全商連トップページ
中小施策 税金 国保・年金 金融 経営 業種 地域 平和・民主 教育・文化 県連・民商 検索
 全商連とは活動方針・決議署名宣伝資料調査婦人部青年部共済会商工研究所発行案内入会申込リンク
  トップページ > 震災情報のページ > 全国商工新聞 第2973号 5月9日付
 
 

わがまちの復興へ―中小商工業に個人補償を

 東日本大震災から1カ月半。がれきに埋もれた街も復旧・復興に向けた動きが広がりを見せ始めています。住民本位の「宮古型リフォーム」を創設した岩手県宮古市を訪ねてみると…。

事業再開こそ活気と雇用の源

 死者・行方不明者が900人を超えた宮古市。田老、重茂などの沿岸地域は壊滅的な打撃を受けたものの、市の中心部を中心に復旧・復興作業が急ピッチで進んでいます。

Photo
いち早くがれきを撤去しようとチェーンソーでカットする宮古建設組合の組合員(宮古建設組合提供)

 建設業界一つに


管工業協会
北村順正支部長
 「中心部の被害の大半が浸水ですんだこともあるが、建設関連の業界がバラバラではなく一体的に作業をしているからですよ」と強調するのは県管工業協会宮古支部の北村順正支部長。
 震災から5日後の3月16日、県、市をはじめ建設協会、水道組合、大工組合、商工会議所など14団体が集まり「宮古地区災害復旧対策協議会」を結成しました。市内の建設関連団体が一同に集まったのは初めてのこと。重機調達や運搬支援、がれき撤去などの作業を業界ごとに分担しました。「毎日打ち合わせ、情報の共有化を図ってきたことも仕事を効率的に進める上で大きな力を発揮している」と北村支部長は言います。

宮古建設組合
鈴木勇平組合長
 全建総連に加盟する宮古建設組合(大工組合)は自衛隊支援を担当。「チェーンソー部隊」を組織し、がれきを手で運べる大きさにカット、自衛隊の遺体捜索を支援してきました。「延べ240人が参加しましてね。行政と業界団体が力を合わせて、『宮古の復興のために頑張ろう』と一つになっている。それがまた建設業者の仕事確保や雇用にもつながっている」と、鈴木勇平組合長は語ります。

Photo
次々と建設される仮設住宅(宮古市内)

 市も住宅を優先
 被災者に対する宮古市の対応にも「宮古型リフォーム」で培った「使い勝手のよさ」が貫かれています。
 そのひとつがり災証明の発行。1カ月かかる自治体もあるなかで、宮古市は即日発行(3面参照)で、仮設住宅への入居申込書も提出書類はA4判の紙1枚だけ。入居理由などを書き込む必要もなく、被災者の立場に立った「簡素化」が追求されています。
 「住宅の確保は最優先課題の一つですから」と住宅リフォーム助成制度を担当した滝澤肇建築住宅課長。災害救助法に基づく住宅の応急修理制度(1世帯当たり限度額52万円)にも、市の住宅リフォーム助成制度を活用し10万円の助成金の上乗せを決定。市営住宅の増設もすでに決めています。
 漁業、農業に対する国の支援も広がっています。農家の経営継続のため農水省は補正予算案に、10アール当たり3万5000円を盛り込むことを決めました。
 「ところが、商工業者への直接的な補助は何もないんですよ」と語気を強めるのは宮古商工会議所の廣田司朗専務理事。事業者個人が活用できるのは現行制度では融資だけ。「融資を受けても新たな借金が残る。今回の災害は阪神・淡路の数倍規模ですよ。過去の借金を消すか凍結すべき。そうでないと、事業者は立ち上がれない」と続けました。

Photo
急ピッチで進むガレキの撤去(宮古市田老地区)

 借金の棒引きを
 商工業者にも国は個人補償を―。この声は今、業種を超えて広がりつつあります。
 浸水の被害に遭いながら、電気復旧のため東北電力職員を受け入れてきた「宮古ホテル沢田屋」の澤田克司社長(宮古観光協会会長)も「借金の棒引きなどの思い切った措置が必要」と強調します。


県旅館同業組合
澤田克司理事長
 眺望を売り物にしてきた沿岸地域のリゾートホテルは「再興するにしても同じ場所でやるのかどうか、根本的な問題に直面している」のが実態。金融機関から「(危険なので)同じ場所に建てるなら融資できない」と言われたホテル経営者もいるといいます。「借金の棒引きは商工業者のエゴではありません。ホテルや旅館もあって街ができるのではないでしょうか」。県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長でもある澤田社長の思いです。
 商店街でも「従来の枠を超えた支援を」の声が広がっています。

 従来の枠超えて


末広町商店街
佐香英一理事長
 70店舗が加盟する末広町商店街振興組合では、店舗の大半が浸水。「程度の差はありますが、軒並み在庫商品や機械がやられた。建物自体は大丈夫に見えますが、再起できるかどうか、瀬戸際に立たされている」と、カメラショップを経営する同商店街理事長の佐香英一さんは言います。
 同商店街の「緊急アンケート調査」でも、設備資金や生活への支援を求める声が多数を占めました。
 「みんなゼロかマイナスからの出発。今の制度の枠内では展望さえ見えない。商店街や観光、サービス業があってこそ、街やにぎわいができ、雇用の場も広がる。私たちは、事業がスムーズに再開できるように商工業者にも直接的な支援をと願っているだけです」

全国商工新聞(2011年5月9日付)
  ページの先頭