発生前の状態が そっくり復元されることではありません。 中小業者に冷たい政治のもとで、受 注・売上の減少、大企業の横暴がまかり通るような状態に戻るのではなく、いま 求められる緊急切実な問題の解決をはかることをとおして、経済民主主義が拡大 される方向、真に民主的に、地域経済が再生・復興されることを追求するのは当 然です。
1、住民・業者の合意を原則にした復興計画を
 中小業者の営 業が本格的な復興の軌道にのるためには、政府および兵庫県などの復興計画が、 だれのために、どのように策定されるかが大事な問題です。 中小企業・中小業 者を地域経済の再建・復興の主要な担い手に位置づけ、住民・業者の合意を原則 に、民主的に策定されなければなりません。
 国および県・市などは、すでに復 興計画について検討を開始しています。そのことに関して、中小企業・中小業者 の間から、「県や市が一方的に工場の配置を決めてそれを押しつけるやり方にな るのではないか」という不安と批判の声が上がっています。 いま、政府や県な どがすすめつつある行政主導型を撤回し、住民・業者等の意思が反映される機構 ・機関を緊急に設置すべきです。
 靴、機械、繊維などの地場産業や料飲街は、 中小業者の集積があってこそ成り立っていました。これを無視して、「防災」の 名のもとに集積を破壊する工場配置、神戸の景観を復元したいという市民要求無 視のまちづくりなどを強行するやり方は許されません。
 民商・全商連は、地域 産業を基幹産業に位置づけた「地域経済振興条例」の制定を提言してきましたが 、いまこそ、この考え方が重要ではないでしょうか。
 「行政主導」の復興計画 から、「住民・業者主導」への転換が必要です。零細業者を強制的に特定地域に 移転させたり、「住民犠牲の区画整理」方式では、人間不在の「活力なき復興」 でしかありません。
 この点は、地震発生以後の救援、復旧活動の全経過を見れ ば明らかなように、公衆浴場、商店、市場などさまざまな、地域に根をおろし、 地域住民とともに生きてきた中小業者が発揮した力や役割があらためて人びとの 評価を受けた生々しい事実が証明しています。中小企業・中小業者の存在こそ、 人間らしく人が住めるまちを支えます。 防災の面でも、経済活動の面でも、県 民・市民の合意を原則に、中小業者の役割とそのエネルギーを信頼し、結集する すすめ方こそ、この壊滅的被害から復旧・復興を円滑にすすめる唯一の道です。

2、復興財源は増税でなく、予算の浪費にメスを
 阪神大震災の復旧・ 復興のために必要な財源を増税に求めることは絶対に許されません。被害総額が 約10兆円としても、3カ年計画で年間三兆円強であり、どうしても増税以外に 方法がないとはいえません。
 第一に、安全無視の大型プロジェクトの中止など 、年間50兆円を超える公共投資にメスを加え、ムダをなくすことです。 たと えば、東京臨海副都心開発、大阪ベイエリア開発などの中止や、住民合意に至っ ていない不要不急の公共事業の中止、延期の措置をとることです。
 第二に、軍 事費や海外援助費を「聖域」にしないことです。
 真に国民の生命と財産を守る というなら、「戦車より消防車を」というのが国民の声です。アメリカの軍事的 世界制覇と同調する4兆7236億円もの軍事費や、大企業の海外進出のツユ払 い予算は厳しく削減し、防災対策にまわすべきです。
 第三に、309億円もの 政党に対する援助金は全額カットすることです。
 第四に、大企業に対する優遇 税制や補助金を是正・削減することです。
 こうした措置で、年間3兆円の財源 を生み出すことは十分できることです。

3、公共事業は地元業者に優先発注 を
 災害復旧・復興の公共事業は、その総額で何兆円にも達すると見られ、 大手ゼネコンなどがすでにその受注をあてにした活発な動きを示しています。
  安全無視の大型プロジェクトを見直すとともに、生活に密着した分野の工事・事 業を拡大・優先して、地元中小業者への発注を飛躍的に増やすことは、被災地の 活力をよびもどす上でも効果的です。
 国・県等は、現行の「官公需法」を厳格 に実行することはもちろん、その運用方針、体制にメスを加えることが必要です 。例えば、防災用食糧・食品や衣料品の備蓄についても、避難所の備蓄だけでな く、商店街や中小商店にも公費で備蓄するなどの方法を採用するなど、キメ細か い施策で中小業者向け発注を拡大することです。

4、資材の価格つり上げ、 取引停止など悪徳商法の規制
 独占禁止法や下請法に関して、「激甚災害等 における新運用方針」を定め、それを関係業界に徹底する緊急措置が必要です。
 ある大手自動車メーカーが横浜市で車を調達して特定部品を買い集めているな ど、神戸港の使用不能や被災地企業の製造不能の事態のなかで、ジリジリと値を 上げる建材・物資が見られます。政府は、全力をあげてこうした動きを監視し、 高騰を抑える具体的な措置を速やかにとることが求められます。
 「需要関係で 値段が決まるのは市場経済の道理」という立場では、価格つり上げを規制するこ とができません。戦後最大の災害からの復興という、現在の非常事態にふさわし い行政でなくてはなりません。
 また、震災による製造設備の損壊、受注能力の ダウンなどを口実にした、大企業・親企業の中小業者、下請業者に対する一方的 な取引打ち切りの行為を規制することが必要です。

5、新分野進出助成など 中小企業施策の総見直しを
 すべての中小企業向け施策を総点検し、阪神大 震災で被害を受けたあらゆる業種の中小業者の営業再建に役立つよう、必要な改 善をおこなうことが大切になっています。 地震前から多くの中小業者は、大企 業の生産拠点の海外移転や「産業構造の転換」の荒波を受けていました。今回の 震災を契機に、原材料の変更、新製品の開発など新分野への事前の進出・転換に 向かう業者も生まれる可能性があります。また、新たに、共同化の動きが強まる ことも予想されます。
 このような中小業者に対して、助成する現在の法制度を いっそう柔軟に運用していくことも重要です。特に、今国会に提出されている「 創造的中小企業支援法」が、復興をめざす業者に活用しやすいよう、その予算措 置の拡大も含めて検討することが必要です。

6、総合経営相談活動の継続・ 充実を
 極めて大規模な被害からの復旧・復興であるだけに、今後、どのよ うな経営上の困難が生じるか、予想できない面があります。
 したがって、現在 設置されている、中小企業経営の総合相談窓口や相談所を継続・充実することが 必要です。とくに、神戸市などでは、行政窓口が区役所に集中しており、ここの 混雑解消は被災住民の切実な要求です。
 タテ割行政の弊害を除いた総合窓口を 身近なところに増やすなどの措置が望まれます。


二、災害につよい国づくり 、まちづくりをめざして

1、地震国日本と国政の任務
 いま重要なこと は、日本列島全体が地震の危険地帯にあるという世界でもまれな国であり、地震 から国民の生命、財産を守る問題が、まさに、全国的重要課題であることを確認 し、政府および国会が、国民の総意と良識を結集して、国の政治の第一の任務を 確実に実行することにあります。
 そして、全国すべての自治体は、震災・防災 対策の総点検と抜本的強化をおこなうことが重要です。
 国民の生命と財産を守 ることが、国政の第一の任務であることが広く国民の共通の理解となったことは 、意義深い特徴です。
 被災地の惨状の報道に接した中小業者、広範な国民は、 さまざまな方法で救助活動に立ち上がりました。この国民のエネルギーが政府を 動かし、支援、復旧対策を強化の方向に向かわせた体験は、私たち業者運動の今 後にとっても大切な歴史的教訓とするべきことです。そして、その先頭に、兵庫 県をはじめとする被災地域の業者・住民が立っていたということ、被災地のたた かいが、全国的・歴史的貢献となるということも銘記すべき教訓です。
 そして 、地震発生以後の全経過は、政府の国民の生命、財産を守ることへの無責任さや 、特別対策の遅れや出し渋りに対する批判も高まりました。それにとどまらず、 被害を拡大する原因となった過去の開発優先政策への反省が決定的に欠けている ことも特徴的です。
 さらに、高齢者、小零細業者など社会的・経済的弱者とい われる層に深刻な被害がかたよって集中していることは、中小業者の社会的、経 済的地位向上という課題の重要性を示しました。
 地震に強い国土づくり、都市 づくりという問題では、耐震設計基準の見直し、消火体制の強化、観測・予知体 制の強化などの対策が必要です。同時に、それにとどまらず、経済政策全体、あ るいは私たちの生活様式への検討も必要になります。こうした点も視野において 、今後、広範な人びとによる討論や研究、国民的合意をつくりあげる運動が大事 だと考えます。
 同時に、この震災を契機に、「危機管理体制の強化」が必要だ などといい、国民の民主的権利を制限、圧迫する強権政治の体制をつくりあげよ うとする策動を、断じて許さない運動が必要です。
 中小業者、国民の復旧・復 興と震災対策強化、真に住みよいまちづくりの要求を実現することを前面にして 、安全無視、自然環境破壊の「開発優先」の国と地方の政治を転換させましょう 。

2、防災と大企業の責務
 東海地震に対する対策では、一定規模以上 の大企業には、食料、水等の備蓄や地域防災活動への参加が義務づけられていま す。これを、全国すべての地域にも適用し、大企業が防災等の面で、社会的役割 を発揮するようにすべきです。
 多くの大企業は、自らの企業防衛の立場から震 災対策の見直しをすすめています。これをさらに発展させて、その人力(多数の 労働者)や経済力、情報収集力、そして耐震建物など総合的な力量が、地域社会 における防災活動でどう発揮されるかは重要な問題です。
 さらに、救援、復旧 ・復興活動においても、行政や住民と協力して、その役割を発揮するのが当然で す。
 現状は、個々の企業まかせになっています。復旧・復興、防災対策の強化 、日本経済と地域経済の振興の上でも、大企業の役割にふさわしいルールづくり が大事です。
 そして、いまの事態における大企業の責任、役割を考える時、一 部とはいえ、特定物資の買い占めなどの行為は許しがたい反社会的行為であり、 厳しく罰せられるべきです。
 この点では、経団連など財界・大企業の団体の責 任も問われます。経団連は自ら「企業行動憲章」を定めており、その実行が強く 求められます。

3、中小業者の経営と防災
 阪神大震災は、私たち中小 業者が、自らの事業を守ることと、地域社会での役割を果たすという両面から、 防災対策を確立することの大切さを教えています。
 工場や店舗の防災チェック (水、食料の備蓄、有毒ガスなど危険物の管理、災害発生時の指揮系統など)、 取引先の適切な分散化や契約関係、借工場、借店舗の場合の貸主との関係、納品 ・仕入の物流ルート、従業員の安全対策、工場団地や集合店舗での集団防災体制 、そして地域防災への参加等々があげられます。これらの点を、それぞれの業種 ・業態、規模に応じて、専門家や関係機関の協力も得て確立していく必要があり ます。
 そのために一定の労力やコストがかかるにしても、こうした常日頃から の対策をとることによって、瞬時の揺れで10年、20年、営々ときずきあげて きた財産や成果を一瞬にして失う悲惨な被害を最小限にくい止めることができま す。 また、自らを守るこれらの対策が、地域の被害を抑え、逆に、この備えに よって地域全体の被害抑制にとどまらず、場合によっては救援、復旧・復興活動 の地域での拠点になる積極性をもつものです。
 国、自治体は、こうした中小業 者の防災対策に対する支援施策を強めていくべきです。

おわりに
 「負 けてたまるか大震災」のスローガンは、いまや被災地の中小業者全体の合言葉に なっています。同時にそれは、住民全体をも大きく励ましています。 私たちは 従来から、中小業者の役割について、地域経済の活力源としての役割、国民の豊 かな日常生活を支える役割、地域社会の重要な構成員としての役割を明らかにし てきました。
 阪神大震災は、こうした役割をいっそう発展させて、大規模災害 から住民を守り、被災した地域経済の復旧・復興の促進でも大きな役割を担って いることをしめしました。
 また、多くの中小企業・中小業者団体はそれぞれの 組織の性格に即して、救援活動に立ち上がりました。被災地でも全国でも、全業 者、全住民を視野にいれた救援、復旧の活動を機敏に開始したことは、大切な教 訓です。
 また、全国中小業者団体連絡会(全中連)が地震発生後9日目に、震 災対策をメインスローガンにした1000名規模の集会と政府交渉を開始したのも特 筆されるべきことです。
 私たちは、こうした教訓を発展させ、引き続きあらゆ る業者団体や労働組合などと共同して、国民本位の復興と防災対策の根本的な強 化に奮闘します。
 
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