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商工ローン問題解決への緊急提案
1999年10月22日
全国商工団体連合会
  

一、商工ローンの深刻な被害と運動の前進

 「日栄から強引にすすめられて100万円借りたが、その後次々に融資を押しつけられ、家族だけでなく従業員まで保証人にさせられた。その返済のため商工ロ−ン5社から融資を受けるなど泥沼に」「取引先からの入金が遅れ、高利を借りてしまった。返済が遅れたら取立て屋が来てサウナに連れて行かれ、2日間監禁された」「高利の支払でついに返済ができなくなると、厳しく保証人への取立てがはじまり、保証人の給料も差押えた」。
 いま長期の不況の下、中小業者の経営がいっそう深刻になる中で、資金繰り難から商工ローンの違法な高金利や苛酷な取立てによる被害が全国にひろがっています。その結果、倒産・廃業はもとより、自殺、一家離散、家族や保証人をも巻き込んでの悲劇があいつぎ、地域には中小業者の怒りと悲痛な叫びが溢れています。
 商工ロ−ンは、取引先の倒産や手形が不渡りになるなど、中小業者が急な資金繰りに迫られてやむを得ずに利用するケースが圧倒的ですが、当面融資が必要ない中小業者への強引な押しつけ融資も多く見られます。いまや商工ローン被害者は全国で60万人といわれ、まさに一刻の猶予もできない事態になっています。
 こうしたなかで、被害者の勇気ある抗議と告発のたたかいが始まり、全国各地で「なんでも相談会」をはじめとした民商の運動や「被害者の会」の結成で、商工ロ−ン対策弁護団とも連携した多様な運動がひろがっています。
 日栄や商工ファンドの悪質な手口や被害の実態がテレビ、新聞等でも大きく報道され、商工ローンの違法行為への規制を求める世論も大きく高まりつつあります。
 行政当局もやっと動き始め、ついに、全国貸金業協会も「自主的な規制をおこなう」と言わざるを得ない状況に追い込んでいます。
 私たちは、被害にあった中小業者を主人公にした運動の到達点に確信をつよめ、さらに被害者救済と被害の根絶に向けた運動を大きく発展させる決意です。

二、被害を広げた日栄や商工ファンドの違法行為

 被害がここまで広がったのは、資金繰りに苦しむ中小業者に対し、金融機関による貸し渋りや、信用保証協会の保証渋りが横行していることが第一の原因です。政府や大銀行はこの根本的なところにメスを入れないばかりか、中小業者向け融資はノンバンクを活用する政策をすすめ、事実上商工ロ−ンの利用を容認してきたのです。
 さらに、こうしたうごきに便乗して、日栄、商工ファンドなどが悪質な違法行為を重ねてきたことが、被害をいっそう深刻にしました。

  1. 違法な過剰貸付・押付融資
     貸金業規制法は、借主が必要とする以上の金額の借入れの勧誘、借入れ意欲をそそるような勧誘を禁止し、借主及び保証人の返済能力を超えない範囲の貸出でなければならないことを決めています。(第一三条)
     日栄などはこの規定に完全に違反しています。「金利は債務者から、元金は保証人から回収」といわれるように、もともと借主の返済能力を考えない過剰貸付を営業方針にしています。
  2. 利息制限法違反の高金利
     利息制限法では元本が100万円以上の場合、利息が年15%を超えるときには、その超過部分は無効とされています。しかし、日栄などの貸出金利は実質年40%近くになっており、明らかな利息制限法違反の高金利です。
     さらに、制限を超える金利であっても、任意に支払った場合は有効とされる法律上の欠陥を悪用した高利の押しつけも、多くの場合判例に反する違法行為です。
  3. 違法な取立て
     貸金業規制法は、借主・保証人を畏怖困惑させたり、私生活や業務の平穏を害する取立て行為を禁止しています(第二一条)。しかし、日栄が勝手に「返済不安」と判断すると借主や連帯保証人に対して暴力的な取立てをおこない、その家族にまで返済を迫るといった暴挙が繰り返されています。
  4. 「根保証」と連帯保証人問題
     貸金業規制法は保証人に対しても、保証内容を具体的に記載した書面の交付を義務づけています(第17条)。しかし、連帯保証人に対して、意思確認や詳しい説明をせずに限度額まで何度でも債務を積み増しできる「根保証」契約をさせています。例えば、300万円の保証人になったつもりなのに「1000万円を払え」などというように、保証人をまきこんでのトラブルの大きな原因になっています。
     また、保証人がいない借り手同士をブローカーが介在して「お見合い」をさせ、双方を互いに保証人に仕立てて返済能力を超える融資をおこなうなどの、悪質巧妙な手口も重ねています。

三、いまただちに必要な四つの緊急対策

 私たちは、運動の到達点への確信を基礎に、これ以上新たな被害者を出さないための法規制強化を含めた抜本的な緊急対策を提案します。

  1. 政府はただちに悪質貸金業者に対して、営業停止などの処分をおこなうこと
     日栄、商工ファンドなどの違法行為は明らかです。現行の貸金業規制法は、政府に報告徴収、立ち入り検査、業務改善命令、登録の取消しなどの権限を与え、違法金利には刑罰を課せるようにしています。政府が現行法でただちに営業停止を含めた処分をおこなうことは当然です。
     被害者などが日栄などの違法な行為への規制をはたらきかけても、「相手がその事実はないといっている」などと、長い間、違法行為を野放しにしてきた当局の責任は重大です。
  2. 貸金業規制の強化、金利の引下げ等、緊急な法改正を
    1. 貸金業規制法を改正し、登録制を許可制に
       現行の貸金業者の登録制を許可制にし、経営内容等の情報公開を義務づけ、違法行為に対する罰則を強化することが必要です。
       そして、消費者金融(サラ金)を含む過剰貸付けの規制を強化するとともに、「システム金融」という違法なヤミ金融業者を厳しく取り締まるなど、行政による指導と監督が機敏にできる体制をつくることです。
    2. ただちに金利の引下げを
       出資法の制限利率を早急に引き下げ、せめて利息制限法の制限利率に一致させるよう、法改正が必要です。
       現在の銀行貸付金利は平均2.127%(1999年8月)で、利息制限法制定当時の銀行貸付金利年平均9.0%(1954年)よりも4分の1以下に引き下がっていることからも、金利引き下げは当然です。
     また、関連諸法の、賠償額・遅延損害金を金利の2倍まで認めている条文や、「任意」であれば高金利も合法とする条文も廃止すべきです。
      出資法はいわゆる「日掛け金融業者」には特例を設けて、年109.8%の金利を認めています。この特例の廃止も当然です。
      国際的に見ても、現在のアメリカの消費者ローンの金利は年15%から18%位で、高くても年20%以下です。また、ドイツでは日本のようなサラ金は存在せず、銀行が消費者ローンをおこなっており、年10%から11%位になっています。
      日栄、商工ファンドは年30%から40%、サラ金大手の平均金利年26.36%(98年)など、日本の商工ローンの高金利はあまりにも異常です。
  3. 銀行は高利金融業者への融資を中止せよ
     「商工ローン」被害が全国におよび、深刻な社会問題となった大きな原因のひとつは、銀行の貸し渋りと高利貸金業者を通じての悪質な「う回融資」があります。都市銀行、信託銀行などの大銀行は「貸し渋り対策のため」と公的資金を受け取る一方で、中小業者への貸し渋りはますますつよめています。にもかかわらず公的資金を受け取った大銀行だけで、日栄に920億円、商工ファンドに340億円も貸出金残高を残しています。大銀行は日栄などの悪徳商法の片棒を担ぐ融資をただちに中止すべきです。
  4. 中小企業金融安定化特別保証制度の延長と、緊急貸付制度の創設を
     今日の長期不況に有効な手立てを打てず、銀行の貸し渋りを野放しにする政府の責任は重大です。商工ローンによる犠牲者は自民党政府の悪政の犠牲者です。
     高利金融業者が「繁栄」する社会は、ゆがんだ政治の反映です。政府は銀行の貸し渋りをやめさせ、中小業者が必要とする融資がうけられるようにすべきです。
     そのためにも、無担保・無保証人融資をはじめとした制度融資の積極的な広報をすすめることが必要です。中小企業金融安定化特別保証制度を2000年4月以降も継続実施するとともに貸付期間と据置き期間の長期化をはかり、国民生活金融公庫の貸し渋り対策融資の抜本的改善をおこなうこと、また、自治体と地域金融機関の共同で、迅速・簡易な手続きで資金を融資する制度・体制が緊急に求められます。

四、当面の被害の救済のために

 商工ローン被害の根絶をはかる対策とともに、現在60万人といわれる被害者の救済をはかることも緊急の課題です。

  1. 利息制限法にもとづく金利で解決を速やかに
     任意整理は「約定」通りの返済が困難な借り手と貸し手の話し合いによる解決方法で、一括弁済と長期分割弁済の返済方法があります。長期分割返済の場合、利息制限法による残元本の確定と、遅延損害金や将来利息のカットが前提条件です。しかし、貸金業者によっては将来利息の強要など妨害行為があります。任意整理がスムーズに進むように行政が役割を発揮すべきです。
     また、行政は借主の要求に応じた繰上げ返済への妨害行為を規制することが必要です。
  2. 連帯保証人への救済措置を
     保証の意思確認や詳しい説明をしない偽りの保証債務の押しつけ、違法な取立てなど貸金業規制法違反が明確な場合、保証契約を無効にし連帯保証人の救済措置をはかること。
     また、連帯保証人に対する一括返済の強制をやめさせるよう、行政の強力な指導が必要です。
  3. 高利商工ローン業者の違法性が認定された場合の営業停止処分、担保手形の返還措置を
     貸し手側の違法行為の認定と処分にともなって、被害を受けた借り手側に手形の返還等の救済措置をとらせることが求められます。
  4. 高利商工ロ−ンの低利融資への借り換えを実現すること
     高利貸金業者の責任追及とあわせて、違法金利の速やかな減額をはかり、任意整理で残元本を一括返済する場合の資金を、制度融資はもちろん銀行融資でも積極的に認めることが必要です。
  5. 行政による苦情相談体制を緊急に確立し、問題解決への適切な指導を
     商工ローン被害や多重債務問題は、個人的解決には限界があります。いまこそ、政府・自治体は「困っている住民を救済する」立場から、住民が健全な社会生活を営めるように、相談体制を緊急に確立し、広く住民に知らせることが重要です。そして、実態の把握とともに解決に向けた適切な指導をおこなうことが求められます。

五、求められるマスコミの広告の自主規制

 日栄がマスコミを通じての宣伝で、「暗い・恐い街金業者」の実態を巧妙に隠し、甘いイメージ広告を氾濫させていることも、被害者の増加を招いた一因になっています。日栄はテレビコマーシャルのスポンサーであることを売り込み、言葉巧みに融資の勧誘をはかってきただけに、テレビコマーシャルを無批判に流している民放の責任は重大です。
 (社)日本民間放送連盟は「放送倫理基本綱領」及び「放送基準」(広告の責任、広告の取扱い)を、日本新聞協会は「新聞広告倫理綱領」及び「新聞広告掲載基準」を定め、ともに「真実を伝え、視聴者に利益をもたらすものでなければならない」と広告の自主規制を定めています。マスコミ各社がただちに自主規制にもとづき日栄などの広告を中止するよう求めます。
 同時に、高利商工ローンやサラ金の被害実態の公正な報道を求めます。

六、むすび

 商工ロ−ン問題への国民の関心が高まり、その違法な融資、取立ての実態が明るみに出ることによって、こうした貸金業者への規制強化が国会でも取り上げる動きがつよまり、一部のマスコミでは日栄のコマ−シャルを断るなどの変化が生まれています。
 国民の世論と運動が、政治を動かしはじめたのです。
 私たちは、商工ロ−ンへの法規制を強化し、悪徳商法をやめさせる運動をいっそう強めるとともに、この問題を根絶する根本的な問題である不況打開、金融機関の貸し渋りをなくすためのとりくみをつよめることが重要であると考えます。
 この「商工ロ−ン問題解決への緊急提案」が、商工ロ−ン被害者の救済と法規制強化の運動を推進する素材として活用されるとともに、行政機関をはじめ関係方面での検討の素材として
生かされることを切に願うものです。

 
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