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  トップページ > 業種のページ > 匠の技あり > 全国商工新聞 第2947号 10月18日付
 
業種 匠の技あり
 

伝統生かす新たな視点=江戸漆器

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写真上:ビアカップに上塗りする角さん。塗り加減で微妙な違いが出ます
写真下:陶器のビアカップ。自然の木の葉を模様にしました

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角さんが作ったビアカップなど。素朴で力強い質感が特徴です

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下塗りの時に模様をつけます。神経を一番集中させます

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展示会でビアカップの説明をする角さん

 「角漆工」の看板を掲げて30年。東京・荒川民主商工会(民商)の角光男さんが作る江戸漆器は、落ちついた茶色や緑、黄土色をベースにした色合いが素朴さを引き出しています。質感も力強く、「漆器は道具」ということに徹してきました。「ほかの職人とは違う漆器を作りたかった」と胸を張る角さんの工房を訪ねました。

 素早い手つきで、陶器のビアカップに上塗りをする角さん。「これでビールを飲むとまろやかだよ。漆は抗菌作用があり、土の香りを封じ込めて味を引きたて、内側の凹凸が泡をクリーム状にしてくれる。ビールがおいしくなったと言われるのが一番の喜び」と顔をほころばせます。

すべての作業を一人でこなして
 一つの漆器が出来上がるまでは下塗り、中塗り、上塗り、研ぎ、模様入れや金粉、銀粉などを施すなどの作業があります。漆器産地の多くは分業によって成り立っていますが、角さんは、すべての作業を一人でこなしています。

技術を継承し自由な発想で
 伝統的技術を継承しながら、自由な発想で独自の塗りや模様をつけ、二つと同じものがない変化に富んだ漆器を生み出してきました。陶器のビアカップもその一つ。漆を塗ったらどうなるか試してみると、意外と面白い仕上がりに。友人にプレゼントしているうちに「何個か作って」と言われ、販売するようになりました。今では、一番の人気商品です。
 角さんは高校1年の冬、初めて漆器と出合いました。「塗師職人の義兄の影響を受け、職人になろうと決めた。ほら、左手の小指と薬指がないでしょう。2歳半のときに農機具の歯車に挟まれてね。ほかの職業も考えたけど、指のことで就職がだめになるのが嫌だった。母親は職人になっても苦労すると泣いて反対したけど、気持ちは変わらなかった」と言います。

売れない時期もぐっとこらえて
 高校卒業と同時に義兄に弟子入りし、15年間修業して34歳のときに独立。希望に胸を膨らませましたが、厳しい現実に直面します。プラスチック製の器が大量に出回るようになったころで、漆器を作っても売れない時期が続きました。日本料理の道具問屋から「ダイレクトメールで販売してみないか」との話があったのはそんなとき。それでも「必ず、単価をたたかれ、つぶされる」と誘いを振り切りました。「そのとき、決めたんだよ。『おかゆをすすってでも自分の道を見つける』って。その決断があったから、今があるんじゃないかな」。
 独立から3年後、知り合いを通じてオランダで実演する仕事に恵まれ、さらにその4年後、百貨店の実演販売の話が舞い込んできました。今もその仕事が続いています。
 「僕はどんな漆器が求められているのか、お客さんと話をし、お客さんが欲しいと思う漆器を作ってきた。それが強み」と話します。その技術は高く評価され、99年に荒川区登録無形文化財保持者に認定されました。

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 「匠の技あり」-。ものづくりを支え、精巧な製品や加工品を生み出す中小業者や職人の技術・技能をシリーズで紹介します。


「角漆工」
 〒116-0011 荒川区西尾久4の6の10 TEL03―3893―0839、ファクス03―3893―0489
▽経歴
 1947年、福井県武生市に生まれる。1966年、東京荒川区の加藤敏朗氏に師事。住み込みで修業1981年に独立開業。1984年に「ジャパンインロッテルダム(オランダ)」に出展し、実演を行う。1988年、百貨店職人展などに出店、実演販売を行う。1999年、荒川区登録無形文化財保持者に認定される。
   
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