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  トップページ > 全商連の活動 > 全国商工新聞 第2929号 6月7日付
 
全商連の活動
 

全商連第49回 定期総会方針

一、開催にあたって
 民商・全商連はこの2年間、「生きることが優先する」と、苦難の打開に力を尽くすとともに、「増やしてこそ民商」と組織建設に奮闘し、政治経済の激動に立ち向かってきました。
 燃油・資材高騰から深刻なデフレへと経済危機が深まるなか、励まし、助け合って仕事をおこし、固定費の直接支援や休業補償を前面に、構造改革路線の転換をめざしてたたかってきました。また、リーマン・ショックで投機を優遇する金融政策の破たんが鮮明になるなか、権利意識を高めて融資を獲得し、中小業者を「不良債権扱い」する金融機関の横暴や制裁行政を是正させてきました。
 度重なる庶民増税や社会保障の負担増に加え、過酷な徴収行政が強まるなか、調査と徴収のあらゆる局面で納税者の権利擁護に奮闘し、消費税増税を許さない運動を展開してきました。
 世界的にも異常な状態が続く在日米軍基地の再編・強化に断固反対するとともに、憲法の平和的・民主的条項を生かす運動や「核兵器のない世界」をめざす取り組みを推進してきました。
 こうしたなか、国民は先の総選挙で自公政権を退場に追い込みました。このことは、私たち民商・全商連が、大増税・改憲・貧困を許さない国民共同の発展に貢献し、「たたかえば、間違った政治は変えられる」と粘り強く奮闘してきたことの道理を鮮明に示しています。
 戦後の荒廃から立ち上がり、生活擁護・重税反対のたたかいのなかで結成された全商連は、来年、創立60周年を迎えます。いま、日本の前途に対する国民の危機意識が高まるなかで、政治経済の新たな激動期を迎えていますが、幾多の困難や障害を乗り越えてきた民商・全商連運動の歴史や理念、積み重ねてきた政策提案を生かし、国民共同を広げるなら、中小業者が希望のもてる時代を築くことは可能です。
 「民商・全商連運動の基本方向」を力に、新たな前進をめざしましょう。
 
二、激動する情勢の特徴と民商・全商連の立場
 1、経営、暮らしの悪化とその原因
 中小業者の経営と暮らしは深刻さを深め、本業だけでは生活できない状態が広がっています。事業所得で200万円以下が申告者の47・8%に達し、生活保護の受給は130万世帯・181万人を超えています。
 10年前に比べ、雇用者報酬が17兆円減少する一方、大企業の経常利益は17兆円も増えています。資本金10億円以上の大企業の内部留保はこの間も膨れ上がり229兆円に達しています。
 消費が低迷し、需要よりも供給が40兆円も上回る深刻な事態を招いた原因は、労働者や中小業者を使い捨て、賃金や単価を極限まで引き下げる大企業を優遇してきた政治・経済の仕組みにあります。
 この弱肉強食の構造改革路線を転換し、大企業の異常なもうけを国民生活に還元させ、内需振興につなげていくことが求められます。
 2、自公政権退場と新たな政治動向
 長く続いた自公政権は、重税や社会保障の連続改悪により庶民を切り捨て、一部に富を集中させる構造改革を強行してきました。また、アメリカとの軍事同盟に固執し、憲法改悪さえたくらんできました。こうした政治姿勢が、自らの支持基盤を掘り崩し、業界団体を選挙の集票マシンとして働かせる手法も通用しなくなり、国民の強い怒りと要求で退場に追い込まれました。
 「国民の生活が第一」を掲げて誕生した民主党政権は当初、薬害肝炎や原爆症に苦しむ人たちを救う法律とともに、金融円滑化法を成立させるなど、国民・中小業者の声に応える姿勢を示しました。
 しかしわずか半年で、税務行政での番号制やインボイスの導入、罰則強化など国民管理を強めようとし、後期高齢者医療制度の継続や労働者派遣法改正の骨抜き、消費税増税論議の推進など危険な側面をあらわにしています。
 民主党は、構造改革や憲法改悪、消費税増税などで、自民党と競い合ってきただけに、世論と運動の高まりを抜きに政治を前向きに変化させることはできません。
 3、ルールある経済社会をめざして
 日本の取引ルールや中小企業政策はあまりにも劣悪です。下請代金法に基づく「買いたたき」の是正勧告がされたのは04年以降1件にとどまり、「発注切り」の是正勧告はゼロという状況です。
 しかし、世界では体制や文化の違いを超えて中小商工業を振興するルールが大きく広がっています。
 アメリカには加害企業に対して下請け企業が被害金額の3倍を損害賠償として請求できる法律があり、被害の抑止と救済を促しています。
 ドイツのマイスター制度は、ものづくりの基盤技術を支え、中小業者の地位向上と人材育成を担う役割を果たしています。
 EU(欧州連合)では、小企業憲章を制定し、「家族経営の繁栄」を第一に考える政策を発展させています。
 中国では、中小業者を「社会主義市場経済の重要な構成部分」と憲法で規定し、雇用を確保する重要な担い手として中小企業や自営業者の健全な発展を促進する法制度を整備しています。
 取引でも雇用でもルールある経済社会をめざして、大企業の横暴規制と地域経済を振興する施策を進めることが、中小業者の持てる力を思う存分発揮できる新しい時代への展望を開きます。
 
三、危機打開の運動を強め、緊急切実な要求実現に全力を
 中小業者は、本来、生きる糧を自ら生み出す社会的存在であり、その圧倒的多数を極度の生活不安に追い込む社会では持続可能な経済運営はできません。目の前にある命を救い、実利実益を獲得するとともに、要求の共通性をとらえ、解決の道筋を政策提案として示していくことが民商・全商連の歴史的な使命です。
 国の中小企業対策は、創業から再チャレンジまで多岐にわたりますが、予算も少なく、困難にあえぐ中小業者には届いていません。大企業の役に立つ一部の中小企業のみを育て、あとはつぶれて結構という中小企業政策を大きく転換すべきです。「地域の宝」といわれる中小業者の役割を正当に評価し、最優先に考えるという理念と政策を確立する日本版・小企業憲章の制定が必要です。
 中小業者の廃業が開業を上回り、格差が広がるという異常な状況を打開するため、「中小業者宣言(第一次案)」を発展させ憲章の実現を迫ります。また、まちや村の荒廃を防ぎ、あらゆる業種の中小業者が役割を発揮できるよう地域経済振興条例の制定と活用の運動を強めます。
 
 1、仲間とともに仕事おこしと顧客拡大を
 仕事確保が緊急切実な要求として強まるなか、「待っていても売り上げは上がらない」と腹をくくり、積極的な営業活動や商品開発で活路を見出す経験が生まれています。「商工交流会」や「商売を語る会」に挑戦し、情報や知恵、技術の交流、個性的な商品開発やサービス向上など、経営力強化に組織と仲間の力を生かします。中小業者の魅力を発信する「商工フェア」を旺盛に開きます。
 中小業者の要求を地域振興策に反映させ、地元金融機関の役割発揮を促す経験や新製品づくりを支援する施策を自治体に広げる挑戦も始まっています。料飲スタンプラリーの参加を業界内や地域に広げ、業者の役割や個店のよさを知らせる取り組みに共感が寄せられています。プレミアム付き商品券を大型店だけでなく、地元商店や飲食店での消費拡大に役立ててきました。こうした経験を生かし、制度の改善を求め、あらゆる業種の仕事おこしと顧客拡大の運動を進めます。
 地球温暖化や環境リサイクル問題に要求運動の全体が調和的であるかどうかが問われる時代です。また、自動車や家電、住宅など多くの耐久消費財の構造が変化し、中小業者の仕事のあり様も大きく影響を受けています。環境に配慮し、国民生活を豊かにする製品開発を進めるため、「地域産学連携」も生かし、仕事おこしに挑戦します。
 2、経営力を強化し、官公需施策の活用を
 官公需や地方自治体への交付金を中小業者の受注に結びつけることは重要です。地域の業者と民商・県連が力を合わせ、少額・簡易な随意契約として位置づけられる小規模工事希望者登録制度をすべての都道府県下に広げてきました。経済波及効果を高め、住民の利益にも結びついている住宅のリフォーム助成やエコポイントを仕事確保に生かしつつ、より使い勝手のよい制度への改善を求めます。
 公共事業を住民生活・福祉充実型に転換すれば、中小業者の受注確保の道が広がります。保育所や特養ホームの建設は、中小業者の仕事を増やし、雇用拡大にも役立ちます。外国資本や大企業の受注拡大を目的とするWTO(世界貿易機関)政府調達協定に基づく入札基準を見直させ、分離分割発注の強化を自治体に迫ります。経営が成り立ってこそ税金を納めることができます。税金の完納要件を緩和し、分割納付中であっても入札や受注を可能とするよう制度の改善を求めます。
 官公需や公共工事の受注に必要な資格の取得や更新手続きを経営力強化の一環としてとらえ、要求運動として発展させます。
 3、金融政策の変化を力に融資獲得運動の推進を
 中小業者の金融要求に応える努力義務を金融機関に課し、「謝絶のための審査」から「貸すために経営指導力を発揮する審査」へと金融政策は180度変わりました。
 私たちの運動でかちとった成果を徹底活用し、新規融資を含む借り換えを前面に、あらゆる金融要求に応える運動を展開します。困難を伴う相談が増えているだけに、役員と事務局員、要求を実現した経験者が励まし合いながら取り組むことが大切です。
 来年3月までの時限立法である金融円滑化法を活用し、貸し渋りや貸しはがしをやめさせる力にします。金融機関に地域への再投資や地域経済への貢献義務を果たさせる法整備を要求します。
 責任共有制度を見直させ、信用力の不利を補完するという信用保証理念を実行させれば、中小業者への融資の道は広がります。返済や据置期間の長期化、信用保証料や金利の負担軽減など、融資制度の改善を自治体に迫ります。高利金融の復活を許さず、投機マネーの規制を国に働きかけます。また、自己資本比率による画一的な金融機関の監督を見直すよう国に要求します。
 金融機関と懇談・交渉し、地域の業者や地場産業への支援を促し、資金獲得への道を広げます。
 4、公正取引ルールの確立と業種別対策の強化を
 大企業の横暴勝手な仕打ちに我慢を重ねてきた中小業者が、実態を告発し損害賠償を求めて立ち上がり始めています。
 下請け振興基準に基づく積算単価を発注企業に守らせるよう、労働者とともにその実現をめざします。
 不当廉売や納入業者への負担強要、買いたたきなどの是正へ、民主党の提案する「中小企業いじめ防止法」を実効あるものにさせます。不当に中小業者の経営を脅かす大企業には直接申し入れ、是正を迫ります。
 建築確認の「画一的厳格化」や機械的な駐車禁止取り締まりなど、中小業者に過度な負担を押し付ける官僚的な規制に対しては、問題点と実態を明らかにし共同の力で是正を迫ります。
 最低賃金の引き上げを支持し、経営の再生・維持が可能となる積算単価の実現をめざします。下請けを含め、受注業者が赤字となる公共事業をなくすために、公契約法・条例を国・自治体につくらせます。
 経営危機を打開する業種別対策を強めます。固定費補助や休業補償など直接支援を国・自治体に強く働きかけます。貴重な技術・技能を次世代へと伝える人材育成の政策発展を要求します。
 5、安心して営業し、暮らすために最低生活の保障を
 中小業者の将来不安を解消し生きぬく道を広げるため、消費税を財源としない最低保障年金の創設を要求します。生活保護が最低生活を保障するものとなるよう、名称を含めた制度改善を国に迫ります。
 国保料(税)への国庫負担が削減されてきた結果、払いきれないという悲鳴と憤りが広がっています。国保料(税)や介護保険料の引き下げ、減免制度の拡充、医療費一部負担金の免除など負担軽減と合わせて、保険証の無条件交付を粘り強く要求します。
 後期高齢者医療制度の即時廃止や公的医療の崩壊を食い止めるための共同と運動を前進させます。
 大企業の社会保障負担引き上げなど、社会的責任を果たすよう世論と運動を強めます。雇用調整助成金の活用を進めるとともに、中小業者の社会保険料負担軽減を求めます。
 住民の自立と世帯の更生や生業支援を進めるため、生活福祉資金貸付制度の運用改善を国・県・地域の社会福祉協議会に働きかけます。
 6、自治体と公務労働の役割発揮へ政策提案の強化を
 民主党政権は、小泉内閣以来強められた「官から民へ」の流れを受け継ぎ、「新しい公共」の名で、地域医療や保育など、公共サービスを大企業などに肩代わりさせようとしています。
 国の役割を外交と防衛などに特化し、あとは地方の責任に委ねるための「地域主権」をはじめ、地方を大企業優先の活動基盤に変質させる「道州制」など、自治体の変質につながる動きには、住民や公務労働者とともに反対します。
 地方自治体は、官公需や制度融資、医療や教育、最低生活の保障など、「住民の福祉の増進を図る」大切な役割を担い、公務労働者は憲法擁護の義務を負っています。積算単価の算出や地域経済振興条例の制定、税金の徴収猶予などに携わる公務労働が本来の役割を果たすなら、住民・中小業者の暮らしや経営を守る力になります。自治体と公務労働のあり方について、提案型で懇談を強めます。
 
四、大増税を阻止し、民主的な税制・税務行政の確立を
 民主党政権によって、税制と税務行政が大きく変ぼうさせられようとしています。大企業・大資産家優遇税制に手をつけることなく、財政危機を口実に庶民増税や消費税増税に道を開こうとしている姿勢を断じて許すことはできません。
 憲法から導かれる税制のあり方は、「応能負担」「生活費非課税」「直接税中心」「総合・累進課税」です。税務行政では租税法律主義に基づき、課税権の限界を示し納税者の権利が擁護されるべきです。これらの原則が長年の自民党政治でゆがめられてきただけに、それを正し民主的な税制・税務行政を確立することこそ政治の責任です。
 民商・全商連はあるべき税制を「納税者の権利宣言(第4次案)」で示し、税務行政の適正手続きのあり方を「『納税者の権利憲章』制定への提言」で示してたたかってきました。
 こうした「税金の民商」ならではの政策提案を生かし、納税者基本権の確立を迫ります。
 1、「控除から手当」という欺まんを許さず生活費非課税の実現を
 民主党政権は、扶養控除を廃止・縮小して子ども手当を創設するなど、「控除から手当」への流れを強く推し進めています。また、配偶者控除などすべて人的控除をなくすことを狙っています。これらは、「生活費非課税」や「応能負担」の原則を破壊し、広範な国民に重税を押し付け、税による所得再分配機能を失わせるものです。
 そもそも人的控除は、憲法に基づく生存権を保障する上で無条件に認められるべき権利です。それをはく奪し、給付に切り替えていくやり方を許すわけにはいきません。
 課税最低限を引き上げ、生活費非課税の原則を確立する世論と運動を広げます。
 3・13重税反対全国統一行動を、あらゆる階層の共同行動として発展させます。
 2、消費税増税を断固阻止し、営業破壊を許さない国民的運動を
 民主党政権が事業仕分けで財政危機をあおり、消費税増税を画策していることは許せません。また自民党も財界要求のままに消費税の導入・増税してきた政治姿勢を何ら反省することなく、増税論議をけしかけていることは言語道断です。
 国民各層との共同行動を強め、消費税増税計画を断固阻止するため世論と運動を広げます。
 消費税の減税・廃止をめざしつつ、「仕入れ税額控除否認」を規定している消費税法第30条7項の廃止、記帳要件の緩和、免税点の引き上げを要求します。また、下請け業者が支払った消費税を輸出大企業のみに還付する「輸出戻し税」の廃止・制度改善を求めます。
 消費税を転嫁しきれない実態の告発を強めます。自主記帳・自主計算を要求運動として強め、消費税につぶされない対策を進めます。そのなかで、経営実態や取引慣行に見合った記帳要件の緩和を求め、不公正取引を許さない交渉や融資獲得の力にしていきます。
 3、大企業優遇税制を改め、応能負担の徹底を
 民主党政権は大企業・大資産家優遇税制は温存したうえ、法人税引き下げを優先課題にしています。しかし、財界いいなりに大企業向け特権的減免税を広げてきたことが、貧困と格差を広げ、未曾有の財政危機を招いてきました。しかも、消費税は21年間で213兆円の税収がありながら、そのほとんどが大企業減税の穴埋めに使われてきました。国際競争力強化を口実に、大企業向け法人税を引き下げることは、さらなる不公平税制を広げることでしかありません。
 所得税、法人税、地方税などあらゆる税制で応能負担原則を貫くことを要求します。
 能力に応じて税金を負担する応能負担の税制は「勤労所得や生存権的財産には軽く、投機的売買や大企業には重い」ものであるべきです。内需主導経済のために、富裕層増税と中低所得者減税をすることが世界の流れであることを広く知らせます。行き過ぎた大企業・大資産家減税を改めれば、庶民増税や消費税増税は必要ありません。
 所得税法第56条は、家族従業者の労働の価値を認めない前近代的な税制であり人権問題です。世論の力で第56条を廃止させ、自家労賃を認める税制の実現をめざします。
 4、「番号制」導入などの強権化を許さず納税者の権利確立を
 民主党政権が狙う消費税のインボイス導入は、中小業者の実務負担を増やし、取引から排除される危険をもたらすものです。また「税と社会保障の共通番号」は、あらゆる取引を監視し、強権的な取り立てやプライバシーの侵害につながるものです。歳入庁の創設は、税金と年金や社会保険料の一体徴収につながり、権力集中と人権無視の徴税強化に拍車をかけるものです。こうした国家主義的風潮を許さず、申告納税制度の擁護・発展をめざしたたかいます。
 「税金の民商」の本領を発揮し、違法不当な税務行政とのたたかいを前進させるなかで実効ある納税者権利憲章の制定をめざします。
 納税者権利憲章は、納税者の権利を尊重する基本理念を示すものです。調査の適正手続きに限らず、徴収や不服審査、訴訟に至るあらゆる段階で適正手続きが保障されるものでなければなりません。差し押さえてはならない生存権的財産の範囲を広げ、労働債権の租税債権に対する優先性を明確にし、自ら命を絶つという悲劇を起こさせない適切な対応を税務当局に義務づけるべきです。
 税務制裁の罰則強化に対しては、行政罰と刑事罰という二重制裁をなくすよう求めるとともに、現場での脅しによる課税強化を許さないたたかいを強めます。
 人権を無視した取り立てをしている「地方税整理回収機構」の解散を求めます。

五、憲法を生かし、平和・民主主義を守る運動を
 日米安保条約改定から50年を迎えた今日、世界でも異常な軍事同盟=日米安保条約の姿が浮き彫りになっています。日本全土に134もの基地があり4万人の米兵が駐留し、侵略軍である海兵隊が配備されています。条約上の義務もない「思いやり予算」をはじめ年間6000億円もの経費を負担し、経済的な従属も自主的な発展を阻害しています。憲法理念と対立する安保条約を廃棄し、対等・平等の「日米友好条約」へ転換させる世論を高めます。
 憲法を守り、生かす運動を強め、民主主義を破壊するあらゆる企てに反対します。
 民主党政権における政策の検証を進めるなかで、あらゆる選挙を要求実現のチャンスととらえ、政治活動の自由を生かし、政治の革新をめざして奮闘します。
 1、在日米軍基地の再編強化を許さず安保廃棄の運動を
 民主党政権は「50年先も日米同盟を機軸」にし、さらに深化させるとしています。しかし、安保条約は決して対等平等な日米関係を保障するものではなく、むしろ、「基地のない日本」「独立・平和の日本」を築くうえで最大の障害となっています。その実態と害悪をあらゆる面から告発し、安保条約廃棄の国民的合意をめざします。
 全国的な運動で沖縄の普天間基地を無条件に撤去するために奮闘します。米軍再編への財政負担をやめさせ、全国の基地強化反対・基地被害根絶の共同の運動を推進します。
 核持ち込みや米軍犯罪の裁判権放棄など日米関係のあらゆる「密約」を公表・破棄させます。非核三原則の法制化をめざします。自衛隊派兵恒久法の制定を許さない運動を強めます。
 2、核兵器の全面禁止をめざす運動の前進を
 核固執勢力の巻き返しにもかかわらず、核兵器なくせの国際的世論は、かつてなく高まっています。5月のNPT(核拡散防止条約)再検討会議で示された運動の高揚を前進させ、国連加盟のすべての国が「核兵器全面禁止条約」締結へ踏み出すよう奮闘します。唯一の被爆国としての政府が「核抑止力」論の呪縛から抜け出し、核兵器廃絶へ積極的な役割を果たし、平和外交の先頭に立つよう要求します。原水爆禁止運動の先駆けとなり、運動の先頭に立ってきた民商・全商連の歴史的なたたかいを受け継いで核兵器のない世界をめざします。原水爆禁止世界大会の成功に貢献します。
 3、憲法を生かし、民主主義を守る運動の発展を
 「改憲手続き法」は成立しているものの、憲法審査会は始動できず、投票年齢にかかわる民法はじめ関連法制の整備も進んでいません。改憲派の動きを軽視せず、「憲法を守れ」の国民世論を大きくしていきます。中小業者の経営と生活を守るよりどころとなっている憲法を学び、生かしていく運動を推進します。
 衆議院の比例定数削減や単純小選挙区制導入は、国会への多様な意見の結集と中小業者の要求実現を阻むものであり、「政治主導」の名による国会法改悪は解釈改憲への道を開き、強権的国家づくりをめざすものです。これらの民主主義破壊に断固反対します。政党助成金の廃止を求めます。
 「平和・民主・革新の日本をめざす全国の会(全国革新懇)」の運動を強めます。
 
六、民商の「値打ち」を押し出し、強大な民商・全商連の建設を
 この間、自公政権の退場という歴史的な審判を確信としつつ、「政権交代だけでは中小業者は救われない」と切実な要求を掘り起こし、強大な民商・全商連の建設に取り組んできました。
 組織の全国増勢には成功しきれていませんが、あらゆる要求運動や組織活動を通じて「民商の値打ち」を押し出し、商工新聞前面の拡大運動を展開する奮闘が広がっています。
 強大な民商をつくり上げてこそ、切実な要求を実現し、中小業者に対する正当な評価と国民的な理解を高めることができます。あらゆる苦難に手を差し伸べ、国民全体の幸せとかたく結びついて奮闘する民商・全商連を、多くの中小業者はいっそう必要としています。
 全商連は、来年、創立60周年を迎えます。この歴史的な節目に民商・全商連運動への確信を深め、組織勢力での前進を実現するため、「増やしてこそ民商」の気概を発揮し、持てる力を総結集して奮闘します。
 あらゆる機会に「集まって、話し合い、相談し、助け合う」活動を広げ、班・支部を基礎にした全会員参加の運動を推進します。
 1、対話と相談の担い手を広げ、毎月の持続拡大を
 同じ中小業者として「困った時には力になる」のが民商の真骨頂です。
 また営業と暮らしに関する諸制度がめまぐるしく変ぼうしているだけに、苦難を乗り越える「生きた情報」の交換が、日常的に求められる時代です。
 地域に強大な民商を建設する運動は、苦難を解決した仲間が今度は別の仲間を助ける側に回り、あるいは多くの会員が会内外の中小業者に気軽に声をかけ、「民商とはどんな団体か」を自らの言葉で発信することで大きく前進します。民商の値打ちは、常に発展する要求運動のなかにも、またさまざまな学習機会や組織活動のなかにも、無数に見出すことができます。
 仲間を増やすため、「民商の値打ちをどう押し出すのか」の検討を、機関会議や拡大推進委員会で深め、「減らさず増やす」持続拡大を、商工新聞前面に毎月の行動計画を持って推進します。
 すべての会員の多彩な結びつきに依拠し、「助け合いの紹介」運動や、支部中心に「なんでも相談会」活動に取り組みます。地域に門戸を開いた対話や、多彩な宣伝媒体を効果的に活用する工夫を広げます。
 2、地域と全国を結ぶ商工新聞をあらゆる活動の中心に
 全国の民商が、中小業者の苦難打開に知恵と力をどう発揮しているかを、系統的かつ新鮮に発信し続けているのが全国商工新聞です。
 この2年間にも、仲間の奮闘を通信やニュースを通じて商工新聞に掲載することで、運動を全国へ広げ、従来の枠を超えた制度の改善・創設へつなげるなど困難を乗り越える力にしてきました。
 今日、商業マスコミの多くは「消費税増税」や「日米同盟の絶対化」への世論誘導を画策するなど、公正・公平の使命を投げ捨てる傾向を強めています。それだけに、交渉・要請や宣伝・対話、会議での意思統一、あるいは学習資料として、商工新聞の積極活用を思い切って強めることが大切です。
 商工新聞は「中小業者の大同団結と平和的民主的日本の建設に貢献する」という創刊の精神を、今日まで脈々と受け継いでいます。それを可能にしているのは、全国の仲間の「読み、増やし、配達し、集金し、通信を送る」活動です。読者は「最も身近な民商の理解者」です。商工新聞をあらゆる活動の中心に据え、会員比150%以上の読者をめざすとともに、購読継続の働きかけを強めます。
 3、仲間意識を高める班・支部活動の抜本的強化を
 生計費を確保するのに副業を家族でかけ持つ状況さえ広がっているだけに、励まし助け合う班・支部活動を抜本的に強化します。この間も、民商や支部の役員による激励訪問が各地で歓迎され、苦難に目を奪われている仲間が元気を取り戻す力になっています。
 活発な班・支部活動こそ、会員意識を高め合い、行動参加を広げる力です。商工新聞を支部役員会などでも読み合わせ、感想を出し合うようにします。
 こうした班・支部活動は、自然成長的に発展するものではありません。とりわけ機関役員や事務局員には、班長や支部役員の悩みや意見によく耳を傾け、班・支部の知恵と民商の機関会議での討議を双方向で結びつける援助が求められています。
 歴史的に見ても、足腰の強い班・支部活動のなかで、活動参加が広がり役員が生まれています。支部役員会の定例開催を追求するなかで、班による会員の結びつきを強めるようにします。
 4、質量ともに、学習・教育活動の推進を
 この間、制度学習大綱の改定も生かし、民商の歴史や理念、当面する方針の重点を深めるため、民商や支部の役員、班長、新会員、そして事務局員を対象にした研修を強めてきました。
 自公政権の退場という局面で、情勢討議を重点とした幹部学校が活発に開かれ、また商工新聞中心の活動と班・支部建設を相乗的に推進する立場での支部役員研修会や班長学習会が広がりました。「ようこそ民商へ」と新会員歓迎学習会を系統的かつ支部主催で行う努力も強まっています。
 さまざまな苦難を団結の力で解決していくうえで、「運動しつつ学び、学びつつ運動する」という民商・全商連の優れた伝統を、創造的に生かすことが求められています。共通性の高い要求で適宜、学習の機会を設け、問題解決に必要な相談の心構えや交渉・要請の留意点、必要な実務のあり方等を深め合えるなら、相談活動への確信を高め、会員が気軽に相談者を紹介・案内できる気風も強まります。
 商工新聞とともに、『月刊民商』を役員、事務局員はよく読み前進面を学びます。
 5、団結を強め、運動の発展を保障する組織運営を
 民商・全商連は、「規約」を守り合い、「基本方向」が示す運動のあるべき姿への理解を、行動を通じて広げる不断の努力のなかで発展してきました。困難な時代だからこそ団結が何より大切です。
 役員会には、会員の創意を結集するため、班・支部建設への援助が求められますし、組織運営を充実させるうえで、問題別・分野別の専門部を生かす工夫も大切です。
 民商ニュースや実績パンフを発行することで、多くの会員に相談内容や運動の様子、成果を知らせ、民商の値打ちを確信できるようにします。また商工新聞や宣伝チラシなどで、変化に対応した情報発信を強め、民商の姿や運動が会員や地域業者によく見えるようにします。
 会費・紙代の集金は、仲間と対話し心を集める活動です。会費は、自らを助け仲間と助け合う「団結費」です。会費の性格に対する理解を深め合います。運動体にふさわしい財政活動の前進をめざし、「未収・未納」をなくすとともに、班・支部での集金体制や機関会議での討議、運動に見合った財政計画づくりを強めます。
 6、県連の役割発揮と事務局建設のいっそうの強化を
 民商への相談が困難かつ複雑さを増し、市町村合併などで地域の様子も様変わりしているだけに、全商連方針・決定の具体化と民商への援助を統一して推進する県連の役割発揮がいっそう大切です。
 民商は県連への結集を強め、切実な要求解決への知恵を交流し、政令市を含む自治体対策や業種別・問題別対策などを前進させます。また組織建設での取り組みの前進面を学び合い、連帯感のある拡大運動を強めます。県連で民商ニュースを交換し、魅力を高める交流を進めます。
 今日、事務局建設でも県連の役割発揮が重視される必要があります。2人以下の事務局体制の民商が増加し、多彩な要求相談でも、組織を支える正確な実務でも特別の援助が求められます。
 要求あるものが先頭に立てるよう、事務局員は役員会と団結し、組織の拡大強化で困難を突破する姿勢を貫くという基本に立ち返って活動改善を進めます。
 7、創立60周年を節目とし、「目標と計画」を持った組織建設を
 今後2年間は、全商連創立60周年を節目とし、「仲間を増やして要求実現」を本格的軌道に乗せる組織建設への挑戦です。
 基本調査結果を生かして不断の活動改善を進め、組織的前進をめざす「目標と計画」を練り上げるなかで、会員の行動参加を大きく広げます。
 「目標を持つ」とは、拡大の数値目標に合わせ、「地域にどんな民商をつくるのか」や「切実な要求実現にどう行動を起こすか」を討議・確認することです。また「計画を持つ」とは、その目標を実現するために、仲間の自覚的な力を引き出す手立てを明らかにすることです。
 すべての組織が、全商連創立60年を節目とした「目標と計画」を確立し、商工新聞中心の活動や班・支部建設、学習・教育活動を強化し、「減らさず増やす」毎月の持続拡大を推進します。

七、助け合い共済つぶしを許さず、全会員加入を
 この間、保険業法規制から助け合い共済を守る運動を広げてきました。
 こうした奮闘により、全商連共済会の組織と制度を守り、見舞金の拡充や免責期間の短縮など制度改善を行ったことは画期的な成果です。
 民主党政権が、保険業法の見直し作業を進めるなか、新たな共済規制を許さず、広範な自主共済が生き残れるよう世論と運動を強めることが求められます。
 民商・全商連共済は「断じて保険業法に該当しない」という基本的立場を堅持するとともに、広範な自主共済や労働組合共済との共同行動を強めます。
 社会保障の抑制路線に反対し、仲間への「目くばり、気くばり、心くばり」を強め、いのちと健康を守る運動を推進します。全会員を対象に、集団健診や健康づくりの活動を、支部単位に強めます。特定健診制度の問題点を告発し、自治体の基本健診へ戻し、改善するなど、よりましな制度の確立をめざします。
 仲間同士の助け合いと団体自治を高めるため、すべての会員に共済加入を訴え、入会時の加入を促進します。
 全会員加入をめざすなかで、より民商らしい共済会のあり方の検討を進めます。

八、業者婦人対策の強化を
 所得税法第56条廃止を求める運動を広げ、200を超える自治体決議・意見書採択をかちとりました。婦人部は「家族従業者への差別法規」として告発し、女性団体などの賛同や国際的にも理解を広げてきました。こうした前進的な変化に確信を持ち、自治体決議などを広げるなかで、56条の廃止を迫ります。
 09年全国業者婦人の実態調査の結果を暮らしと営業の見直し運動に生かします。出産育児一時金の増額・直接払いや就学援助など役立つ制度を学び活用します。
 業者婦人の商売交流を進め、女性の起業要求に応えられる民商運動をめざします。また、保育・教育、介護など業者婦人の切実な要求を集まって話し合い、すべての婦人部がいきいき活動できるように援助します。役員づくりと役員会の開催を援助し、婦人部の役員会との懇談を強めます。

九、業者青年対策の強化を
 業者青年は、日本経済を支えていく役割を担うとともに、民商・全商連運動を継承する存在です。
 独立開業や事業承継の道を選択した多くの業者青年は、生き方を真剣に模索しつつ、相談場所と語り合える仲間を求めています。
 業者青年に魅力ある民商づくりは、民商・全商連運動の重要な課題です。県連と県青協との懇談の場を持ち、青年対策を強めます。青年部を卒業した若手が活躍できる機会を増やします。
 業者青年が民商運動の理念と歴史、役割を学べる機会を増やします。
青年部の活動再開・結成、拡大への指導援助を進めます。

十、おわりに
 民商・全商連の60年に及ぶ歴史と運動は、まさに道なき道を歩き続けてきた、紆余曲折に満ちた苦難と創造の道のりでした。中小業者の経営と暮らしを守るたたかいに根ざし、国民全体の幸せとかたく結びついて前進してきました。
 総選挙での国民の審判は、情勢全体を前向きに動かす大きな力として作用しています。しかし、異常な対米従属、大企業・財界の横暴な支配から抜け出すまでには至っていません。いま、中小業者・国民の願いとの矛盾の根本的解決を求めた探求が始まっています。
 民商・全商連運動のかけがえのない役割に確信を深め、「基本方向」を力にして、要求実現の運動を旺盛に展開し、思い切って仲間を増やし、一人ひとりに魅力ある組織をつくりましょう。
 中小業者が希望と意欲の持てる新時代を切り開くために、すべての中小業者・中小業者団体と力を合わせましょう。

   
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