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  トップページ > 全商連とは > 全商連付属・中小商工業研究所> 全国商工新聞 第2846号 9月15日付
 
中小商工業研究所
 

第8回夏期研究集会 温暖化問題への取り組みを探求
持続可能な社会づくりへ
中小業者の役割発揮こそ

 第8回夏期研究集会(主催・全国商工団体連合会付属中小商工業研究所)が8月30、31の両日、京都市内の京都大学で開かれ、民主商工会(民商)会員や研究者、労働者、自治体関係者など307人が参加。パネルディスカッションに続き、六つの分科会では「環境にやさしいものづくり」「持続可能な社会への税制・社会保障」「地域循環型の自治体施策」などのテーマについて活発な議論と交流をしました。研究集会が「環境問題」を正面から取り上げたのは初めて。ものづくり、まちづくり、ビジネスなどを持続可能性という視点でとらえ、中小業者の役割について探求しました。

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中小業者、学者・研究者らが集い、中小商工業のあり方を探求し交流した第8回夏期研究集会
 研究集会では、太田義郎運営委員長(全商連副会長)が「大量生産、大量消費の社会が大量のゴミをつくってきた。中小業者こそ、街の環境を守り無駄のない社会システムをつくるうえで大きな役割を発揮できる」と主催者あいさつ。
  パネルディスカッションでは二場邦彦・立命館大学名誉教授がコーディネーターを務め、「地球温暖化問題はまったなしの課題。中小業者の経営課題と位置づけ、第2創業的な視点から環境問題に取り組んでほしい」と問題提起。これを受け4人のパネリストが報告しました。
  京都大学の植田和弘教授は「温暖化防止問題は将来の問題ではない。今の行動が将来の世界を決めていく」と強調。温室効果ガスの削減で合意した「京都議定書」の意義や現状・課題にふれながら、「環境問題への取り組みは未来の世代から与えられた私たちの新しい仕事であり、そのためには開発か環境保護かの二者択一でなく、持続可能な社会の持続可能な経営という両方の視点が必要だ」と訴えました。
  NARUTA建築事務所の成田完二さんは、省エネルギーの基本である断熱一つとってみても、日本のアルミサッシの材料は断熱効果が弱く、エコの家を建てようとしてもその材料がない実態を紹介。(株)モートロンドライブの広瀬良行社長は、現在のガソリン車を廃棄せず、太陽光などの自然エネルギーを活用し電気自動車として再生している取り組みを報告。ジャパン・リサイクル・アソシエーションの藤田惇代表理事は「地球環境を守り、循環型社会を実現するためには、廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再資源化(リサイクル)の3Rが大事」だと強調しました。
  全体会でまとめを行った日本大学の永山利和教授は「新しいビジネス、産業社会のモデルをつくりあげよう。持続可能な社会を構築するため中小業者の役割を発揮してほしい」と結びました。

6分科会で交流

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大型店問題や商店街での環境の取り組みを交流した第1分科会
地域づくりと環境問題
持続可能な地域社会を模索

 「地域づくりと環境問題」では大型店出店や駅前の大型開発、コンビニの24時間営業などについて討論を深め、環境を守る地方自治体や商店街の活動を学び、持続可能な地域社会のあり方を模索しました。
  イオンの出店をやめさせた東京都八王子市では、八王子民商などの機敏な働きかけと共同の取り組みが力となったことが報告される一方で、大企業の工場跡地に建設された大型商業施設が生活環境を破壊している問題(広島)や自治体が中心市街地に大型店を集中させようとしている動きが強まっている問題(京都)が紹介されました。
  また市民、中小業者、農民、研究者が天ぷら油などの廃油からバイオ燃料の開発を研究するNPO「菜の花プロジェクト」を発足(大阪府八尾市)や、市民団体や民商がまちづくり研究会を発足させ、ごみや環境問題を土台にまちづくりの研究を発展(京都・東山区)させていることも出されました。
  京都大学の岡田知弘教授が岩手県紫波町の県産材を活用した木造建築物の推進、徳島県上勝町のごみゼロ宣言などの取り組みを、中央大学の八幡一秀教授が自転車タクシーやリヤカーを使った商店街の宅配などを紹介しました。
  龍谷大学の井上芳恵研究員が「日常的に中小業者の声を届けることが重要」とまとめました。

制度融資の動向と地域金融の課題
原油高対策融資での運動報告

 「制度融資の動向と地域金融の課題」では、原油高騰による被害救済を求める運動で「原油価格高騰対策等特別支援制度」を創設させた経験(京都)や、責任共有制度の導入により信用補完制度が後退させられている下、自治体の制度融資で損失補償制度を実現させたとりくみなどの報告が続きました。
  金融労連からは「健全性を審査する」と称して金融庁が形式的な数値基準を押し付けるため、中小業者への融資が難しくなっていると金融機関の実態を発言しました。
  中小業者・国民のための金融という視点がなくなり、投機マネー中心になっている背景を、助言者の静岡大学の鳥畑与一教授が指摘。駒澤大学の齊藤正教授は「地域金融の課題として、制度設計を中小業者のニーズにあったものにすることや事業承継を最優先に考えること、自治体への取り組みを強化する必要がある」とまとめました。

持続可能な税制・社会保障
制度拡充へ地域の共同が重要

 「持続可能な税制・社会保障」では、税制や社会保障が連続して改悪される下で、国民が主人公として尊重される税制・社会保障のあり方を討論しました。また、年金・国保など社会保険料の徴収強化の実態を出し合うとともに、地方税・国保料(税)の減免制度の拡充を求める条例づくりや地域での共同の重要性などを話し合いました。
  最低生活保障をめぐり、助言者の佛教大学の金沢誠一教授は生活保護基準が、国保の減免条例、就学援助や生活福祉資金など福祉制度の最低生活の指標として設けられていることを紹介。その基準の引き下げを許さないことが社会保障・生活保護制度の改悪阻止につながると指摘しました。
  京都市職労の南博之さんは、立場の違いなどを乗り越えて国保料引き下げを実現させた運動などを報告し、参加者からも自治体労働者との共同の必要性が語られました。
  助言者の富山泰一氏(不公平税制をただす会事務局長)は「政府は今後、消費税増税とセットで所得税の諸控除を縮小・廃止する方向で議論をしている。課税最低限や諸控除のあり方を含め、税制に対するビジョンを積極的に示す必要がある」と締めくくりました。

環境にやさしいものづくり
環境と経営学ぶポイント交流

 「環境にやさしいものづくり」では、地球環境と地域経済、経営をどう結びつけていくか積極的な意見交換をしました。
  淡路島で玉ネギの貯蔵・冷蔵をしていた山東冷蔵(株)の岡本耕一さんは、これまで焼却していた玉ネギの皮がもつ抗酸化作用などに着目。商品化の努力を行い「たまねぎ皮茶」を開発、マスコミにも取り上げられ、経営的にも成功していると報告。
  異業種グループHITで学んだ翌nKエンジニアリングの松永大さんは、カキ養殖で効果をあげたマイクロバブルに着目。幅広く使える「ループ流式ノズル」(特許申請中)の開発を報告しました。
  参加者から「シイタケの軸や間伐材など活用されずに捨てられていたものを材料としてどう使うか。これが環境と経営を結びつける一つのポイントではないか」「原油高でピンチだが、それはビジネスのチャンスでもある」「政府は太陽光発電への補助金を来年度から引き上げるが、住宅リフォーム制度の活用はできないか」「異業種交流などを通じてもっとアイデアを出し合っていくことが大事」などの意見が出されました。
  都立産業技術高専の吉田喜一教授は「研究集会で出されたアイデアをこの場限りにせず、ネットワークづくりや商工新聞などを通じて日常的な発表の場をつくっていきたい」と語りました。

地域循環型の自治体施策
地域内循環の重要性を再確認

 「地域循環型の自治体施策」は、自治体の独自施策を学びつつ、食・住・環境・福祉は地域内で循環させることの重要性を確認し合いました。
  長野県飯田市はごみの減量処理、温暖化問題などに対して六つの環境プラン基本計画を策定。太陽光エネルギーを有効活用する太陽光発電やバイオマスを活用したペレットストーブの普及に、市が補助金を出して支援していることを報告。また、京都・与謝地域では丹後ちりめんの衰退に伴い、仕事が激減した鉄工所などに炭釜づくりや炭の生産に支援金を出して振興を図っています。与謝民商でも、グループを立ち上げ特産物を販売普及している活動が紹介されました。
  神奈川県連の参加者は「中小企業活性化条例」づくりを報告。「中小業者の視点を重視することや大企業の社会的役割・公正取引ルールを順守させることの必要性を指摘し続け、名称を『神奈川県地域振興条例』とし、地域住民に受け入れられるよう提案をしている」と紹介しました。
  昨年、「中小企業振興基本条例」を制定した北海道帯広市では「振興協議会」が市に「提言書」を提出。帯広民商から協議会の三つの部会に参加するなど無報酬で市の政策づくりに参加していることや、市職員の意識を改革し、民商に対する見方が変わってきたことが明らかにされました。

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「事業承継と第2創業」について交流した第5分科会
事業承継と第2創業
後継者問題打開の方向探る

 「事業承継と第2創業」では、深刻な後継者問題の打開について議論しました。
  靴職人をめざす若者の自立を支援する東京・浅草民商の「靴・ものづくり懇談会」や、業者青年のビジネスプランを策定する研究所・東海部会の「ビジネススクールinAICHI」が紹介され、民商・県連での組織的な若手育成について経験交流しました。
  また、差し押さえの危機に直面する中で後継し、家業を守ってきた後継者の奮闘。京都の伝統工芸の技を生かした友禅染アロハシャツを開発し、アクセサリー製造から業態転換を図る第2創業の挑戦が報告されました。
  参加者からもドイツから漆塗りの研修に来た女性の塗装職人と交流し、「エコと掛け合わせた新しい事業の将来性を感じた」などの意見が出されました。
  横浜国立大学の三井逸友教授が討論をまとめ、(1)事業の夢を語れる力をつける(2)既存事業や伝統技能を受け継ぎながらも、新しいものと組み合わせて新たな仕組みを構築する(3)地域で奮闘し、地域に貢献する(4)豊かな人間関係を育む‐と承継や第2創業による発展方向を提案しました。
   
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