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  トップページ > 税金のページ > 不公正税制 > 全国商工新聞 第2809号 12月3日付
税金 不公正税制
 
大企業上位10社で1兆円超の消費税環付金
トヨタ 2869億円
関東学院大学法科大学院教授 湖東京至さんが推算
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 「財界トップが消費税アップに積極的なのは、還付金(輸出戻し税)が増えることも大きな要因です。中小業者、国民から税金を吸い上げて、大企業だけに恩恵を与えるような消費税増税には断固反対」と語るのは関東学院大学法科大学院教授の湖東京至さん。同教授が発表した最新の「06年分 消費税還付金上位10社」(表1)によれば、10社の還付総額は1兆59億円。トヨタ自動車は昨年より204億円、10社合計でも85億円も増加するなど、不公平な消費税の実態が浮き彫りになっています。

消費者の負担が逆進的
 消費税にはいくつもの不公平があります。
  一つは消費者側から見た場合の不公平です。消費税は生活必需品を含むすべての物品・サービスに単一税率5%で課税します。そのため、所得の低い人びとに重く、所得の高い人びとに軽くなります。つまり国民の税負担率が逆進的になる不公平です。

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経済ジャーナリストの荻原博子さんも「釈然としない」とコメント。湖東教授の推算を紹介する週刊朝日11月9日号
事業者に不公平な税制
 二つ目は消費税の納税義務者・事業者の側から見た不公平です。消費税は価格への転嫁が法律で保証されていません。力の強い企業は100%価格に上乗せできますし、場合によっては下請けに消費税分をまけさせることができます。一方、中小事業者は十分に転嫁することができないばかりか親会社から単価の切り下げを迫られ、実質的に消費税分をかぶってしまいます。つまり消費税は弱肉強食、事業者間に不公平な税制なのです。
  とりわけ不公平なのが、輸出企業に対する消費税の還付制度です。輸出をした場合、外国の消費者から消費税をもらえないから、仕入先や下請けに払った(ということになっている)消費税分を輸出企業に還付するというわけです。
  消費税を実際に納税している事業者の方はお分かりでしょうが、消費税は単純に売上高に5%をかけた額を納めるわけではありません。消費税は、年間売上高に5%をかけた額から年間仕入高に5%をかけた額を引いて納めます(これを仕入税額控除方式といいます)。
  輸出戻し税はこの仕組みを悪用して、売上高に5%ではなくゼロ%をかけます。そのため仕入に入っている消費税分が常に還付されるわけです。(3面「知っ得」参照)
  ここで還付される額はトヨタなどの輸出企業が税務署に納めた額ではありません。税務署に納めたのは仕入先や下請けなどの子会社です。日本の商慣習では親会社に価格決定権があります。子会社が消費税分をまけさせられることもしばしばです。それをトヨタなど親会社だけが還付を受けているのです。一方は常に納税、一方は常に還付。これ以上の不公平があるでしょうか。
  また、外国への販売でなくても国内販売でも消費税をもらえない「非課税」の取引があります。例えば医療費や、アパートの家賃です。病院や診療所は薬の仕入に入ってる消費税分を負担しています。大家さんはアパートの建築費や修繕費に入っている消費税分を負担しています。しかし、その消費税を還付してもらうことはできません。還付があるのは輸出だけ。これも不公平です。
  ようするに、ヨーロッパで生まれた付加価値税=消費税は、巨大輸出企業を保護し優遇するためにつくられた税制なのです。

約22%が輸出大企業に還付
 最も新しい有価証券報告書をもとに、06年の各社の還付金を計算してみました。昨年より還付金が増えているのが特徴です(表1参照)。この還付金は、トヨタなどが本来納めなくてはならない国内販売分を差し引いた還付金額です。消費税の還付金は全体で約3兆円、消費税全体の税収のおよそ22%に上ります。
  もし、輸出戻し税制度をなくせば、3兆数千億円の税収を上げることができます。

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10の税務署が赤字
  全国で524ある税務署のうち、法人の消費税還付で赤字の税務署は10税務署あることが分かりました(表2)。そのほとんどが輸出大企業の本店所在地等がある所です。トヨタ自動車のある愛知・豊田税務署の総務課長・辰田綱彦氏に電話で取材しました。内容は以下のとおりです。

  記者 『週刊朝日(11月9日号)』‖右写真‖でも取り上げられているが、トヨタが2600億円(05年分)を超える消費税の還付を受けているとある。還付の実務はどうされているのか。
  総務課長 全国の税務署は特定の銀行と契約しているわけではない。納付税金は国税庁が管轄している日銀の代理店に納められ、還付も含めて税務署の管理部門が決済しているだけだ。だから税務署の口座が赤字になっているわけではない。
  記者 日銀の代理店とは何か。
  課長 調べないと分からない。
  記者 輸出戻し税のことは知っているか。
  課長 マスコミなどでも聞いている。輸出免税のことですね。納め過ぎの税金を戻すという。
  記者 実はお宅の税務署は全国の税務署のなかでも数少ない赤字の税務署なんです。知ってましたか。
  課長 ええ?そうなんですか。
  記者 中小業者や下請け業者が必死で納めた消費税をトヨタが輸出戻し税で、全部持っていってしまう。だから赤字。おかしいと思いませんか。
  課長 うーん。
  記者 価格競争力のある大企業が消費税分の価格を、下請けに買い叩くことだってできるでしょう?
  課長 基本取引、力関係が違うことは分かります。
  記者 買い叩いておいて輸出戻し税を受ける。だから豊田税務署は毎年赤字なんですよ。分かるでしょ。
  課長 事実なら事実として認めます。でも自動車税や社会にかかわる税金、経済効果も見なくちゃいけない。車社会でトヨタが果たしている役割は大きい。
 
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