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  トップページ > 業種のページ > 製造・小売 > 全国商工新聞 第2779号 4月23日付
業種 製造・小売り
 
町工場から宇宙へ まんてんプロジェクト
夢かける中小企業集団
技術生かすものづくりに挑戦
 町工場の技術が大空に羽ばたき、さらに宇宙へと広がっています。航空宇宙関連部品などの開発・製作を共同受注している「まんてんプロジェクト」(HP=manten-project.org)。京浜地域の中小企業を中心に、全国から参加しています。中小企業が集団として航空・宇宙産業に本格的に参入するのは国内初。国も「まんてん」のとりくみに注目しています。活動は部品の開発・製造にとどまらず、人工衛星の研究・開発にも活動を広げ、夢とロマンをかけたものづくりに挑んでいます。

水上飛行機づくりに励む櫻井さん(上)と青木さん(下)(提供 日高勝彦さん)
中小企業の技術生かして
 「われわれがめざしているのは、ものを移動させて利ざやを稼ぐことではない。中小企業の持っている技術を生かしながら、1社だけでは持てない生産管理、品質保証など専門分野の機能、人材、設備を共有し、ものづくりに挑戦すること。協同組合的な形態を法人としてやろうとする新しいビジネスモデル」と「まんてん」の理事・山口耕司さん(44)は熱く語ります。
 自社の(有)オービタルエンジニアリングでは人工衛星の表面を覆っている金色の断熱材「サーマルブランケット」を開発・製造する高度な技術を持っています。国内で開発している中小企業は同社だけです。山口さんの存在は「まんてん」の活動を大きく前進させました。
 「まんてん」は03年9月に発足。宇宙飛行士をめざす少女をヒロインにしたNHKの朝の連続ドラマから名前をつけたもので、現在、89社が参加しています。
 横浜東民主商工会(民商)の中村鉄男さん(78)もメンバーの一人。「部品加工が海外に出ていき、ものづくりが空洞化している。技術を継承させるためにもできる仕事を積極的に請けたい」と意欲を見せています。
 「まんてん」は航空宇宙および一般部品の設計、製造・加工を受注し、将来的には航空機や人工衛星を手がける壮大な目標を掲げています。その実現へ04年4月、JASPA(株)を設立。現在、山口さんが代表取締役を務めています。

JAXAも注目
 「まんてん」が営業活動を展開し、受注した仕事をJASPAが契約して「まんてん」のメンバーに振り分けます。
 航空部品などの受注は年々増え、この間に製作した部品は1000点を上回り、独立行政法人宇宙研究開発機構(JAXA)や大手企業からも注目されています。
 航空宇宙産業は安全性が最も重視され、品質管理やトレーサビリティー(生産履歴)が厳しく、中小業者が簡単に仕事を受注できないのが現状です。JASPAがそれを可能にしたのは三次元測定器を購入し、加盟企業が自前で品質保証をできるようにしたからです。部品を作ることができても、中小企業がその品質を自ら保証することは、前例がありません。この測定器を購入するのに1億円もの費用がかかり、1社で購入するのは不可能。役員会で購入すべきかどうかを真剣に議論しました。
 測定器購入は、JASPAの社会的な信頼を飛躍的に高めました。

中小企業の出番
 JASPAの取締役・千田泰弘さん(66)=写真=は「自動車の部品は1台4万点、ロケットの部品は30万点、中型航空機になれば200万点。航空宇宙関連の部品作りは高レベルの技術が必要とされている。まさに中小企業の出番。経済産業省も航空宇宙産業への中小企業の参入を重視している」と強調します。
 航空宇宙関連の部品作りは多種少量生産で、大手や中堅企業はコストがかかり過ぎることから、撤退が相次いでいます。「まんてん」はそれを逆にビジネスチャンスととらえました。宇宙産業の市場規模は1兆円(国家予算は4000億円)ともいわれており、そこに中小企業が積極的に進出すれば、技術も生かされ、ビジネスチャンスも無限大に広がるというわけです。

日本の製造業を守りたい
 メンバーの中には航空宇宙の研究・開発を含めて「日本の製造業を守りたいと」いう思いから参加している中小企業もあります。
 山之内慶次郎さん(48)が経営する(株)山之内製作所は航空宇宙関連の部品作りでは、国内でもトップクラス。「まんてん」の設立当初から中心的役割を担い、活動に貢献してきました。「国内には高い技術もあり、人材もいるというのに、海外に流れているのはなぜか。それは国が守ろうとしないから。日本の技術を守らなければ、中小企業もなくなってしまう。国は製造業のあり方をもう一度見直し、将来を見据えた環境、体制を整えるべき」と指摘します。
 一流の技術を持っているとはいえ、山之内さんは「まんてん」に参加するまでは経済産業省やJAXAと直接、話をする機会がありませんでした。
 「製造業者はピラミッド型の下請け構造のなかに組み込まれ、その範囲では集団化は必要なかった。しかし、これからは中小業者が自ら考え、主体的になってものづくりをしなければつぶされてしまう。『まんてん』発足は製造業者にとっては画期的なこと。最大限の力を発揮したい」と力を込めます。

共同の力で世界へ進出を
 「まんてん」の母体になった「神奈川県異業種グループ連絡会議」の芝忠理事は「日本の宇宙研究開発を、町工場の集団が支え、経営を確立させながら、研究、実験、開発を重ね、日本のものづくりの基盤を前進させる。壮大な事業をやり遂げるために、われわれは共同で世界に立ち向かっている」と確信を持って話します。
 現在、「まんてん」では早稲田大学との産学連携が始まり、水上飛行艇作りに挑戦しているメンバーも生まれています。(株)計算力学センターの代表取締役会長・櫻井達美さん(72)と(株)青木精機製作所の取締役会長・青木祐寿さん(66)が中心になって、高波にも耐えられるフロート(浮きの部分)開発に成功しました。製品化するときはJASPAと全面的に連携する方針を掲げています。
  町工場から宇宙へ。可能性は大きく膨らみ、中小企業の技術が、満天へと舞い上がっています。

 

 
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