「老後資産2000万必要」の波紋
年金制度拡充を参院選の争点に

全国商工新聞 第3366号2019年6月24日付

 公的年金以外に夫婦の老後資産として「30年間で約2000万円が必要」との試算が盛り込まれた金融庁の報告書が波紋を広げています。
 65歳の夫と60歳の妻の場合、年金収入だけでは毎月5万5000円が不足する。しかし、「年金はあてにせず、自己責任で貯金して備えよ。そのためには、若い頃からの資産運用が必要」というものです。
 「厚生年金で必要な生活費は賄える」「100年安心の年金」などと政府が宣伝してきたことはウソだったのか。「毎日の暮らしで精いっぱいなのに、どこに貯蓄の余裕があるのか」と、政府への不信と老後への不安が噴出し、7月の参院選での争点に急浮上しています。
 自民・公明は「国民に誤解や不安を広げる不適切な表現だった」「政府のスタンスとは違う」などと火消しに躍起になっていますが、政府にとって都合の悪いものを隠し、ごまかそうとする、安倍政権の姿勢が、またもやあらわになりました。
 報告書は、低過ぎる公的年金の実態を認めたものであり、自民・公明が導入した「マクロ経済スライド」による給付水準の調整が行われる結果、年金が年々削減されることも認めています。
 公的年金制度が、ささやかな暮らしさえ保障できないことにこそ問題があります。
 中小業者にとっては、厚生年金の事業主負担の軽減、低過ぎる国民年金(月平均受給額5・1万円)の引き上げが切実な要求です。そして、すべての国民に全額国庫負担で月額8万円の「最低保障年金制度」の創設など、生活できる制度に立て直すことが必要です。
 将来不安をあおり、内需を冷え込ませ、このうえ消費税を増税すれば、日本経済は大破綻するのではないか-。こうした声を機敏にとらえ、SNS上では「2000万円貯めるよりも、自民党・公明党を落とすほうがずっと簡単です」とのコメントが拡散されています。
 社会保障制度の基本は、すべての国民の最低生活と生存権の保障であり、制度の拡充こそ求められます。暮らしと商売を守り、税金の集め方、使い方を根本から変える政治の転換へ、参院選は大きなチャンスです。

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