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  トップページ > 地域のページ > まちづくり > 全国商工新聞 第2957号 1月10日付
 
地域 まちづくり
 

買い物難対策の「移動ショップ」 お年寄りに商品と笑顔=千葉・佐原

買い物難の地域に元気を

 千葉県北東部に位置する香取市山田区(旧山田町)。

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欲しい物を手に取りながら買い物する常連客に林さんはいつも話しかけています

山と田畑に囲まれた多くの里山が見られます。身近な商店が街から消え、車を持たないお年寄りたちが買い物に困っています。そんなお年寄りたちが心待ちにしているのが「移動ショップなかよし」。毎週火曜日、車に食料品を積んで街を駆け抜け、お年寄りたちを元気づけています。

 タン・タン・タン…。「移動ショップなかよし」のスピーカーから流れる軽快な音楽。車が到着すると「ただ今、こちらの地区を巡回中です。お買い物だけではなく、顔を見るだけでも結構ですのでお越し下さい」のアナウンスが流れると、シルバーカーを押しながらお年寄りたちが買い物にやって来ます。中には車が到着する前からベンチやシルバーカーに座って待っている人もいます。

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「なかよし」のメンバー。左から林さん、奈良さん、芦田さん、増田さん

手作り総菜など300種類以上
 「なかよし」のメンバーは4人の女性。林勝子さんをはじめ奈良律子さん、芦田富士世さん、増田和子さんがテーブルを組み立て、車から降ろした食料品を手際よく並べます。林さんは「ミニミニストア」を経営する千葉・佐原民主商工会(民商)の会員です。「Yショップ」を経営する芦田さんとともに食材を提供。奈良さんが開発した皮が自慢のかぼちゃまんじゅうをはじめ手作りの総菜やすし、弁当、おはぎ、朝摘みの新鮮な野菜、豆腐、茶菓子、乳製品など300種類以上を扱っています。大根1本50円、袋いっぱいのインゲンは100円と値段も格安です。
 「なかよし」は毎週火曜日午前9時半、米野井青年館など6カ所を午前中かけて回っています。
 一番にぎやかなのは「ミニミニストア山倉店」の跡地。いつも10人ほどの常連客がおしゃべりをしながら待っています。
 「ここに来るとみんなに会えるからよ。毎週来るのが、楽しみだ。周りに店はないし、車の運転はできないし、ここが唯一、買い物できる場所なんだ」。Jさんは大きな声で話します。

お年寄りの交流の場にも
 「買い物だけでなく、ここはお年寄りたちの交流の場になっているよ。待ってくれている人たちの笑顔を見ると私たちも心がウキウキする」と話す林さんは本当にうれしそうです。
 迎えに行くこともたびたびで、荷物がいっぱいのときは車で送っています。
 「なかよし」を始めたのは7年前。旧山田町が立ち上げた「商工業活性化ビジョン策定委員会」の中から生まれました。
 さまざまな立場のメンバーが活性化のための取り組みを検討。林さんや当時町議だった奈良さんもその一員でした。
 65歳以上の高齢化率が28%を超える中で、お年寄りたちが買い物に困っているという話を聞き、思いついたのが「移動ショップ」。買い物客も自分たちも仲良くなれるようにと「なかよし」と名をつけました。売り上げの中からガソリン代などの経費をまかなっています。
 心に響く数々の出来事がありました。常連客のおばあちゃんの姿が見えず、一緒に来るおばあちゃんに様子を聞くと体調を崩して寝ているとのこと。林さんがパンとプリンをもって差し入れに行くと、手を握り締めながら「よく来てくれたなあ。ありがとうよ。来週は元気になっていくからよ」と言ってくれました。
 風も凍りそうな寒い冬の日にも、2人のお年寄りが待ってくれていました。「二人の手を握るととても冷たくて、寒い中で長い時間待ってくれていたんだと思うと胸が熱くなって…」と林さん。
 総菜作りなどの準備に時間がかかり、食料品の上げ下ろしもかなりの重労働。しかも1回の売り上げは7、8万円ほどで、利益はほんのわずか。それでも「私たちを待ってくれている人がいる限り、『なかよし』を続ける」と林さんたちは心に決めています。
 あったかい気持ちと食料品を運びながら、「なかよし」は新年を迎えた街を走っています。

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