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  トップページ > 業種のページ > 製造・小売 > 全国商工新聞 第2941号 9月 6日付
 
業種 製造・小売
 

事業継承ホントのトコロ=こだわり豆腐の味に魅せられ

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「家族で力を合わせて仕事をしています」と尚永さん(右)。母・栄子さん(左)、父・憲一さん(中央)

 「実家の豆腐を食べたとき、豆腐屋をやらないとあかんな、この豆腐をお客さんに食べてもらいたいなと思ったんです」。和歌山・海南民主商工会(民商)の山口尚永さんに事業継承を決意させたのは、ほかでもない実家で作っていた豆腐でした。

 子どものころから豆腐屋はやりたくないと思っていた尚永さん。「サラリーマンになりたくて、大学もそのつもりで進学したんです」と振り返ります。周囲はサラリーマン家庭が多く、休日が多いことにもあこがれを抱いていたといいます。

まぁ食べてみろ おいしさに感動
 転機が訪れたのは大学生4年の夏休みのこと。実家で働いていた叔父さんに「これからどうするんや? まぁ食べてみろ」と、寄せ豆腐を差し出されました。食べた瞬間、そのおいしさに感動。国産大豆100%・国産にがりを使用した寄せ豆腐が実家で作られていることに驚き、「お客さんに食べてもらいたい」という思いが自然とわき上がりました。木綿や絹ごしが主流だった当時、寄せ豆腐はほとんど流通しておらず、「希少価値もあり、商売につながる」と確信したといいます。
 家業をついで18年。満足のいく豆腐を作るため、試行錯誤を繰り返してきました。
 「大豆は年ごとの良し悪し・産地・製造者によって、味も何もかもが違う。豆腐の味も左右される。今でこそ分かるけど、最初は全く分からなかった」。
 水につける時間やすくう時間を変える、大豆をブレンドするなど、さまざまなことに挑戦した尚永さん。より良いものをとの思いが強く、こだわりのあまり家族とけんかになることも。
 それでも豆腐で勝負したいと、満足することなく安全性とおいしさを追求してきました。評判は新聞や雑誌、口コミ、紹介などで広まり、今では全国の飲食店を中心に出荷しています。
 人とのつながりを大切にするという姿勢も商売を後押ししています。海南市で開かれている「元気市」には当初から出店。お客さんや協賛する人たちと対話し、つながりをつくってきました。おいしいという声から、前の味と違うという疑問の声まで、直接聞けることが喜びに。また自信がある商品をお客さんに勧められることが醍醐味だといいます。

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自慢の豆腐。後ろの野菜は、おからで育てたものです

 こうした中で、親から言われた「物を頼まれるような人間、信頼を託されるような人間になれ」という言葉を実感しました。「やっぱり中小業者はファンを増やして、コミュニティーをつくることが大切だと思うんです」。
 今後は地元を大切に、環境に配慮しながら商売をしていきたいという尚永さん。販売や家畜の餌用に出す以外は廃棄物として捨ててしまうおからを再利用し、新たな事業ができないかと構想中です。現在、取り組んでいるのは野菜の肥料づくり。民商の仲間が建てたデイサービス施設の畑を借り、実験的に野菜を栽培しています。「おからを肥料にしたいとか、出来上がった肥料を使ってみたいとか、一緒にやってくれる人がいたら協力して商売につなげたい」と力を込めます。
 こうした取り組みは着実に成果につながっています。マスコミも協賛・後援する「ニッポンの食、がんばれ!」(同実行委員会主催。7月から始まった国産・環境・安全に配慮した製品を応援するキャンペーン。詳しくはHPで検索)に寄せ豆腐「紀州てまり豆腐」を出品。おからを100%再利用していることが評価されました。

国内産の原料にこだわった逸品
 自慢の「紀州てまり豆腐」は、備長炭で浄化した和歌山の天然井戸水と国内産の大豆とにがりを使ったこだわりの逸品。食感は絹ごしに近く、口の中で滑らかにとろけ、大豆の濃厚な甘みがいっぱいに広がります。同じく寄せ豆腐の「生石豆腐」は3種類の大豆に井戸水・国内産にがりを使用。大豆の味が舌に長く残ります。
 「商品に信用をプラスしながら、今後も人とのつながりを大切にしていきたい」と尚永さんは話します。

日本の食文化を次代へ=父・憲一さん
 愛知の大学に行くと言った時も、いずれは継いでほしいと話していました。私の父の代から苦労して築いてきた「豆腐屋としての山口家」を、その魂を継いでほしかった。
 豆腐はうどんやすしと並ぶ日本食としての代表ですから、食文化を次代へ継いでほしいという気持ちもありました。頑張ってくれているのはうれしいことです。
 尚永が仕事を始めて18年。頼りない部分もありますが、まだまだきっと伸びる。不況のあおりを食らって業績は少し悪くなっていますが、周囲の人にかわいがってもらうとともに、自分自身も努力しています。
 人や家族とのきずなを大事にしながら、頑張ってほしいと思います。


おからの再利用
 おからは、大豆から豆乳を搾った後に残ったもの。食品としての需要がそれほどなく、また品質の劣化が早く日持ちしないため、家畜の餌としての活用や、脱水して保存性を高めて供給されるほかは、多くが産業廃棄物として処理されています。廃棄量は年間で約65万トン。これらが再利用できれば、エコにもつながります。
 おからの再利用についてはさまざまな研究がなされています。おからを原料にしたバイオエタノールのほか、成分を取り出して基礎化粧品を開発したり、発泡スチロールのような緩衝材の原料にしたり、乾燥おからを使った猫砂などの実用例もあります。


有限会社山口食品
 弟、両親、パートを含む従業員11人で運営。尚永さんで3代目。各種豆腐、がんも、厚揚げのほか、豆乳プリンやこんにゃくなども製造。八百屋、魚屋などの商店のほか、和歌山県内を中心とする大手スーパーなどでも販売しています。
 和歌山県海南市沖野々388の7 電話&ファクス:073-487-1234

   
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