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商工研究所
中小業者が主人公の自治体へ
第7回夏期研究集会
多彩なとりくみを交流
民商会員や研究者など240人
 第7回夏期研究集会(全国商工団体連合会付属中小商工業研究所主催)が8月26、27両日、東京・荒川区の都立産業技術高等専門学校で開かれました。民主商工会(民商)会員や研究者、自治体関係者ら240人が参加。パネルディスカッションや6つの分科会は、この間の研究や運動の成果を大いに交流し、同校の全面的な協力の下で「高専ツアー」も開かれました。

自治体のあり方と中小業者の役割につて深めたパネルディスカッション
 今回の研究集会の大きなテーマは、地方自治体のあり方と中小業者の役割について。市町村合併がすすみ、「官から民」へと、自治体行政の「公共性」が解体されようとしているなかで、住民・中小業者が主人公の自治体にどう変えていくか、当面する重要な課題を深め合いました。
 集会では太田義郎運営委員長(全商連副会長)が主催者を代表してあいさつ。「政治や経済に競争の原理が持ち込まれ、社会的格差が広がる一方で、首相の靖国参拝を批判した自民党の加藤紘一氏の自宅が放火されるなど言論、出版、結社の自由が脅かされている。こうした攻撃を跳ね返し、中小業者の営業と権利を守るために研究の自由を守り、発展させよう」と呼びかけました。
 パネルディスカッションでは京都大学の岡田知弘教授がコーディネーターを務め、「中小企業基本法『改定』で、中小企業施策に責任を負う主体は地方自治体であると法的に位置付けられた。これを活用しながら、地方自治体を中小業者・住民を主人公にした組織に変えるために何が必要かを考えたい」と問題提起。3人のパネリストが報告しました。
 神戸大学の岡田章宏教授は小泉政権が発足して以降の地方自治体の変化に言及。「国から地方へと地方分権をすすめ、国は地方自治体に仕事と自己責任を押し付け、公共サービスを一気に民間に委ねる流れを呼び込んだ。財界が主導し、公共サービスの質を変えようとしている」と指摘しました。
 大阪・布施民商の小迫忠雄さん=ボール盤加工=は、まず東大阪市の長尾淳三市長から研究集会に寄せられたメッセージを紹介。会場から大きな拍手が送られました。
 小迫さんは東大阪市の製造業を中心とする現状と課題を報告。「6割が売り上げが減少し、経営者の高齢化がすすむなかで産業集積地の将来が懸念されている。中小業者は経営展開への意欲的な意識改革が必要。行政には業者の実態をつかみ、学識経験者、自治体労働者、中小業者、市民を含めた政策立案機関を設置するなど施策の充実を求めたい」と訴えました。
 駒澤大学の吉田敬一教授は21世紀に入ってからの経済構造の変化に触れながら、大企業本位の地域づくりから中小業者・住民のための地域に変えるための方向を提起。「広大な土地にビルを建て、記憶を消し去る大企業中心の文明型の町ではなく、記憶を積み重ね、中小業者が主役となってにぎわい、活力、ふれあいのある文化型のまちづくりを取り戻すことが大事。そのためにも中小業者は、多品種少量のより良い製品を企画立案、発信する力をつけ、自治体とともに地域づくりを強めよう」と強調しました。
 2日目の全体会では、都立産業技術高等専門学校の吉田喜一教授が記念講演しました。毎年、ロボットを出場させ、話題を呼んでいるNHK「アイデア対決ロボットコンテスト」の様子や日本の技術教育の状況、荒川民商との産学公連携のとりくみなどをプロジェクターを使って報告。「国や自治体は中小企業の後継者やフリーター対策として予算をつけ、ものづくりの技術が習得できる無料講座を開いている。積極的に活用してほしい」と呼びかけました。

分科会で報告する「荒川ものづくりに挑戦する会」のメンバー
分科会
仕事おこしやまちづくり
6テーマで熱心に議論

こだわりこそ創造性発揮に
 「ものづくりの環境変化と仕事おこし」分科会では、技術・技能の蓄積を地域でどう継承・発展させ、仕事おこしにつなげるかを話し合いました。
 東京・荒川民商からは「荒川ものづくりに挑戦する会」が地域の多彩な伝統工芸技術を継承し、新製品づくりにチャレンジするとりくみを紹介、大阪商工団体連合会(大商連)「ものづくり部会」からは中小業者自らがものづくりにこだわってこそ、創造性も発揮できると報告しました。
 吉田喜一・都立産業技術高専教授が、荒川の地場産業である自転車に注目して夜目立つ、光る自転車をネットワークで誕生させた経験を紹介。参加者からは異業種交流で誕生した漆を塗った冷めないコップが紹介されたほか、技術向上の対応や販路についての悩みも出され、行政にコーディネート力を発揮させることが大切と話し合いました。

大型店出店阻止した運動
 「まちづくり3法改正と住民主役のまちづくり」では、「改正」まちづくり3法の問題点を明らかにするとともに、大型店出店をやめさせた各地の運動を交流。西日本最大級の大型ショッピングセンターの出店を断念させた経験(熊本)、イオン出店を阻止し、道のガイドラインに対して、出店調整をすることなど改善を要望(北海道・帯広)、コクヨ跡地への大型店出店に反対している運動(大阪・八尾)などが紹介されました。
 「改正」都市計画法施行前の駆け込み出店を許さない運動と同時に、まちづくりをどうするかを広く議論し、自治体への働きかけを強めることを確認し合いました。

中小業者への融資のあり方
 「制度融資の動向と地域金融の課題」では、信用リスクに基づく信用保証料の差別化のなかで、自治体交渉で、保証料に対して補助する成果をあげた報告や自治体の制度融資の積極的活用で、業者の実態に即したものに改善する運動など、変化に対応した運動の重要性について出されました。また、地域金融機関の役割発揮のため何が必要かなどを議論しました。

各地の自治体施策を報告
 「自由化・分権化と自治体施策」では「PFI」や「市場化テスト」などの民営化の動き、三位一体改革と地方分権、合併など自治体が激変するなかで、地域経済や中小業者の経営振興をどう図るか議論。各地の地域振興条例運動の推進に貢献した「中小企業のまち民間サミット運動」の成果が出されるとともに、長野県からは優れた地域密着型の小規模自治体施策が紹介され、福岡県からは「大企業誘致をすすめたが、地域経済・中小企業に波及が薄い北九州市の状況」が出されました。京都市伝統産業活性化条例と伝統技能継承の運動なども報告されました。

強権的な徴収実態を告発
 「意欲と希望が持てる社会への税制・社会保障」では、埼玉県から国・地方税の強権的な徴収で、水道料金滞納に対する給水停止により、生存権まで脅かされる実態を告発、新潟県からは「新潟市の国保料引き下げを求める直接請求」運動のとりくみを報告。最低保障年金創設や生存権を守るたたかいを強めようと確認し合いました。

事業の魅力若者に伝える
 「若者の自立と起業・事業継承」では、後継者難の背景として若者へ事業の魅力が十分に伝え切れていない現状が出され、経営の継承、技術・技能の継承をいかに図るか課題を交流。業者青年が商売を語る力を身に付けることが大切だと論議されました。

ロボットの製作現場なども見学した参加者
高専ツアー
制作現場に関心高く
 研究集会後に「高専ツアー」が開かれ、100人余が参加。ものづくりへの関心の高さが示されました。
 校内を案内をしてくれたのは同校の学生たち。技術史的に価値のある航空機などが展示してある科学技術展示館や、今年の「ロボコン」に出場するロボットの製作現場、飛行機などに搭載されるエンジンなどを見学しました。
 「エンジンのスタートはどうやるの?」「これは何に使われるエンジン?」など参加者の質問にも学生たちは丁寧に説明してくれました。
 
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