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  トップページ > 業種のページ > 製造・小売 > 全国商工新聞 第2772号 3月5日付
業種 製造・小売
 
「構内下請け」の技能守れ
造船支える下請け業者

兵庫民商 「偽装請負」問題で対策会議
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 規制緩和や構造改革など国の悪政がすすめられるなか、大企業が労働者を低賃金で働かせる「偽装請負」が社会問題になっています。その「偽装請負」是正を盾に、今まで、地域経済や雇用を支えてきた構内請負業者への締めつけが強化されています。不安が広がるとともに、「構内下請け業者の高い技術をつぶしていいのか」の怒りの声が上がっています。

 兵庫県には数社の造船業など大手企業がひしめいています。地域によっては企業城下町も生まれ、労働者と構内下請け業者が密接につながり、ともにものづくりの技術を磨きながら、大企業の繁栄も支えてきました。
 「偽装請負」の批判にさらされる大企業は昨年末から、こうした構内下請け業者に「請負業務を派遣業務に切り替える」などの通達文章を送りつけており、関連業者を多く抱える兵庫民主商工会(民商)には会内外からの相談が相次いでいます。
 造船現場では、構内下請け業者が部品などを製造・納品する請負の他に、工員と構内下請け業者が一緒になって部品を組み立てながら、製品を作る仕事がありますが、後者が「偽装請負」にあたるというものです。
 「偽装請負」とは、人材会社から事実上、労働者の派遣を受けているのに、「請負」と偽って労働者の使用に伴うさまざまな責任を免れようとする行為。政府は04年3月、「労働者派遣法」を改悪し、製造業に労働者を派遣できるようにしたことから「偽装請負」が社会的な問題となり、企業側が「適正化」の名の下に動き出しているのです。

 構内に入れない2次下請け業者
 しかし、「われわれの仕事が『偽装請負』と言えるのか。今まで仕事には自信をもって、企業とともに、歩んできたのに」などの声が構内下請け業者から上がり、兵庫民商は2月15日、第2回対策会議を開き、こうした製造現場の実態とかけはなれた「派遣法」改悪に対して、話し合いました。
 「ほんとやったら、政府に怒鳴り込みしたいぐらいや」。今回、苦渋の選択を迫られている高橋隆二さん(仮名)は造船会社の1次下請けで、従業員のほか、2次、3次の下請け業者を抱えています。高橋さんは「労働者派遣事業」を取得し、親企業と派遣業務を契約していることから、従業員を構内に派遣することは可能ですが、問題は2次、3次の下請け業者。すでに、親企業からは「2次以下の下請けは構内に入れないでほしい」と言われ、「2次下請け以降の社員を受け入れることは『違法』、派遣する場合は貴社の社員で」との文書も出回っています。
 これでは「一般労働者派遣事業」を取得したとしても、親企業の都合で従業員以外を派遣することができません。  「これまで一緒にやってきた職人を簡単には切れない。かといって従業員にすれば、健康保険料や厚生年金保険料などの事業主負担がのしかかり、とてもやっていけない」と訴えます。

 労働者も業者もたたかい一緒に
 親企業には高橋さんのような1次下請けが40〜50社はあると言われています。負担に絶えられず、倒産に追い込まれる可能性もあり、「社員や自分の給料も引き下げなければならない。どこまで持つか」「体力があるところと、ないところで、分断され、切り捨てられる」と話します。
 2次下請けの加藤和夫さん(仮名)は、3次下請けを抱えています。「特定労働者派遣事業」の届け出をして、3次の下請け業者を従業員にしようとしていますが、届け出には社会保険や厚生年金の加入が義務付けられ、「保険料が高くて、手取りが減る」「今さら年金をかけても、掛け損」と拒む職人もいます。
 「構内下請け業者がいなくては船はできないのに、なぜ、われわれにしわ寄せがくるのか」
 「技術を持った団塊の世代の労働者は再雇用の道があるが、あまりにも賃金が安くて残らないという話を聞いた。労働者も下請け業者も一緒にたたかわなアカンわ」との声も聞こえてきます。
 民商では、さらに関係業者の要求をまとめ県や神戸市、兵庫労働局などと交渉も予定しています。

 (解説)政府は04年3月、「労働者派遣法」を改悪し、製造業への派遣を可能にしました。労働者を派遣をする場合、「一般」か「特定」の労働者派遣事業の届け出、厚生労働大臣の許可が必要です。「一般」は労働者を登録させ、派遣するときに労働者と雇用関係を結ぶもの。1000万円の資産が必要など財産要件があります。「特定」は登録制ではなく、常用の社員を派遣します。下請け業者も従業員を派遣する場合、同様の届け出をして企業との派遣契約が必要になります。  しかし、労働者の「偽装請負」と構内下請け業者の「請負」が一緒に論じられることに疑問の声も上がっています。  もともと、製造業(とりわけ構内で大規模な工作物をつくる造船業など)や建設業の現場は一つの製品をラインで仕上げる家電や自動車と違い、注文生産が主流で、工期、作業規模とも一つひとつ異なり、構内下請け業者の専門性や裁量が生かされ、作業連携が求められるという仕事です。  注文に応じて、チームを効率的に編成できる下請け制度は、その中で形成された有効なものづくりのシステムです。これは「偽装請負」という言葉で片づくものでなく、地域の構内下請け業者と大企業の請負関係として正しく発展させる必要があります。
 
 
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