預金の差し押さえ解除
「廃業免れた」と喜び

全国商工新聞 第3366号2019年6月24日付

 売掛金が入金された預金口座から、西新井税務署に500万円を差し押さえられた東京・足立西民主商工会(民商)の佐藤実さん(仮名)=建築=は5月16日、民商の仲間と一緒に交渉し、翌日差し押さえ全額を解除させました。「本当に死ぬかと思った。商売が続けられて良かった。仲間に感謝したい」と胸をなでおろしています。

 預金口座が差し押さえられたのは5月16日。銀行に行って取引先に送金しようとしたところ、「残高が足りません」と言われました。調べて見ると、西新井税務署が預金口座にあった600万円のうち、500万円を差し押さえていました。「このままでは今月の材料費の支払いができない。取引停止になれば、来月から仕事ができなくなる。20日に従業員の給与も払わなければいけない…」。突然の出来事に佐藤さんは頭が真っ白になりました。すぐに民商に連絡し、資料を持って事務所に飛んで行き、事情を説明しました。
 5年ほど前、税務調査を受けた佐藤さん。5人のとび仲間と仕事を請け負い、現場を取りまとめていたことから、調査では5人の収入を佐藤さんの収入とみなして、消費税と所得税を合わせて1000万円ほどを追徴課税しようとしました。
 佐藤さんは民商の仲間とともに抗議し、帳簿に基づいて自らの収入額を示して追徴課税の不当性を訴えました。
 佐藤さんの主張は認められましたが、収入漏れなどがあったため、追徴課税は100万円ほどに。やむなく修正申告に応じ、毎月5万円ずつ分納していました。
 しかし、電話をかけてきていた署員からの連絡が途絶えたことなどもあり納付が滞ってしまい、今回の事態に。
 小林芳一郎事務局長からアドバイスされた佐藤さんは「嘆願書」を作成し、その日のうちに小林事務局長と一緒に西新井税務署に出向きました。
 署員は当初、「差し押さえ解除は絶対にしません。できません」と聞く耳を持ちませんでした。しかし、佐藤さんは「下請けや支払先に支払いをしなければ、商売が続けられなくなる」「自分の家族や従業員が生きていけなくなる」「本税260万円の滞納分は、何とか一括納付したい」などと訴え。5時間に及ぶ必死の懇願に税務署員も折れ、「もう税務署も閉めるし、自分も帰るので、明日、必要な書類を持ってきてください。検討します」とかたくなな態度を軟化させました。
 翌日、財産目録や事業計画、分納計画など言われた書類を作成し持参し、その日に全額が解除されました。

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