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  トップページ > 業種のページ > 建設土木 > 全国商工新聞 第2856号 11月24日付
 
業種 建設土木
 
改正建築士法今月末施行 構造設計で専門性と責任を強化
合格者少なく、設計料など未知数


 地震や強風に襲われても倒れない建築物。その骨組みを設計・計算するのが構造にかかわる技術者です。改正建築士法(11月28日に施行)では、専門性を強化した「構造設計1級建築士」制度を創設。しかし、公共施設の耐震設計入札では、建築士が足りず、入札を辞退する事態も出ています。

 建築士法改正のきっかけは05年に発覚した耐震偽装事件です。
 創設される構造設計1級建築士は、構造にかかわる専門的な建築士による設計を行うことを目的とし、1級建築士の資格を得て、5年間の実務経験を積んだ上で、試験に合格して得られる資格です。

構造設計1級建築士資格試験
 改正前の建築士法では、1級建築士は、設計の三つの業務(意匠、構造、設備)の資格をすべて備えたものとして運用されてきました。「しかし、建築物が高度化、複雑化。業務も専門分化し一人の建築士では対応できなくなっていた。58年前に成立した建築士法の制度疲労ですよ」と社団法人日本建築構造技術者協会の木原硯美会長はいいます。
 改正建築士法では、これまで1級建築士であれば、誰でも記名・押印できた建築確認の申請を、一定規模以上の建築物(別項)については、自ら設計するか、そうでない場合も構造設計1級建築士が法適合性を確認し、記名・押印しなければならない、としました。専門性と同時に責任の強化をはかったのです。

人手不足が深刻構造計算の現場
 専門分化をはかり、国民の信頼を取り戻すはずの制度改革。しかし―。
 「現場では建築士不足によって、耐震診断などの入札で業者の辞退が相次いでいる。資格を持った医者が足りなくなっているのと同じです」と、埼玉県・川越市で構造を専門とする設計事務所を開く1級建築士の菊池大輔さんはいいます。
 1級建築士で設計実務を業としているのは約10万人。このうち構造業務に携わっているのは1万人。さらに、構造業務が専門ではない1級建築士や多くの無資格者が、アルバイトとして構造計算業務などを支えてきました。
 「制度改正によって、アルバイトの1級建築士や無資格者を締め出した。その結果、構造業務にかかわる建築士は相当数減少している」と、構造業務に携わって40年になる1級建築士の相原俊弘さんは指摘します。
 7月に行われた第1回の構造設計1級建築士の試験合格者は約6000人。「この中で地域の設計事務所で働ける建築士は1500人から2000人程度で、市町村の数(1738)より少ない」との指摘もあります。
 耐震化入札の不調と建築士不足を招いているもうひとつの理由が、低い落札価格です。
 耐震強化、耐震設計の落札価格は、阪神大震災直後などと比べると半額以下に下落。「もともと安い上に、意匠を中心とする総合設計事務所が構造業務の設計事務所に“丸投げ”するなど、構造業務の下請け化がある」と先の菊池さんは指摘します。

設計の丸投げや単価たたき横行
 建築士業界も建設業界と同様に、意匠を中心とする大手設計会社やゼネコンの設計部が構造業務を担当する設計事務所を下請け化。その結果、設計の丸投げや単価たたきが横行、構造技術者は、地位の低下や長時間労働、低賃金を強いられてきました。
 新建築家技術者集団幹事会議長の高橋偉之さんはいいます。
 「業務の専門化は評価できるが、それによって、構造の技術者の仕事が増え、仕事に見合う設計料になるのか。建築士の不足を解消し、安全で住みやすい家づくりのためにも、下請け構造的な建築士の業界にメスをいれることこそ求められているのではないか」

《別項》一定規模以上の建築物とは (1)木造建築物で高さが13メートルまたは軒の高さが9メートルを超えるもの(2)鉄骨造りの建築物で、地階を除く階数が4以上のもの(3)鉄筋コンクリート造りまたは鉄骨鉄筋コンクリート造りの建築物で、高さが20メートルを超えるものなど

   
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