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方針・決議
 

【談話】

「税制改正大綱」に抗議し撤回を求める

2017年12月22日
全国商工団体連合会 事務局長 岡崎民人

 安倍自公政権は12月22日、2018年度「税制改正大綱」を閣議決定した。消費税率10%への引き上げを「確実に実施」するとし、「所得税改革」で控除を圧縮させるなど、庶民増税の強化を狙う税制の改変を許すわけにはいかない。

 見過ごすことのできない問題の第1は、消費税率の引き上げと同時に、「低所得者への配慮のための軽減税率制度」を明記し、その「財源を確保する」ために、所得税控除の改悪や新たな税制によって賄おうとしていることである。食料品など一部の品目を現行の税率8%に据え置いたとしても、新たに4兆4000億円の負担が国民にのしかかるもので、「軽減」の名で国民を欺くことも許されない。同時に導入されるインボイス制度は中小業者にとって事務負担が増えるだけではなく、インボイスを発行できない全国500万もの免税事業者が取引から排除されることは大問題である。
 そもそも消費税は、低所得者ほど負担が重く不公平な最悪の大衆課税であり、「応能負担」「生活費非課税」というあるべき税制の原則からすれば「増税中止・税率引き下げ」にこそ道理がある。

 第2は、基礎控除や給与所得控除などを改定する「所得税改革」は、これまでの憲法理念に基づいた「生活費非課税」や「応能負担」の原則を破壊する危険を内包していることである。
 各種所得控除は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(憲法第25条)を保障するために設けられたものである。とりわけ基礎控除は、「1人の国民が1年を通して生きていくために必要な生活費には課税しない」という大切な意味をもっている。現行の38万円では生活できないことは明らかであり、それが48万円に増額されたところで、現在の最低生活の水準を考えてみても、あまりにも低すぎる。しかも、所得2500万円を超える個人については基礎控除を適用しないとしたことは、本来の控除の在り方を覆すと同時に、基礎控除が適用されない納税者の拡大を招きかねない。
 また、給与所得控除を一律に10万円引き下げたことも重大である。給与所得控除は、勤務のための必要経費と言われるが、本来、労働力維持のための費用として設けられたものである。5年にわたる安倍政権の失政により、労働者の実質賃金は年間10万円も低下しており、給与所得控除の一律引き下げは、勤労者にさらなる苦痛を与えるものである。給与所得控除を「サラリーマンの必要経費」と言いかえることによって、さらなる控除の引き下げが行われかねない。
 所得控除を見直すのであれば、憲法に則った「応能負担」「生活費非課税」の原則を実現するため、基礎控除などの人的控除額を少なくとも生活保護基準の水準にまで引き上げるべきである。

 第3に、少子高齢化の克服として「『生産性革命』と『人づくり革命』を断行する」としているが、その実態は「賃上げ」「設備投資」を重点とした一握りの大企業への減税策にほかならない。「7割が赤字」という中小企業には何の恩恵も与えない一方で、大企業を優遇する姿勢が露骨に示されている。
 大企業は、この間の法人税減税や研究開発減税など、2013年以降の5年間で4兆円もの減税の恩恵を受けながら、400兆円を超える内部留保をため込んでいる。この巨額の内部留保の一部を取り崩すだけでも十分な賃上げは可能であり、「賃上げ」を口実にさらなる減税を行うことに道理はない。
 苦しい経営と後継者不足により、中小企業の廃業が増えており、大廃業時代を迎えるとの警鐘が鳴らされている今日、法人税も能力に応じて負担する抜本的な改革をめざすべきである。

 第4に、「取りやすいところから取る」という姿勢を強めていることである。「国際観光旅客税(仮称)」の創設や「たばこ税」の増税など、間接税によってモノやサービスを消費するたびに税金をむしり取り、「森林環境税」のように住民税に上乗せして、大金持ちも低所得者も同額の税金を徴収するなど不公平の極みであり、堕落した政治の実態が表れている。「高額所得者に負担を求める」というのなら、所得税の最高税率を引き上げ、総合累進課税を強化すべきである。

 平和と福祉を重視する日本国憲法により、「納税の義務」が規定されている。税金は国民が平和に生存するために使われなければならない。公平・公正な税制度の確立に逆行する「大綱」は撤回すべきであり、閣議決定した政府に対して厳重に抗議するものである。
 大綱が、住民税の特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)への個人番号記載について、書面で送付する場合は、「当面、マイナンバーの記載を行わない」(2018年度分以後)としたことは当然である。この間、民商・全商連など広範な市民が不記載を求めてたたかい、対応を改めさせてきた。このことを確信にし、全商連「納税者の権利宣言」(第5次案)で示したあるべき税制・税務行政の実現に全力をあげる決意を表明する。

   
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