消費税は再配分に逆行
10%増税やってはダメ 亀井静香さん

全国商工新聞 第3361号2019年5月20日付

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 「増税をやめるとなれば、国民の了解を得ないといけない」。安倍首相の側近=萩生田光一自民党幹事長代行が、消費税増税の延期に言及(4月18日のインターネット番組)したことで、夏の参院選挙に合わせた衆参同時選挙の様相も浮かんでいます。消費税増税の是非、ストップの可能性、政局への影響について、3年前にも商工新聞(2016年2月29日号)に登場した元金融相の亀井静香・前衆院議員に聞きました。

財政足りている 増税の必要ない

─消費税についての考えを聞かせてください。
 消費税というのは大衆課税だ。金持ちにも貧乏人にも、同じように負担がかかる逆進性の強い税金だ。税の趣旨からいえばやってはいけないものだ。税というのはカネのある所から取って、カネのないものに配るという、所得の再分配機能を持っている。消費税はそれに逆行する。だから(税率引き上げは)やってはいけない。
 それに今、消費税を増税する状況ではない。財政だって豊かだ。かつては俺も、日銀が言うことを聞かないから苦労したが、今は、日銀が全部国債を引き受けている。
─どういうことですか。
 政府は必要な資金を国債で調達できるということだ。裏を返せば、増税する必要はない、ということになる。
 それなのに増税しようとするのは、経済が分かっていないからだ。消費税を上げるのは、まったくバカげている。
 安倍首相が、こんな状況で消費税を増税すれば日本の経済が沈み、ガタガタになる、ということを本気で理解すれば凍結だ。凍結して選挙、衆参同時選挙だ。その可能性はあるし、そうするだろう。

増税を「凍結」し衆参同時選挙も

─消費税増税は二度延期しました。同じ手は使えますか。
 国民が喜ぶことは何度でも使えるんだよ。凍結表明の時期は、選挙直前が一番いい。表明したら、すぐ同時選挙だよ。選挙準備? それは与党も野党も同じ。イーブンだ。
 国民民主党、立憲民主党、共産党の野党が統一候補を立てることができれば、野党は勝てるだろう。できなければ自民党が勝つ。だから安倍首相は消費税増税を凍結する。顔に書いてあるだろう、凍結と。
─増税を前提にした予算も成立していますが。
 それでも凍結できる。予算なんて、自由自在だ。さっき話したが、財源はいくらでもある。国債を使えば増税を前提とした支出にも対応できる。凍結は十分可能だ。
─地方の与党政治家からも、今増税すべきではない、との声が上がっています。
 地方の経済はよくない。中小・零細企業、農業、酪農、畜産もよくない。これから米大統領のトランプが攻めてくるからどんどん悪くなる。
 その津波はもう押し寄せている。TPP11含め、日本経済は大変なことになる。今、増税するのは、首をつろうとしている人間の踏み台を外すのと同じだ。
─消費税の話になると、必ず社会保障や財源論が出てきます。
 何でもかんでも政治に頼りすぎだ。卑しさがあるのではないか。
 富裕層まで政府が面倒を見る必要はない。税金は、金持ちから取る工夫をすればいいんだ。
─複数税率も導入されます。非常に複雑です。
 だからいけないんだよ。税は単純にしないと手間暇がかかる。払う方も徴収する方もそうだ。だから消費税増税をやっちゃいかん、と言っているんだ。

野党結束すれば安倍首相退陣も

─同時選で政治の変化は。
 同時選になれば日本の政治はガラッと変わる。安倍首相も首相の座におれなくなるかもしれない。野党が共産党を含めて統一候補を立てることができれば、自民党は政権を維持できても、安倍首相は政権の座から降りざるを得なくなるだろう。
 あるいは自民党自体が、総理を出せなくなる可能性も出てくる。そうなるとかつての自社さ政権と同じだ。
 いずれにしても同時選の旗印は、消費税の凍結だろう。
─辺野古の新基地建設が強行される沖縄問題について伺います。
 沖縄を米軍のために提供する必要はない。もうアジアは緊張緩和されている。今はミサイルの時代だよ。なぜ辺野古にアメリカの強大な基地を造らせるのか。アメリカに対して米軍はグアムまで下がれ、と安倍首相がしっかり言えばいいんだ。
 日本は、アメリカから兵器をいっぱい買っているが、兵器だけじゃなく魂までアメリカに渡している。そんなことでいいのか、ということだ。

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