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【談話】

与党「税制改正大綱」に抗議し撤回を求める

2015年12月19日
全国商工団体連合会 事務局長 岡崎民人

 自民・公明両党は12月16日、2016年度「税制改正大綱」を決定した。その基本的な考え方は、「経済の『好循環』を確実なもの」にし、「少子高齢化に歯止めをかけ」、「安心につながる社会保障を実現する」ものだとしている。しかし、その中心的特徴は、「『稼ぐ力』のある企業等税負担を軽減する」とあからさまに主張するように、大企業減税を強力に推進し、その財源として、中小企業への課税を強化し、収益力のない企業を市場から退場させようとするものである。また、女性の就労を強引に推し進めるために所得控除を見直し、消費税率を10%に引き上げながら社会保障費は削減するという庶民・弱者いじめの税制改革となっている。

 具体的問題点の第1は、2017年4月からの消費税率10%への引き上げを「確実に実施する」とし、増税と同時に「軽減税率」を導入することを決めたことである。
 これは、食料品など一部の品目を現行の8%に据え置くというもので、あらたに4兆4000億円の負担を国民に求めながら「軽減」をうたうことは国民を欺く行為である。また、2021年から「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」の導入を決定したが、インボイスは中小業者にとって事務負担が増えるだけでなく、複数税率に対応するための新たな設備投資や人件費などの経費増も強要されることになる。ましてや、消費税を転嫁できずに「損税」となっている中小業者は6割にものぼり、「益税」を理由としたインボイス導入には道理がない。
 さらに看過できないのは、インボイスに対応できない全国500万と推計される免税事業者が取引から排除され、廃業へと追いやられることは、日本経済にとっても大きな損失となる。そもそも消費税は、低所得者ほど負担が重く不公平な最悪の大衆課税であり、生活費非課税、応能負担というあるべき税制の原則からすれば「増税中止・税率引き下げ」にこそ道理がある。
 「社会保障と税の一体改革」を標榜するが、消費税8%導入後の増収分8.2兆円のうち、社会保障の「充実」につかわれたのは、たった16%の1兆3500億円であった。「消費税率の引上げ分は全額、社会保障の充実と安定に使われます」という政府の言い分はでたらめであり、消費税増税では社会保障が良くならないことは、これまでの事実が証明している。真の社会保障の充実は、大型公共事業や軍事費を削減し、不公平な税制を見直すことではかるべきである。

 第2は、「大綱」は現行32.11%の法人実効税率を2016年度に29.97%、18年度には29.74%まで下げるとした。15年度の税制改正大綱では、20%台は「今後数年で」としていたものを超前倒しで実現させたものである。
 一方で大企業減税による税収減の穴埋めとして、外形標準課税拡大などの増税策が組み込まれ、赤字や利益の少ない中小企業などに負担を押し付けようとしている。大綱は「収益力拡大に向けた前向きな投資や、継続的・積極的に賃上げが可能な体質への転換を促す」と、その理由を主張するが、大企業は安倍政権発足前の12年度に比べ、14年度までに経常利益16.1兆円、内部留保は49.9兆円も増やしており、現在約300兆円もため込んでいる。法人税減税の必要など全くなく、巨額の内部留保の一部でも活用をすれば、賃上げは十分可能である。

 第3に、「人的控除等の見直しを行う中で、働きたい女性が就業調整を行うことを意識しなくて済むような仕組みを構築する」とし、配偶者控除や扶養控除、基礎控除など所得課税の大幅な改悪を狙っていることである。女性の社会進出が進まないのは、保育園の不足をはじめ働きたくても働く環境整備が整っていないからである。大綱は、「高齢者も若者も、女性も男性も、難病や障害を抱える人も、誰もがチャンスを保障され、自己の能力を最大限に発揮することのできる『一億総活躍社会』を創り上げていく必要がある」と安倍政権の策動に同調するが、これは弱者・高齢者であっても就労や納税を強いる社会の実現をめざすものであり、生存権や基本的人権をうたう日本国憲法の精神と真っ向から対立するものである。

 第4に、徴収強化を狙ってクレジットカード納付制度の創設を明記していることである。地方税分野では、すでにこの制度を実施している自治体もあるが、@納税緩和措置が適用されない、A手数料や分割納付で利息が発生し負担増となる、B徴収吏員ではない民間が徴収することで情報が漏えいし、プライバシー保護に問題が生じるなどの問題点が指摘されている。
 租税法律主義を規定する日本国憲法は、税徴収においても「納税者の権利」を要請しており、たとえ税金滞納者であっても生存権は保障されるべきである。
 税制改正は、庶民・中小業者への課税強化ではなく、憲法に則った「応能負担原則」「生活費非課税」を貫き、大企業・富裕層への適正な課税をはじめとした公平で民主的な方向ですすめるべきである。
 「大綱」は、循環型経済の実現にも逆行するものであり、私たちはこれを決定した自民・公明両党に対して厳重に抗議し、撤回を求めるものである。

   
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