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  トップページ > 平和・民主主義のページ > 憲法 > 全国商工新聞 第2810号 12月10日付
平和 憲法
 
そもそも憲法とはどういうもの
国民の権利や自由を守り国家権力を制限するもの
法学館憲法研究所所長 伊藤真インタビュー
 「日本国憲法は、国民の側から国家に向かって制限する立憲主義という近代憲法の英知を引き継でいる。また、憲法9条は世界の宝、これを逆戻りさせるのは本当にもったいない」と、精力的に全国を駆け巡り講演している法学館憲法研究所の伊藤真所長。「税法や道路交通法など、国民が守らなければならない法律の基本法が憲法」と思っている人が多いなか、「国民には、憲法を守る義務はない」と話す伊藤さんに「そもそも憲法とはどういうものか」について聞きました。

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中小業者の権利や憲法について語る伊藤真さん
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  私たちは税法ですとか、それぞれの業界の業法など法律に従っていますが、それは社会の秩序を維持するために私たちが生活をしていく上での自由を一定限度、制限していくことが目的です。多数者の意思が反映された民主的な法律であったとしても、その法律によって、時に少数者の人権や社会的弱者の利益が不当に侵害されることがあり得ます。
  そこで、憲法という、国家権力が守らなければならない法をつくって、国民が権力を拘束することにしたわけです。憲法とは、国民の権利や自由、人権を守るために国家権力を制限するための法なのです(これを立憲主義といいます)。
  したがって法律と憲法は
180度向きが逆なのです(図参照)。法律は国家が国民に守らせようとするもの、憲法は国民が国家に守らせようとするものなんだという、その本質をしっかり押さえておかなければなりません。
  公務員に憲法を尊重し、擁護しろと言っているのであって、国民に憲法を守れとはひと言も言っていない。憲法というのは、国民の人権を守るために国家権力を制限した法ですから、人権の規定ばかりなのは当たり前なのです。国民に義務や責任を課すのは憲法ではなくて法律の仕事です。
  したがって本来は、納税の義務すら憲法の中に入れる必要はないわけであって、それは法律で規定すれば十分なのです。納税の義務を憲法の中に規定している国はロシア、中国、日本、スペイン、イタリアなど、それほど多くはありません。もともと憲法は、国民の人権を保障するための法だというわけです。

少数派を守る
  憲法は、いわば多数派がつくった法律によって、少数者に対して理不尽なことをしてはならないというところに意味があるわけですから、多数派や強者を制限して、少数派や弱者を守る、そういう意味合いも持っていることになります。
  民主商工会の会員の皆さんなど零細企業であったり、弱い立場にある人たちにとってこそ、憲法というものは重要な意味をもつ。多数派や強い力をもった者の横暴に屈しないで、自分たちの利益や権利を守っていくためには、この憲法は重要な道具、たたかうための道具にもなり得るんだということを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

個人の尊重こそ
  憲法の中で、最も大切な価値は、個人の尊重だと私は考えています。憲法13条に、「すべて国民は、個人として尊重される」と書かれているのですが、人はみな同じという意味と、人はみな違うという意味と、二つの重要な意味を持っています。どんな豊かな人も、貧しい人も、健康な人も、障害ある人も、年齢も性別も宗教も人種も、いっさい関係なくおよそ人間としてそこに存在する限りはかけがえのない一人ひとりの価値ある存在、人間として生きていく価値があるんだということを、お互いに認め合うということです。
  民商の皆さんのように、少人数で仕事をされる方々は、個性あるお店づくり、商売をしているだろうと思います。大きな企業や、大きな商店のまねをする必要はないのであって、個性を生かした、自分のお店でしかできないことをむしろめざしていくことが、より力になっていく。そして自分らしく生きる、自分のお店らしく経営をしていく、それが実は何よりも大切なんだということを、憲法は私たちに言ってくれているのではないかと考えます。
  そしてこの個人の尊重、個人の尊厳というものは、言葉を換えれば一人ひとりを人間として尊重するということですから、その人の人間性を尊重するということにほかなりません。その人間性というものを打ち砕くものこそが戦争ですから、憲法は戦争は絶対にしないということを前文と9条で誓っているわけです。

憲法9条は国の戦争する権限を認めない世界の宝
 9条は1項で、侵略戦争を放棄します。ですが、侵略戦争を放棄した憲法というのは、世界にいくつもあって日本が目新しいわけではありません。ところが日本の憲法は9条2項でいっさいの戦力は保持しないし、国の交戦権は認めないと言っています。戦力はいっさい持たないし、国の戦争する権限は認めないと言っているわけです。9条2項があるがゆえに、日本の憲法9条はいっさいの戦争を放棄した憲法だと考えられているわけです。これは画期的なことです。
  そもそも軍隊というものは、国民の生命・財産を守るものではありません。あくまでも国家という組織を守るものであって、一人ひとりの国民を守るためのものではないわけです。
  戦争というものは、非戦闘員、民間人の犠牲が今日95%以上だといわれています。戦争が起これば、弱い立場の者から、犠牲になっています。戦争が起これば大企業が利益を上げる、武器を造って利益を上げる所があるかもしれません。一方で零細企業、中小企業は大企業に過重な労働を強いられたり、一緒に仕事をする仲間を兵隊に取られたり、戦争で失ったりしてしまいます。弱い立場の者から犠牲になっていくのが戦争なんだということも、今一度、私たちは確認しておかなければいけないかと思っています。
  私たちの国の憲法は、たんに自分たちの身を守るだけではなく、世界がこのような非暴力・非軍事の力によって平和を築いていこうとする大きな方向性を指し示すものとして、まさに世界の宝ではないか。世界に誇れる日本の宝であると同時に、人類の宝といえるほどの価値を持っていると考えています。

 伊藤真さんのプロフィール 1958年、東京生まれ。東京大学法学部卒。現在、(株)法学館館長、伊藤塾塾長、法学館憲法研究所所長。テレビ・ラジオ番組に出演するほか、「憲法の力」など著書多数。
 
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