本紙入手の資料で判明
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無予告・臨店調査へ
副所長が陣頭指揮 内部事務一元化で効率化 |
税務署の事務年度が始まった7月以降、各地で税務調査が発生。「昨年と比べて2倍近くきている」(奈良県)など、例年より調査が増えているとの声が寄せられています。本紙が入手した国税庁の資料により、以下のような今年の方針が判明しました。
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着眼調査をすすめる国税庁 |
今年度の税務署の方針の特徴は、あらゆる税務署の事務の見直しをすすめながら、税務調査に最大限の事務量を振り分け、高額・悪質を重点としつつも、大幅に増加した消費税課税事業者を中心とする中低階級の納税者に対して、徹底して無予告・臨店の着眼調査(注)をおこなうことです。
昨年、消費税の新規課税事業者への周知・徹底などに当てた事務量が今年はなくなること、また、税務調査の充実にむけてKSK(国税総合管理)システムへの全件入力作業を3月からすすめてきたことなどをふまえ、調査事務量を十分に確保するとともに、署の副所長が税務調査の陣頭指揮を執ることを指示。
具体的には、(1)着眼調査は、潜在高額者・潜在消費税課税事業者(無申告者含む)を的確に把握するため、中低階級の者を中心に積極的におこなう(2)05年の消費税課税事業者のうち、いまだ提出のない者については優先して着眼調査を実施(3)適切な調査対象選定をおこなうための資料情報事務の充実(4)06年度消費税新規課税事業者向けに、記帳指導や説明会の各種実施を定常実施し、潜在課税事業者も把握(5)申告所得税、消費税、源泉所得税、印紙税の同時調査を推進(6)税務調査と併せて納付指導の徹底(7)団塊の世代のいっせい退職を見据え、若手職員の指導育成‐などを強調しています。
内部事務一元化
税務当局は、限られた定員の下で、さらなる事務処理の簡素化・効率化にとりくむとして、09年夏をめどに全署がいっせいに内部事務一元化(機構改革)に移行する方針を打ち出しました。当面、課税内部事務(申告書の情報の入力事務など)と徴収事務のうちの債権管理事務(収納・還付事務など)について、法人、個人、源泉部門などの枠を取り払い、一つの部署で一体的に処理することにより事務の効率化を図るとして、48署で今年度から施行を開始し、各署に移行への準備を指示。
こうした見直しは、国税庁の事務見直しの一里塚に過ぎません。e‐TAX(電子申告)の普及、KSKシステムを中心とした事務の集中化、事務の外部委託化などを推し進めつつ、電話相談の外部集中センター化も検討。税務署への来所者への対応を徹底的に減らし、納税者サービスを切り捨てることで、調査・滞納整理のいっそうの充実を図ることを目的としています(図参照)。
(注)04年事務年度から導入。個人事業者を中心にポイントを絞り短期日でおこなう無予告・臨店の税務調査。一般調査、特別調査と区別。 |
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最適化計画
調査・徴収事務への総動員体制
税務署の再編と税理士の役割見直しへ |
「最適化計画」
国税庁の方針の大きな指針となっているのが、昨年6月と今年3月に国税審議会が決定した「国税関係業務の業務・システム最適化計画(方針)」です(以下「最適化計画」と呼ぶ)。政府は03年に「電子政府構築計画」を決定し、各府省に業務や制度を徹底して見直し、業務処理時間や経費の節約効果を数値で示す「最適化計画」を、今年3月までに作成することを義務付けました。
「最適化計画」は、消費税及び所得税の申告者数の大幅増加、課税・徴収事案の複雑、困難化、職員の定員増加の困難などを背景に、「行政運営の簡素化、業務効率の向上を図るとともに、適正かつ公平な賦課及び徴収の実現という国税庁の任務を的確に果たすため、税務調査や滞納整理のいっそうの充実を図り、納税者のコンプライアンス(遵法意識)向上を目指す」と宣言。
ある国税職員は「最適化計画」を受けた国税庁の基本方針について、「税務当局、納税者、税理士の役割を見直し、国税庁の機能についても局、大規模署を中心に運営を見直すと言っている。また、事務のIT化やアウトソーシング(外注)化を推進するというが、平たく言うと、納税者には自書申告をさらに徹底する一方で、税理士には納税者の面倒を見てくれ、税務当局は調査・徴収事務に特化して総動員体制で対応したいからということ」と狙いを語っています。 |
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