不服審査 所得税の更生
全部取り消し=香川・高松民商

全国商工新聞 第3329号9月24日付

署の処分は違法と断定 仲間の支えで全面勝利

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審査請求で勝利した高松民商の川西さん(左から2人目)と役員

 香川・高松税務署が行った更正処分を不服として国税不服審判所に審査請求を行っていた高松民主商工会(民商)の「はな庄うどん」を経営する川西秀雄さんは8月2日、所得税の更正処分の全部取り消し(2013年分、14年分、15年分)と消費税、無申告加算税の決定処分の一部取り消し(12年分)を勝ち取りました。「全面勝利だ。民商の仲間と一緒にたたかって本当に良かった」と確信を深めています。

 裁決書を受け取った川西さんは「早く結果を知らせよう」と民商の事務所に走りました。
 増尾啓二副会長は「全面的な勝利や。審判継続中の会員も元気が出るわ」と笑顔を見せました。
 谷正隆副会長からもねぎらいの言葉が掛けられ、川西さんは「民商の仲間に支えられて勝ち取った勝利」とあらためて喜びをかみしめました。

事前通知なくいきなり来店

 調査の始まりは2016年9月27日。開店前から道路の向かい側に止まっていた車に乗っていた男女2人が閉店直前に店に入ってきて、いきなり税務調査を始めると言い出ました。川西さんは「事前通知がない。民商と相談するので今日は帰ってほしい」と言って署員を帰らせました。
 その日から2年間、長いたたかいが始まりました。
 民商では役員会で対策を練り、川西さんは民商の仲間の立ち会いの下で調査を受けることにしました。
 10月6日から翌年5月30日まで10回にわたって調査が行われ、すべて民商の仲間が立ち会いました。署員は「第三者がいるので調査はできない。第三者は退席するように」と求めましたが、「第三者がいても構わない。帳簿はここにあるので調査してほしい」と川西さんは毅然とした態度を貫きました。

帳簿を見ずに反面調査行う

 署員は最後まで帳簿を見ることなく、取引先への反面調査を行い、5月30日に調査結果を説明しました。消費税の調査は7年間さかのぼって行われ、同業者比率による推計課税。署員は修正申告を迫りましたが、納得できなかった川西さんは修正申告には応じませんでした。
 高松税務署は6月1日、更正処分を行い、所得税は2014年から16年の3年分で15万円、消費税は仕入れ税額控除を否認し、2012年分と、14年から16年分の無申告加算税を含めて350万円を追徴しました。
 川西さんはすぐに不服審判所に審査請求を提出。(1)事前通知のない調査、調査理由の開示では黒塗り、個人情報の開示請求では、情報の存否すら明らかにされず、違法で不当な調査である(2)立ち会いを付けるか、誰を立ち会い人にするかは、納税者が決定する。立ち会い人を排除した調査は不当(3)守秘義務を盾に調査を進めないのは、不作為の義務違反である(4)実額計算できる帳簿・資料を提示しているにもかかわらず、推計課税を行うことは不当(5)推計課税の根拠としている同業者の選定数が故意に少なく、選定方法がずさんで合理性が認められない(6)推計課税の仕入れ額の計算では「うどん粉」にうどん粉でない、「打ち粉」が含まれており、原処分庁の「少額なので問題はない」との答弁は非科学的で全く合理性がない-との6点を反論書で主張しました。
 審判所は(1)から(4)と(6)は退けたものの、(5)の推計課税について、同業者の抽出件数に漏れがあり、審判所が新たに抽出した同業者を含めて事業所得と消費税の課税額を計算したところ、所得税は請求人(川西さん)の確定申告の税額より下回ることから更正処分はいずれも違法であり、全部取り消すべきと判断。

無申告加算税一部取り消し

 消費税については2014年、15年の課税期間にかかる売り上げは1000万円を下回っているために納税は免除され、2012年の課税期間の売り上げは1000万円を超えているものの、消費税額は決定処分より下回っているため一部を取り消すべきと判断。加算税も一部取り消されました。
 川西さんは追徴された消費税と所得税について「換価の猶予」を申請し、これまで250万円ほどを納税しています。審査請求の結果によってそのほとんどが返納されます。

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