第四章 国、自治体の支援策のあり方

一、国の支援対策について

 私たちは80年代以降、商業施設は準公共施設であると位置づけてきました。今回の「政府ビジョン」はこの指摘を認めるものとなっています。
 この位置づけに沿って国の施策が強化されなくてはなりません。
 特に、わが国の流通の重大な問題は、大手資本による物流支配が強まっていることです。売れ筋商品、利益率の高い商品などが大量に先取りされるという傾向がますますつよまり、ひろがっています。中小の卸・小売業者は欲しい商品の品揃えが困難になり、逆に、大手資本が過剰に確保したものをおしつけられる事態が珍しくありません。
 物流面での大手支配は、価格つり上げを可能にします。資本力、販売力にものをいわせたこのような行為は、結局、消費者利益になりません。
 この面での規制を強化し、公正な取引関係を確立することは行政の大きな責任です。
 こうした点も視野にいれながら、具体的に、次の施策の実行を提案します。

1、中小流通業対策予算の大幅増を
 国の政策としてもっとも重要なことは、国民のふところを豊かにして、消費購買力を高めることです。消費税の食料品非課税や、社会保障・社会福祉政策の拡充などは切実に求められています。
 このような基本政策とともに、中小卸・小売業者、商店街振興のための対策の拡充が急がれます。
 そのためには、中小流通業対策予算を大幅に増やすことです。
 政府のいくつかの施策、助成制度も予算が少ないために、圧倒的多数の業者や商店街は利用できないのが実態です。
 90%以上の商店街を見殺しにするようなやり方を改め、希望する商店街、中小商店はすべて活用できるように、大きく予算を増やすことを提案します。

2、中小商業活性化基金の抜本的拡充を
 国の拠出を大きく増やすなど、既存の「中小商業活性化基金」を抜本的に拡充することを提案します。
 この基金は、国(中小企業事業団)と都道府県が拠出して、都道府県中小企業振興公社によって運営されています。基金の運用益によって、商店街振興組合等の行なう調査・計画策定事業、商店街にぎわい創出事業等に補助金が支給されています。都道府県はそれぞれの判断で基金に出す金額を決め、国はそれと同額を拠出することになっています。従って都道府県により、基金規模はまちまちです。現在の基金規模は、1360億円、単純平均すると1県当たり28億円程度にすぎません。
 国の拠出を大きく増やすとともに、大手小売資本にも拠出を義務づけ、基金規模の拡大をはかり、その機構と任務に検討を加えて、中小商業活性化基金が多くの商店街の振興に役立つようにすることを提案します。

3、実態調査と情報の提供を
 政府は、これまで3年に1度は実施してきた「全国商業統計調査」を、5年に1度に変えました。これは時代の要請に逆行する改悪であり、少なくとも従来通り実施することを提案します。それだけでなく、商店経営に役立つ各種の情報を敏速に提供することが必要です。
 いまほど経営環境の変動が激しい時はありません。その変化に機敏に対応することが強く求められている今日です。政府自身、今年四月に発表した「中小企業白書」で「中小企業の本領発揮のキーワード」の第一に、「変化への即応性」の向上が必要だと強調しているではありませんか。
 中小事業者にそれを求めるなら、事業者が経営環境の変化に機敏に即応して意思決定できるように変化、動向等の情報提供を強化することに政府として努めるべきです。

4、自治体への支援
 地方自治体がすすめる商店街、中小商店振興対策に対して、財政その他の支援をつよめることを提案します。
 財政的な補填・補助の強化とともに、地方自治の原則のもとに、国の政策の押しつけをやめることが、個性、他地域との差別化が重要な商店街振興では大切です。

二、自治体の支援対策について

 自治体、特に市区町村が商店街対策を自らの行政の役割であることを位置づけ、担当部局、専門機関の拡充、専門知識や経験を積んだ職員の育成・確保が決定的に重要です。
 そして、自治体の考えを押しつけるのではなく、商店街の意欲、自主性を尊重し、商店街自身が理念、ビジョンを確立することを援助すること、そのために情報を提供することが大切です。また、地域住民、消費者の意識や要求を把握するとともに、商店街と消費者、住民の交流・連携のまとめ役としての役割を発揮することが自治体の大切な役割です。
 公的助成制度の拡充とその活用に関する援助は言うまでもありません。市区町村が担当者を先頭に、情熱をもって正しく商店街振興にのぞむこと、その姿勢と具体的な施策拡充が極めて重要です。
 また、自治体が産業振興政策やまちづくり計画をもつこと、その作成のなかに商店街と中小商店対策を位置づけることが欠かせません。その作成にあたって、従来から多くみられるコンサルタント会社にすべてをまかせる方式を改め、地域内の業者、労働者、住民とともにつくりあげる、真の住民参加の実現がきめ手です。
 こうして、商店街の活性化を商店街、消費者、住民、自治体の共同の事業として取り組む方向をめざすこと、そして、国と協力して、次のようにきめ細かく援助することを提案します。

1、公共性の高い商店街基盤整備を公共の事業として
 アーケード、カラー舗装、ミニ公園、駐車場・駐輪場などの基盤整備が必要な商店街も少なくありません。融資制度などこの事業に対する一定の支援制度はありますが、いまの景気動向等では、個々の業者の負担も大きく、制度が活用しにくいのが実態です。
 新たなインフラという位置づけにそって、公共性の高いこれらの施設については公共事業としておこなうことを提案します。また、その他の基盤施設整備への補助率を引き上げることです。

2、商店街振興と結びつけた公共施設の配置
 図書館、役所の出張所、文化会館、集会所など地域住民の集まりやすい公共施設を商店街に隣接させて設置することも重要です。
 また、多くの商店会などは独自に事務所をもつことが困難です。小売商業者のセンターであるとともに、住民との共同のセンターの機能ももつ会館・センターを公共施設として設置することを提案します。

3、まつりなどソフト面への援助
 まつりなどのイベントへの補助を強めることや、商店街、中小商店が住民への情報発信などに活用するファックスやパソコンなど情報機器の活用を支援することは、今後ますます大切です。
 また、将来ビジョン思考能力、状況判断能力を高める経営者研修や人材育成など経営に必要な講座、商店街活性化への研究活動等に対する助成をつよめることを提案します。

4、空き店舗対策
 空き店舗・空き地対策として重要なことは、なぜ空き店舗が生まれたのか、その原因をよく調査し、空き店舗が出ない商店街づくりには何が必要か、を明らかにすることです。
 そこから、とにかくどんな商店でもよいから「空き店舗」をなくせばよい、という考え方でなく、その商店街の活性化のためには、どんな業種・業態の店、あるいは施設が必要か、商店街の活性化の方向をみなんで話し合うようにします。
 そして、商店街が実施する空き店舗・空き地対策事業を支援することです。

5、都市計画、区画整理に関して
 都市計画法上の地区計画や区画整理は、中小業者、住民の合意ですすめられることが基本です。そのために、住民にたいする情報公開をつよく要求します。
 また、区画整理事業、都市再開発事業等で、一時的に店を移転・休業しなければならない場合のきちんとした補償が欠かせません。