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  トップページ > 業種のページ > IT・サービス > 全国商工新聞 第3198号1月11日付
 
わが業界・地域の抱負と課題
 

家族みんなの真心こめて 丁寧な仕事、次代に引き継ぎ=千葉・鎌ヶ谷民商

クリーンショップタナカ=田中正行さん

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笑顔を絶やさず商売に励む田中さん一家(右から正行さん、彩子さん、真澄さん、幸江さん)

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コテを使ってワイシャツを仕上げる真澄さん(手前)。正行さんが大切にしてきた仕事を受け継いでいます。

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店で接客をする幸江さん(手前)と彩子さん。お客との対話を大切にしています

地域と業界の発展めざす
 千葉県鎌ケ谷市内にある昔ながらのアイロンコテを使って手仕上げするクリーニング店「クリーンショップタナカ」。店主の田中正行さんは鎌ケ谷民主商工会(民商)の会長で、妻・幸江さんも婦人部長を務めています。開業して45年、貫いてきたのはお客さんの声を大切にし、手を抜かずに丁寧な仕事に徹すること。その信念は次男・真澄さんに受け継がれ、家族で力を合わせて商売に励んでいます。

大切な衣類手仕上げで
 午前8時、クリーンショップタナカの1日が始まります。真澄さんが車を走らせ、宅配サービスを利用する個人宅や病院、会社などを回って衣類を預かってきます。
 常連客のNさんは「値段が安いクリーニング店に出したことがあったけど、田中さんの店は仕上がりが違うのよ。特にワイシャツの袖口の仕上げは抜群」と信頼を寄せています。
 預かってきた衣類は分類し、ワイシャツなどは洗剤に合わせた温度で水洗いし、お客さんからは「白いワイシャツはいつまでも白さが変わらず、色物は色が映えてくる」と評判です。ワイシャツをオーダーで作っているお客さんは「デパートの人がカフスを取り替えるとき、このYシャツは白さが変わらない。クリーニング屋さんはどうやって洗っているんだろうって言ってたよ」と話してくれました。
 のり付けは生のりだけでなく、煮立てて微妙な温度調整をしてのりの硬さを調整。ドライクリーニングは時間をかけて乾かしドライ溶剤を飛ばすことで臭いが残らないように工夫します。「あきらめていた古い染みが消えた」と驚かれる染み抜き技術もうりの一つ。大きな赤ワインの染みを作ったお客さんには「白いワンピースがきれいになった」と喜ばれました。
 「大手は手間がかかるから面倒なことはやらない。うちはお客さんの生の声を聞きながら、手間暇かけて仕上げるのでクレームはほとんどないね。丁寧な対応こそ個店の強み」と正行さんは胸を張ります。
 他店との一番の違いはコテを使った手仕上げ。真澄さんの妻・彩子さんがワイシャツの身ごろをプレスにかけ、真澄さんが6キロ以上の重さがあるコテを滑らせて仕上げます。「今はどの店もスチームアイロンが主流だけど、このコテを使うとワイシャツの襟やそでのしわもなくなり、立体的に仕上げることができる。妥協しないおやじの仕事を大切にしたい」と語ります。

困りごとの相談に乗り
 鎌ケ谷市内には、最盛期は27店舗ほどのクリーンニング店がありました。しかし、80年代に入って大型店の進出や消費税導入などの影響で個人のクリーニング店は激減。正行さんは「業界や地域が活性化しなければ、個店はつぶれる」と民商運動に奮闘してきました。
 同業組合や商工会の会議では「大変なのは自助努力が足りないから」との言葉が強調されました。正行さんは「自助努力だけでは駄目。知恵を出し合ってみんなの力で地域や業界を発展させなければ」と繰り返し発言。初めは正行さんを排除する動きがありましたが、会議が終わると正行さんのもとに「ちょっと相談があるんだけど」と電話がかかってくるようになりました。「債権回収会社に送られた元商工会役員の債権を知恵を絞って取り戻したり、融資のアドバイスをしたり…。一緒に解決する中で商工新聞を読んでもらっている。いい新聞だからってやめないんだよ」と笑います。
 商売に真剣に向き合いながら困っている人に心を寄せる。そんな正行さんの姿を見てきた真澄さんは「両親が地域で頑張ってきたクリーニング店を継ごう」と決意しました。
 しかし、時代は90年代後半。バブル経済崩壊の波が押し寄せ、そこに消費税5%への引き上げが追い打ちをかけました。売り上げ減少に歯止めがかからず、全盛期に130人いた宅配サービスの利用者は半減。幸江さんは宅配便配達のアルバイトに出るようになりました。
 新規の顧客を獲得するため、真澄さんは営業に奔走しましたが、ほとんどが門前払い。それでも両親と自分たち夫婦、3人の子どもたち7人の生活を守るため懸命に働きました。

仲間の存在商売の糧に
 5年前、経営が好転せずつらそうにしている真澄さんの姿を見て正行さんは思わず「お前、もう店を閉めようか」と声をかけました。
 「おやじ、うちのクリーニングが気に入ってくれているお客さんが一人でもいる限り店を続けよう。家族7人が食っていければいいじゃん」
 その言葉に正行さんは目頭を熱くしました。
 今も厳しい状況に変わりはありませんが、ホームページを見た新規のお客さんも増え、「もっと早く田中さんの店に出会っていれば良かった」とうれしい反応も。地域から引っ越したお客さんからは「田中さんのところじゃないときれいにならない」と段ボールに詰めた衣類が宅配便で送られてきます。
 正行さんは今、要請されて鎌ケ谷市商店会連合会の副会長や商工会の理事も務めています。会議が行き詰まると「田中さん、何か発言してよ」と催促され、業界や地域の人たちから頼りにされています。
 幸江さんも民商婦人部の活動に全力です。「仲間がいたから私たちも困難を乗り越えることができた。私は民商が大好き。だから大きくしなくちゃ」と熱く語ります。
 「困難を乗り越え、中小業者が地域に存在することに社会的意義がある」。民商活動と商売を重ね合わせてきた二人はそのことを胸に刻み、家族で力を合わせ新年をスタートさせました。

全国商工新聞(2016年1月11日付)

   
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